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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第46回 “The Handmaid’s Tale”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第46回 “The Handmaid’s Tale”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第46回“The Handmaid’s Tale”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     

    米国のディストピアを描く、驚愕の近未来スリラー!
    原作は、カナダの女流作家マーガレット・アトウッドが1985年に発表したディストピア(反ユートピア)小説。描かれるのは、アメリカに出現した宗教的軍事独裁国家と、究極の男尊女卑階級社会。
    “The Handmaid’s Tale”は、確固たる世界観と息詰まる閉塞感で観る者を圧倒する、驚愕の近未来スリラーだ!

     
    分裂国家ギレアドの誕生
    近未来では、深刻な環境汚染と蔓延する悪質な性病により、世界的に男女の不妊率が急激に高まり、赤ん坊の生存率も極度に低かった。かつての人口膨張予測をあざ笑うかのように、人類は絶滅危惧種と化していた。

     
    そんな状況下で突如アメリカ東海岸に出現したのが、キリスト教原理主義者による軍事独裁国家ギレアドだ。彼らは周到な計画のもと、一般市民にテロリストの脅威をあおり、テロ対策に見せかけてクーデターを成功させて分裂したのだった。

     
    ギレアドは女性の一切の権利をはく奪し、出産を国の完全管理下に置いた。目的は女性に一人でも多くの子供を産ませ、少子化を止めること。
    健康で妊娠可能な女性は、全員が「レッドセンター」と呼ばれる収容所に連行される。そこは女性たちに服従のための規律・作法を徹底的に叩き込み、洗脳する場だ。抵抗する者は、屈服するまで拷問を受ける。

     
    コミュニティのいたるところにはギレアドのスパイが浸透し、レジスタンスのメンバーは容赦なく処刑される。
    ギレアドは国家の名のもと、人類存続を旗印にあらゆる手段を正当化し、女性を出産マシンに仕立てたのだった。

     
    レッドセンターを「卒業」した女性たちは「侍女」(“Handmaid”)と呼ばれた。

     
    “My name is June. I intend to survive.”
    ジューン・オズボーン(エリザベス・モス)は、カナダの国境付近でギレアドの軍隊に捕まった。夫はその場で射殺され、幼い娘とは生き別れになった。
    ジューンはレッドセンターで洗脳を受けたあと、ギレアドの司令官フレッド・ウォーターフォード(ジョセフ・ファインズ)のもとへ侍女として送り込まれる。彼女の現在の名前はオブフレッド。オブフレッドとは、「フレッドの所有物」(of + Fred)の意味だ。

     
    侍女には修道女のような制服の着用が義務付けられている。家では使用人たちの目が光り、外出の際は別の侍女と必ず「二人組」となり、互いを監視しあう。逃げ道はない。

     
    侍女は毎月の排卵日に家主との「儀式」を強要される。これは侍女を妊娠させる目的の強制セックスだ。オブフレッドも夫人のセリーナ(イヴォンヌ・ストラホフスキー)の監視下で、フレッドとの儀式をさせられていた。

     
    妊娠して健康な赤ん坊を生んだ侍女はコミュニティの歓待を受け、赤ん坊をホストファミリーへ譲り渡した後、次のファミリーへ派遣される。

     
    無限に続く軟禁状態、絶望的な孤独、底知れぬ不安の中で過ごす日常。だがオブフレッドは決して折れなかった。生き別れとなった娘と再会するまで、何があっても生き続ける決意を固めていた。
    ここではだれも信用できない。表情のない従順な人形を演じながら、密かに男たちを操り、女たちを出し抜くのだ。

     
    彼女はつぶやく。
    “My name is June. I intend to survive.”

     
    もはや大女優の風格、圧巻のエリザベス・モス!
    主演のエリザベス・モスは、“Mad Men”で主人公の秘書ペギーを演じてブレークした。当初は小さな役だったがシーズンごとに評価が上がり、ペギーは準主役級のキャラに育った。
    モスは目を引く美人ではないし華がないが、知性に裏付けられた落ち着いた魅力がある。本作のヒロインのような、芯が強くしたたかな役を演じさせると圧倒的な存在感を発揮する。

     
    ウォーターフォード夫婦を演じたジョセフ・ファインズとイヴォンヌ・ストラホフスキー、レッドセンターの鬼教官リディア役のアン・ダウドなど、わき役陣も充実している。だが、彼らの立ち位置はあくまで「控え目」だ。

     
    本作はエリザベス・モスの独り舞台なのだ。クローズアップが多く、モスはわずかな表情の変化と目の動きで、ジューン/オブフレッドの思考・感情をみごとに表現する。
    もはや大女優の風格さえ漂わせるモスは、本役でエミー賞・ゴールデングローブ賞の主演女優賞をダブル受賞した。この投票はどちらもブッチギリだったのではないか。

     
    ジューンは救世主となるのか?
    女性が仕事も資産も持てず、読書すら許されない絶対的な服従を強制される世界。保身のために政府に盲従する哀れな男たち。君臨しつつも退廃していく権力層・富裕層。
    化け物国家を創生してしまった今、後戻りはできない。

     
    どこに希望があるのだ? ジューンは救世主となるのか?

     
    今のアメリカには過激な考え方を支持する土壌があるので、宗教的軍事独裁国家や、究極の男尊女卑階級社会が成立した背景、プロセスには不気味なリアリティがある。一握りの権力者が、目的のためにいかなる手段をも正当化する恐怖が伝わってくる。

     
    昨年のエミー賞では主要5部門、今年のゴールデングローブ賞でも作品賞・主演女優賞を受賞。“The Handmaid’s Tale”は、原作の持つ確固たる世界観と息詰まる閉塞感が画面で脈打つ、観る者を圧倒する驚愕の近未来スリラーなのだ!

     
    本作はMGMとHuluの共同製作。アメリカではシーズン2を配信済みで、シーズン3の製作も決定している。日本では『ハンドメイズ・テイル / 侍女の物語』のタイトルでHuluが配信中、シーズン2は8月29日からスタートだ。

     

    また、昨年エマ・ワトソンが“The Book Fairies”(世界的な読書の啓蒙クラブ)の活動で、自筆のメモを添えた本作の原作本100冊を、パリの各地に隠したことでも話題になった。

     

     
    <今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」 ㉕
    Title: “City of Stars”
    Artist: Ryan Gosling and Emma Stone
    Movie: “LA LA LAND” (2016)

    映画も曲も、心に残る“instant classic”だね。

     

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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