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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第50回 “Mr. Mercedes”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第50回 “Mr. Mercedes”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第50回“Mr. Mercedes”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     

    スティーヴン・キングのエドガー賞受賞作がドラマ化!
    「モダンホラーの帝王」スティーヴン・キングが初めて挑んだ推理小説が、『ミスター・メルセデス』(“Mr. Mercedes”)だ。サイコキラーと退職刑事が対決するこの作品は、ミステリファン、評論家から絶賛され、みごと2014年度のエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長編賞に輝いた。

     
    ドラマ版も原作のエッセンスをたっぷり盛り込んだスリリングな傑作で、キングのファンもドラマファンもうならせるぞ!

     
    「メルセデス・キラー」
    ―オハイオ州ブリッジトン
    厳しい寒さにもかかわらず、早朝から市民ホールには若者、ホームレスらしき者の長蛇の列ができている。赤ん坊を抱いたシングルマザーもいる。長引く不況の中、市がプロモートする大掛かりな就職相談会に参加する失業者たちだ。

     
    100メートルほど離れたところで、シルバーのメルセデス・ベンツSクラスがアイドリングしている。場違いな高級車だ。

     
    メルセデスは動き出すなり急加速し、失業者たちに襲いかかる。重なる悲鳴が重厚なエンジン音でかき消される。メルセデスは情け容赦なく獲物を巻き込み、引き裂き、血と肉片をまき散らすと、何ごともなかったように走り去った。

     
    “LET’S PREY”
    ―2年後
    ビル・ホッジス(ブレンダン・グリーソン)は市警を定年退職している。敏腕刑事と言われていたが、16名を殺害した「メルセデス・キラー」を逮捕できなかったことが唯一の心残りだ。
    ホッジスは現役時代に離婚し、アル中施設にいる一人娘とは断絶状態。自分も酒におぼれ、体重過多、うつ病で自殺願望さえある。

     
    メルセデス・キラーことブレイディ・ハーツフィールド(ハリー・トレッダウェイ)は、今もブリッジトンのコンピューター・ストアで働いていた。自宅の地下はコンピューター・ルームに改造されている。
    ブレイディは頭のねじが外れている母親(ケリー・リンチ)の世話、上司のパワハラ、嫌な客への対応で、疲労とストレスが頂点に達している。

     
    ブレイディは次の標的をホッジスと決めていた。
    ―あの巨大なテディベアじみたみじめなクソ負け犬野郎を始末したらさぞかし気持ちがいいに違いない。(ちょっとキング風に書いてみました、ドラマのセリフではありません)
    ブレイディはトレース不能のチャットルームを通じて、ホッジスを挑発する。

     
    皮肉なことに、メルセデス・キラーからの接触で、ホッジスの刑事魂に再び火がつく。
    人生に目的ができた。奴を狩るのだ。

     

    コンピューターを駆使するプレイディに対し、ホッジスは知り合いのジェローム(ジャハール・ジェローム)とホリー(ジャスティン・ルーペ)の力を借りる。ジェロームはハーバードに合格したばかりの秀才、ホリーは統合失調症のコンピューターおたくだ。

     
    メルセデス・キラーと退職刑事の死を賭した戦いが始まった!
    “LET’S PREY.”

     
    原作のイメージどおりの配役
    ホッジス役のブレンダン・グリーソンはアイルランド出身のベテラン俳優で、ハリー・ポッター・シリーズではホグワーツ校のムーディ先生を演じた。雰囲気は原作のホッジスに結構近い。

     
    イギリス出身のハリー・トレッダウェイは、エピソードが進むに連れて線の細さが消えて、狂気を増幅させていくブレイディを迫真の演技で体現する。

     
    ジェローム役のジャハール・ジェローム、ホリーを演じたジャスティン・ルーペは、ともに原作のイメージ通りで適役。
    ケリー・リンチは、奇行を続けるブレイディの母親デボラを文字通り怪演した。

     
    さらに、ホッジスを気遣う隣人アイダ役のホランド・テイラー、ホッジスの恋人となるジェイニー役のメアリー=ルイーズ・パーカー(!)が、ともにチャーミングな演技で脇を固めている。

     
    キング原作ドラマの最高傑作か!
    ディテールへの徹底的なこだわり、ブランド・固有名詞の多用、カラフルなボキャブラリーがキングの真骨頂だ。才人デイビッド・E・ケリー、ハードボイルド作家のデニス・ルヘインらによる脚本は、キングの筆致と技巧を彷彿させ、リアリティと緊迫感を高めている。

     
    殺伐としたストーリーの中で描かれる、孤独なホッジスと、両親からも見捨てられたホリーとの交流には心が温まる。“Mr. Mercedes” はオープニング・シーンこそ派手だが、全編を通じて地に足がついた刑事ドラマ、人間ドラマなのだ。

     
    質量で圧倒するキングの長編は、やはり映画よりドラマに向いている。数あるキング原作のテレビドラマの中でも、本作は最高傑作ではないか。原作のエッセンスをたっぷり盛り込んだ、味わい深くスリリングな作品で、キングのファンもキング初体験のドラマファンもうならせること請け合いだ!

     
    キングの「ビル・ホッジス・シリーズ」は、『ミスター・メルセデス』、第2作『ファインダーズ・キーパーズ』(“Finders Keepers”:独立したストーリーで、ホッジスがジェローム、ホリーともぐりの探偵社を立ち上げる!)、第3作『任務の終わり』(“End of Watch”: 『ミスター・メルセデス』の続編)の3部作だ。
    ドラマ版ではシーズン1が第1作を、シーズン2が第3作をベースにしている。シーズン2ではキングお得意の超常現象も扱われ、サービス満点だ。

     
    “Mr. Mercedes” は各シーズン全10話で、シーズン3の製作が決定している。日本ではAmazon Primeでシーズン1が、スターチャンネルでシーズン2が視聴できる。
    キング原作の非ホラー系ドラマでは、“The Dead Zone”、“Under the Dome”、“11.22.63”(本ブログ第25回参照)もお勧めだ!

     

    <今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」㉙
    Title: “The Morning After”
    Artist: Maureen McGovern
    Movie: “The Poseidon Adventure” (1972)


    シェリー・ウィンタース、よかったですね(涙)。
    ポール・ギャリコの原作も感動的でした。

     

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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