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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第68回 “HOME BEFORE DARK”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第68回 “HOME BEFORE DARK”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第68回“HOME BEFORE DARK”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     
    Appleの隠し玉は、9歳児記者による本格推理ドラマ!
    Apple TV+は昨年11月に始動したストリーミング・サービスだ。最大の話題作は、大手放送局で起きる権力争いと#Me Too運動を豪華キャストで描いた”The Morning Show”。見応えのある力作だが、主演のジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーン、スティーヴ・カレルがいずれも演技過剰で、まとまりを欠いてしまった。シーズン2に期待したい。

     
    一方“HOME BEFORE DARK”は、4月に配信が始まったAppleの隠し玉。フェイクニュースが蔓延しメディアが迷走する世の中で、9歳の記者がジャーナリズムの本質を問う痛快な本格推理ドラマだ!

     
    “If they cut me open, I would bleed ink”
    ―ワシントン州の小さな町エリー・ハーバー
    ヒルデ・リスコ(ブルックリン・プリンス)は家族とともにNYからエリー・ハーバーへ引っ越してきた。新聞記者の父親マット(ジム・スタージェス)が失業したため、マットの実家へ移らざるを得なかったのだ。
    母親のブリジット(アビー・ミラー)は元弁護士で、ヒルデには姉のイジー(カイリー・ロジャーズ)と妹のジニーがいる。引っ越しによって家族の関係はぎくしゃくしていて、父親は何だか様子がおかしい。

     
    ヒルデは映像記憶能力を持つ利発な9歳児で、NYでは子供新聞を発行していた。ウォーターゲート事件を描いた『大統領の陰謀』は、もう36回観た(セリフもほとんど覚えている)。彼女は生まれながらのジャーナリストなのだ(私の体内にはインクが流れている!)。

     
    そんなおり、この静かで平和な町で事件が起きた。マットの昔の友人ペニー・ギリスが自宅の階段で転落死したのだ。その日、ヒルデはガレージセールでペニーと会っていた。何かがおかしい。ヒルデの旺盛な好奇心が刺激され、父親譲りの記者魂が膨らみ始める。

     
    「ペニー・ギリスは他殺?」 ―ヒルデはウェブ新聞”The Magic Hour Chronicle”を立ち上げ、調査の第一報を公開した。だが9歳児の記事は警察や市民の感情を逆なでして炎上、ヒルデは町中で嫌われ者となってしまう。

     
    ヒルデは取材の過程で、ペニーに関する興味深い事実を知る。兄のサム・ギリスが31年前に誘拐の罪で投獄され、今も服役中なのだ。しかも被害者のリッチーは、当時小学生だったマットの友人だった。犯行に居合わせたマットは、裁判で「犯人の声はサムのものではなかった」と証言したが、陪審員は有罪判決を下していた。

     
    ヒルデは新しい友人ダニーとスプーンの協力を得て、父親が関係したリッチー誘拐事件を独自に調べ始める。
    エリー・ハーバーで封印されたはずの悲劇が、亡霊のように蘇った。
    31年前に何が起きたのか?

     
    ブルックリン・プリンスっていったい誰よ?
    ヒルデ役のブルックリン・プリンスは現在10歳、珠玉の小品『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)に主演して脚光を浴びた天才子役だ(この時のクレジットではブルックリン・キンバリー・プリンス)。プリンスのおかげで、共演した他の子役たちが大根役者に見えてしまった。

     
    プリンスは本作でも群を抜く存在感でストーリーをけん引し、目を輝かせた彼女が登場すると画面が活気づく。とにかく呆れるほど演技上手なのだが、かつてのダコタ・ファニングのように達者過ぎるゆえの嫌みがないのがいい。

     
    ヒルダの父親マット・リスコを演じたジム・スタージェスは英国出身、ソングライターでもある。この父娘の心温まる絆は本作のハートだ。

     
    イジー役のカイリー・ロジャーズは16歳、少し変わっているヒルデに複雑な感情を持つ姉を好演した。最近ではケビン・コスナー主演のウェスタン・ドラマ”Yellowstone”で、端役ながらきらりと光る演技を見せていた。

     
    9歳の子供から学ぶジャーナリズムの本質!
    主人公のモデルとなったヒルデ・リシアックは、実在するプロのジャーナリスト兼作家で現在13歳。彼女は9歳の時に、地元ペンシルバニア州で自前の新聞に殺人事件のスクープを載せて物議をかもした。父親と共著の子供向けミステリー・シリーズ ”Hilde Cracks the Case ”は、既に6冊出版されている。

     
    ヒルデはナンシー・ドルーのようなキュートな少女探偵ではなく、聡明で活発な小学4年生の記者だ。彼女の目を通して描かれるのは直観的推理ではなく証拠の探求と検証。暴かれるのは意外な犯人やトリックではなく、何層もの嘘と秘密に包まれた真実だ。
    ヒルデが日々学び、成長し、不屈の信念をもって真実に迫っていく姿は、微笑ましくも凛々しい。

     
    ストーリー展開はシンプルでスリリング、エピソードは次第に加速されて”binge-watch”状態に陥る。エンディングは事件の真相を示すとともに新たな謎が立ち上がるクリフハンガーで、次シーズンへのつなぎも文句なしだ。

     
    “HOME BEFORE DARK”は、フェイクニュースが蔓延しメディアが迷走する世の中で、9歳児の記者がわれわれの忘れかけているジャーナリズムの本質を問う、痛快な本格推理ドラマなのだ!

     
    邦題は『レポーター・ガール』(このタイトルの方がいいね)。シーズン1は約50分で全10話、シーズン2の制作も決定している。

     
    尚、Apple TV+のオリジナル・ドラマでは、小粒ながら以下の2作もお勧めだ。
    ”Mythic Quest: Raven’s Banquet”(『神話クエスト:レイヴンズ・バンケット』):
    なんちゃってカリスマリーダー率いる、ビデオゲームのベンチャー企業を舞台にしたコメディ。
    ”Snoopy in Space”(『スヌーピー 宇宙への道』):
    スヌーピーと一緒にNASAや宇宙旅行の基本が学べる、教育的で心温まるアニメーション。

     
    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㊻
    Title: “Grow Old with You”
    Artist: Adam Sandler
    Movie: “The Wedding Singer” (1998)

    ‘90年代ロマコメの傑作!カメオ出演しているのはビリー・アイドル。

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
    ◆バックナンバーはこちら
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