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Tipping Point Returns Vol.11 「サラバ、翻訳事典 ~私が好きな会社、アルクの話~」 

Tipping Point Returns Vol.11 「サラバ、翻訳事典 ~私が好きな会社、アルクの話~」 
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今年の年末は寂しいことがあった。オンライン辞書の草分け的存在、『英辞郎』で知られるアルク社が長年にわたり発行してきた『翻訳事典』の休刊が決まったのだ。恒例行事のようになっていた記事の執筆依頼や授業風景の取材がない。今後翻訳に関する情報はデジタルメディアを通じて発信していくという。

 
1996年に日本映像翻訳アカデミー(JVTA)が開校した時、私は「『翻訳事典』に映像翻訳というカテゴリーを定着させる!」、「映像翻訳の素晴らしさを署名記事で書く!」という2つの目標を打ち立てた。『翻訳事典』は翻訳者を目指す人にとって影響力がある年刊だったからだ。2つの目標は幸い数年後に達成することができたが、拡大し続ける映像翻訳業界の実情や学びの現場を丁寧に紹介してくれる媒体として、『翻訳事典』は私たちに寄り添い続けてくれた。

 
そんなご縁から、1998年から2015年まで、アルクとJVTAは「映画字幕翻訳コンテスト」を共同開催した。(応募したことがある!)という方も多いはずだ。課題の選定から審査まで、毎年たいへんな作業だったが、映像翻訳という新たな職能の魅力と重要性を社会に広める役割を果たしたという自負がある。こうしたプロジェクトを発展させて生まれたのが、二社の共同事業『映像翻訳Web講座』だ。「映像翻訳を学びたい人から居住地や時間の制約を取り払いたい」。私たちのそんな思いに、アルクは二つ返事でOKを出してくれた。

 
アルクという会社が好きだ。でもそれは、長く仕事を一緒にしてきたからだけではない。アルクという会社には「語学の習得に人生の多くの時間を重ねてきた人と、共に歩む」というミッションを持つ私たちが見習うべき何かがある。

 
今年10月、アルクの創立50周年記念パーティーが催された。創業者兼最高顧問の平本照麿さん、長きにわたり私たちを応援してくれている取締役の飛田豊彦さん、そしてスタッフの皆さんの言葉に触れながら、私の思いが正しいことを実感した。

 
「英語を使えないとこれからはダメ」、「英語を学ばなければ世間に置いていかれる」。日本を包み込むそんな気運に乗って生まれた語学学習サービスの会社は星の数ほどある。大きな成功を収めた会社もあるらしい。事業分野で言えば、アルクもそれらに重なるだろう。でも、似て非なる何かがある。

 
‛何か’とは、言葉を学ぶことそのものを喜びとする方々への深い愛情だ。

 
「こうすれば安く、早く英語が習得できて、恥をかかずにすみますよ」、「これくらいのスコアがないと出世できないんだから我慢してやりなさい」という売り方が花盛りだ。グローバル化対応だと言えば聞こえはいいが、「これができなきゃ××の仲間には入れない」という脅しは、詰め込み型の受験勉強となんら変わらない。言葉を学ぶという行為は「できればやりたくない人生の障害物」じゃないのだ。ゴールはどこだ、最短ルートはどれだと右往左往することで人生が彩られるわけがない。

 
ひたむきに語学の習得に打ち込むという行為は、人としての成長に欠かせない時間だと私は信じている。

 
アルクの人たちに接すると「言葉の勉強が好きな人が好き」、「今好きでない人は、好きになるようにお手伝いするよ!」という空気が生まれる。パーティーで創業者の平本さんは「これからの時代、最新のテクノロジーを用いて時代に適応した語学学習が必要だ」とおっしゃっていた。『翻訳事典』の休刊もその一つだろう。しかし、それは手段の話にすぎない。言葉を学ぶ方々を思うアルクの社風は、今もこれからも変わらないと確信した。

 
会社(やフリーランス)が‘売る’ものは、商品やサービスだけではない。「お金では売れなかったけど、人と社会を思う心は‛売れた(届いた)’。だから良かった」。やせ我慢と言われるかもしれないが、それが私の信条だ。
アルクという会社は、それで正しいよと教えてくれる。だからファンなのだ。

 
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Tipping Point~My Favorite Movies~ by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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2002-2012年「Tipping Point」のバックナンバーの一部はコチラで読めます↓
http://www.jvtacademy.com/blog/tippingpoint/cat10/
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