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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ」 第52回 “The Haunting of Hill House”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ」 第52回 “The Haunting of Hill House”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第52回“The Haunting of Hill House”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     

    S・キングのお墨付き、知的で格調高い正統派ホラー!
    Netflixによる“The Haunting of Hill House”は、スプラッター(血まみれ)でもショッカー(こけおどし)でもスラッシャー(死体だらけ)でもない、まれに見る知的で格調高い正統派ホラー。スティーブン・キングのお墨付き、ホラー嫌いのドラマファンにも自信をもってお勧めする!

     
    “The Crains, ghosts, and spirits in Hill House”
    (1992年の夏)
    ボストン近郊にある通称「ヒルハウス」は、100年以上前に建てられた石造りの堅牢で荘厳な大邸宅だ。
    最近この家を購入したクレイン夫婦は、子供5人を連れてヒルハウスに引っ越してきた。夫のヒュー(ヘンリー・トーマス)は不動産業者で、妻のオリビア(カーラ・グギノ)は建築家。家族でここに住みながら大規模な改修を行い、富裕層に高額で転売し、その代金で自分たちのドリームハウスを建てる計画だった。

     
    だがクレイン家の面々は、夜になると幽霊や幻聴に悩まされるようになる。
    確かに、この家には邪悪な何かが存在していた。

     
    ある晩、ヒューが血相を変えて子供たちの部屋に駆け込んできた。無理やり全員を車に乗せると、なぜかオリビアだけを残して、走り去る。
    その夜、オリビアは自殺した。

     
    (現在)
    ―フロリダ
    父親のヒューは子供たちと疎遠になり、オリビアの亡霊と暮らしている。彼女の死の真相については、沈黙を守り通していた。ヒルハウスを今でも保有している。

     
    ―カリフォルニア
    長男のスティーブン(マイケル・ユイスマン)は結婚し、作家として成功している。処女作の“The Haunting of Hill House”がベストセラーになったのだ。だが兄弟姉妹からは、「母親の死で金儲けをした」と憎まれている。

     
    次男のルーク(オリバー・ジャクソン・コーエン)はヘロイン中毒となり、今はリハビリ中だ。母親の死を克服できなかったのだ。

     
    ―ボストン近郊
    長女のシャーリー(エリザベス・リーサ―)は、母親の死化粧に魅せられたのがきっかけで、夫と葬儀社を経営するようになった。2人の子供がいる。

     
    次女のテオ(ケイト・シーゲル)は一家で最も霊感が強く、心理学の博士号を取って小児カウンセラーになった。だがレズビアンバーで一夜限りの関係を求める、荒れた生活をしている。

     
    末っ子の三女ネル(ヴィクトリア・ペドレッティ)はずっと情緒不安定だった。特に夫が急死してから症状が悪化し、また昔のように「首折れ女」(“Bent-neck lady”)の幽霊を見るようになった。

     
    クレイン家の一族は、例外なく過去のトラウマを引きずっている。
    そして、ヒルハウスで再び悲劇が繰り返された!

     
    「ゴースト・ストーリー」+「家族ドラマ」+「推理ドラマ」!
    本作はシャーリイ・ジャクスンの同名小説(邦題「丘の屋敷」、1959)の “loose adaptation”で、完成度の高さはNetflix史上でもトップ3に入るだろう。Rotten Tomatoesの支持率は90%に達し、「モダンホラーの帝王」スティーブン・キングも絶賛した。
    (筆者はキングのドラマ鑑識眼をかなり信頼している。過去に“Entertainment Weekly”のレビューで、“Veronica Mars”など見落としがちなドラマを幾つか指摘してくれた)

     
    製作/監督/共同脚本はマイク・フラナガン。来年公開予定の映画“Doctor Sleep”(キング原作、『シャイニング』の続編!)でも監督兼共同脚本をつとめる。

     
    壮年期のヒュー・クレイン役は、『E.T.』で主役のエリオットを演じた、あのヘンリー・トーマス。現在のヒューは、ベテランのオスカー俳優ティモシー・ハットンが扮している。
    芸達者な子役たちの中では、幼少期のルークを演じたジュリアン・ヒラードが抜群にユニークで上手い。総じて力強いアンサンブル・キャストだ。

     
    全編を通じ、クレイン家ひとりひとりについて、現在と過去の描写が目まぐるしく入れ替わる。出だしは面食らうが、全員がきちんと描き分けられていて、ストーリーがゆっくり展開するので、すぐに慣れる。ただし、本作は怖いというよりも、スリリングと言ったほうが正確だろう。

     
    再会と別れ、愛情と憎悪、絆と対立から生まれる感動的なシーンが数々あり、「家族ドラマ」と言ってもいいほどだ。それでいて、純然たるゴースト・ストーリーとして成立しているのが画期的なのだ。

     
    ヒルハウスで何が起きたのか? オリビアはなぜ死んだのか?
    多重構造の謎解きは、エピソードが進むにつれて、モザイクがかった図形が徐々に鮮明になるように開示される。このプロセスには、まるで頭の中でレゴ(LEGO)を組み立てているかのような精密感があり、実に小気味いい。
    さらに、ラストの3エピソードはスピード感も加わり、最終エピソードで明かされる驚愕の真相には説得力がある。脚本が緻密なので「推理ドラマ」としても十分通用する。

     
    “The Haunting of Hill House”は、スプラッターでもショッカーでもスラッシャーでもない。「ゴースト・ストーリー」 「家族ドラマ」 「推理ドラマ」の合わせ技、技巧の限りを尽くした、まれに見る知的で格調高い正統派ホラーなのだ!

     
    シーズン2は?
    邦題は『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』で、全10話から成るリミテッド・シリーズだ。完結しているが、評判が良かったのでシーズン2製作の噂は絶えない(Netflixはコメントしていない)。
    実現したとしてもまったく違うストーリーになると思うけど。

     
    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㉛
    Title: “The Last Time I Felt Like This”
    Artist: Johnny Mathis and Jane Oliver
    Movie: “Same Time, Next Year” (1978)


    中年向け不倫映画の隠れた名作。主題歌も忘れ難い。

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
    ◆バックナンバーはこちら
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