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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の一本 vol.177 『ニュースの天才』 

今週の一本 vol.177 『ニュースの天才』 
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【テーマ:NEW】STAP細胞の論文問題を巡るニュースが世間を騒がせている。STAP細胞が「ある」のか「ない」のかは、僕などには到底分からないが、それよりも理研の小保方さんの会見を見て、強く感じたのは報道陣の異様なまでの熱気だ。
だからこそというわけでもないが、今回はメディアという世界に魅了され過ぎ、人生を踏み外してしまった男の悲しい物語、『ニュースの天才』を紹介したい。

 
時は90年代。アメリカで最も権威ある政治雑誌『The New Republic』の最年少ジャーナリスト、スティーヴン・ダラスは天才的な取材力と執筆力で特ダネを連発し、みるみる編集部で頭角を現わす。エース記者として業界でも有名になり始めるスティーヴン。しかし、ある日、彼の成功に嫉妬したライバル誌の記者が彼の過去の記事に疑いの目を向ける。記者の鋭い追及によって、次々と明らかになる真実。スティーヴンの記事に登場する人物や会社はもちろん、取材ノートに書かれた関係者の電話番号やメールアドレス、ウェブサイトまでが実は巧妙な手口によって捏造された情報だったのだ。やがて編集長や会社の上層部からも記事が真実であることを証明するよう求められたスティーヴンは、問題の記事だけでなく自分が今までに書いた41本の記事のうち、実に27本の記事が創作であったことを認め、解雇される。実話とは思えないほど出来すぎたストーリーのようだが、絶妙な脚本と演技で最後まで飽くことなく惹きつけられる。

 
翻訳もジャーナリズムも“言葉を売る”仕事。編集者が記者の原稿に容赦なく赤入れをする描写や、情報の裏取りができていない記者がダメ出しを食らうシーンには思わず“あるある”とうなずいてしまう。そんなシーンが満載なので、翻訳者目線で観ると更に楽しめる映画だと思う。もっとも楽しい反面、身の引き締まる思いのほうが強いかもしれないが、そういう意味でも翻訳者さんには是非オススメしたい一本だ。

 
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『ニュースの天才』
監督:ビリー・レイ
出演:ヘイデン・クリステンセン、ピーター・サースガード
製作国:アメリカ/カナダ
製作年:2003年
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Written by 相原 拓(あいはら・たく)
当校の発注部門、MTC所属。アメリカで20年過ごし、大学を卒業後に本帰国。現在は映像翻訳ディレクターと講師を務める。クライアントはフジテレビジョンやVICE Japanなど。主にスポーツ番組(英日)や海外出品用の映画(日英)を担当。手がけた英語字幕は長編映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』など。
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[JVTA発] 今週の1本☆
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。


 

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