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【コラム】JUICE #59「YouTubeに隠された映像翻訳者のための『引き出し』のヒント」●小林由布子

【コラム】JUICE #59「YouTubeに隠された映像翻訳者のための『引き出し』のヒント」●小林由布子
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映像翻訳者として「引き出し」をたくさん持っていることは大切なこと。その情報を直接訳に反映できるのはもちろん、調べものをする時のヒントになることもあり、作業時間の短縮を図ることができます。私がフリーランスとして翻訳をやっていた時、そして今も、「引き出し」を増やすことを意識しています。
 

ここ数年の「引き出し」は「海外のYouTube」から
増やす方法としては、読書やイベント・セミナーへの参加、人とのコミュニケーションなど、色々あります。それに加えて私がお薦めしたいのが「海外のYouTube」です。日本のチャンネルにも“チャレンジ系”、商品レビュー、料理レシピ、語学学習などのさまざまなカテゴリーの動画がありますが、海外のYouTubeチャンネルはさらにバラエティに富んでいます。
 

私がよく見るのは、アメリカやカナダ、イギリスなど英語圏の動画です。コスメ、ファッション、ライフスタイル、ショートムービー、ファッションなど幅広い分野のチャンネルをフォローしています。ここ数年にできた「引き出し」のほとんどがYouTubeからと言っても過言ではありません。では、どのような動画の何が学びとなるのか? 例を挙げて紹介しましょう。
 

動画で初めて知る言葉や文化がたくさんある
ニューヨークでERの研修医として働く韓国人女性JamieのYouTubeチャンネル『The Strive to fit』は、病院での出来事や医療に関する情報をイラストやテキストを用いて説明しているので、安心して見ることができます。彼女の動画で初めて知った医療用語やアメリカの医療システムがいくつもあります。その1つが“Physician Assistant”という職種です。医師の監督の下で治療を行い、薬を処方することができる医療従事者で、略して“PA”と呼ばれています。日本にはない職種なので、馴染みがありません。医療系ドラマに登場していてもおかしくない、医療現場には欠かせない職種でもあります。そのほか、研修を控えた医大生にとって重要な日“Match Day”や診療科目ごとの研修期間など、簡潔に説明してくれているので、医療知識がない私のような者でも理解することができます。簡単な知識でもいいので知っていれば、医療系の映像コンテンツでその言葉が出てきた時に、人間関係やストーリーの流れなどを即時に理解するための助けになるはずです。
 

医療系の仕事以外にも、キャビンアテンダント、教師、TVレポーター、パイロット、などさまざまな職種のYouTubeチャンネルがあるので、興味に応じて見るのでもいいと思います。
 


 

その他、専業主婦が日常生活を紹介する動画には、クリスマスシーズンの過ごし方が分かる“Vlogmas”やスーパーで買ってきたものを紹介する“grocery haul”などさまざまなテーマがあります。どれもノンフィクションで、彼らの生活習慣や定番商品、トレンドなどが見えてきます。国ごとの違いを見るのも面白いかもしれません。
 


【“grocery haul”で、よく出てくる“Kroger”や“KIRKLAND”はアメリカで定番のブランド。翻訳する番組に出てきた時に、それを知っていれば、どう訳すべきなのかが見えてくるはず。】
 

地方独特の“訛り”について知ることも
また、YouTuberは必ずしも大都市に住んでいるとは限りません。田舎に住むYouTuberも多く、彼らの話す英語は独特です。いくつかの動画で「ヨーォ」と呼びかける場面がありました。最初は理解できませんでしたが、調べてみると“You all“が訛った“Y’all”で、南部独特の言葉でした。海外ドラマで南部出身のキャラクターがいたら、セリフに出てくるかもしれないですよね。耳慣れていれば、迷うことはありません。
 


【英語圏でも各国によって、使う単語や発音、意味が異なります。各国の英語ネイティブが集まって、その違いを紹介する動画もあります。世界中のコンテンツが溢れる時代に、翻訳者として知っておいて損はありません。】
 

その他にも、学べる要素はまだまだありますが、それは次の機会に。
映像翻訳者としての「引き出し」は、すぐに使えるものばかりではなく、いつか役立つかもしれないものたくさんあります。使わないものもあるかもしれません。でも、どんな分野でも受けられる翻訳者として準備するためにも、「引き出し」が多いことは財産になります。ぜひ、YouTubeで色々な動画を見て、「引き出し」を増やしてください。
 

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Written by 小林由布子
 

こばやし・ゆうこ●英日映像翻訳科を修了後、フリーランスの映像翻訳者を経て、JVTAに入社。コーポレート・コミュニケーション部で東京校だけではなく、ロサンゼルス校のPRも担当している。
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「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
 
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