News

明けの明星が輝く空に 第197回:夢幻のヒロインたち8:霧島美穂(仮面ライダーファム)

登場作品:『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(2002年)
キャラクター設定:シリーズ初の女性仮面ライダー 姉を生き返らせるために戦う

「真司…真司…。靴の紐ぐらいちゃんと結べよな。」

戦いで傷付いた霧島美穂は、真司と別れた後、そうつぶやいてこの世を去った。瀕死の重傷であることは悟られたくなかった。常にマイペースでつかみどころがなく、あっけらかんとした態度を取っていた彼女らしい最期だ。

この作品の主人公である城戸真司(仮面ライダー龍騎)と美穂の出逢いは偶然だった。ある結婚詐欺師を追っていた見習い記者の真司は、その男が女性をだまそうとしている現場に踏み込む。しかし、男に詰め寄っている間に、女性は姿を消してしまった。それも、男から贈られた結婚指輪とともに。逆に詐欺師をだましたこの女性こそ、霧島美穂だ。無断で拝借した他人の豪邸に男を招き入れて信用させるあたり、相当したたかな人物である。

その美穂が犯罪に手を出すのには、理由があった。姉の遺体の冷凍保存を維持するための費用が必要だったのだ。そして姉を生き返らせるために、彼女は仮面ライダーファムとして戦う。最終的な勝者となれば願いを叶えることができるという、「生き残りゲーム」の参加者として。彼らは鏡の中の異世界に住むミラーモンスターとの契約により、全員仮面ライダーに変身することができる。つまり、本作で繰り広げられるのは、いわば最強ライダー決定戦。ライダー同士によるバトルロイヤルなのだ。

その参加者の顔ぶれは、さまざまだ。TV版『仮面ライダー龍騎』(2002年~2003年)には、学生や弁護士、実業家などが登場する。『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』は、TV版とは結末が異なる“アナザー龍騎”とも言える内容で、美穂はこちらが初登場。そのほか、まだTV版ライダーバトルから退場していない者たちが存在する。その中に、殺人鬼、浅倉(仮面ライダー王蛇)の姿もあった。この男こそ、美穂の姉を死に追いやった犯人で、美穂にとっては復讐を果たし、勝ち残って姉を生き返らせるという二つのチャンスを手に入れたことになる。

シリーズ初の女性仮面ライダーであるファムは、気品を感じさせる外見が印象的だ。それは、白をメインカラー(ファムのモチーフはハクチョウ)に、部分的に金色をあしらった配色のためだろう。白という色には「清廉」や「純粋」といったイメージがあるが、これは美穂という人物の内面を示しているのだろうか。姉を生き返らせたいという彼女の思いは、純粋で尊い。(その一方で、アクセントカラーの金色が「お金」、つまり美穂が人をだまして調達する金銭を象徴していると考えてみるのも面白い。ただの善人だとするよりも、人物造形として深みが出るだろう。)

ハクチョウというモチーフも、よく考えると示唆的だ。「スワンソング」という言葉は、死を前にハクチョウは美しい声で鳴くという言い伝えから来ているし、バレエの『白鳥の湖』は、演出によってはヒロインが命を絶つ結末もあるという。つまりハクチョウは、「死」のイメージもまとっている。前述したとおり、美穂は結局生き残ることができない。ファムのモチーフにハクチョウが選ばれたのは、それを暗示するためだったのかもしれない。

ファムの武器のひとつは、細長い棒状の剣だ。それを使って、フェンシングのように突き技を繰り出す。また、顔面を覆うフェイスシールドにはスリット状の“覗き穴”があり、背にはマントを装着。まるで西洋の騎士のような出で立ちで、白と金を配したカラーリングと相まって、“王家の女性剣士”とでも呼ぶべき高貴な雰囲気がある。それだけに、大いに活躍が期待されるところだったが、残念なことに戦闘能力は高くなかった。姉の仇である浅倉は戦いの中で“消滅”したが、ファムは浅倉の変身体である王蛇には刃が立たず、自分の力で倒すことはできなかった。美穂には手を血で染めて欲しくないという思いが、作り手にはあったのだろうか。

美穂はその後の戦いで重傷を負ったところを、真司に助けられる。倒れたまま動けない美穂を前に、動揺する真司。すると美穂はゆっくり左手を上げ、真司のおでこを指で軽く弾いた。「また引っかかった」とイタズラっぽい笑みを浮かべる美穂。どこまでも人を食った態度だ。しかし、すでに美穂は自分が助からないことを悟っていた。それでも真司を安心させ、二人は別れる。その直後、道端に倒れ込んだ美穂は空を見上げ、生き返らせることができなかった姉に謝罪した。そして、真司の名をつぶやく。出てくるのは感謝の言葉かと思いきや…。冒頭で紹介した「靴の紐ぐらいちゃんと結べよな」という台詞は、彼女が2回も真司の靴紐を結んでやったことを踏まえてのものだ。最期に「ありがとう」では、はっきり言って平凡な場面になっていたろう。それにどこか湿っぽいし、よそよそしさも感じてしまう。美穂の最期の言葉は、彼女のカラッとした人柄を示すとともに、真司に対する親しみの気持ちも表していたに違いない。そんなことを知る由もない真司は、バイクを運転しながら美穂の結んでくれた靴紐に視線を落とす。そうして嬉しそうな表情を浮かべ、走り去っていった。

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】いつの間にか、腰に不安を抱えるようになってしまいました。運動は問題ないのですが、体がほぐれていない朝はメリメリ音がしそうな感じ。湯治は無理だけど、打たせ湯とか電気風呂のある銭湯通いでもしようかな…。

—————————————————————————————–

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.102 海を渡った梅仕事!?

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

いきつけのパン屋さんに行ったら、タイ人のオーナーから、「あそこにいるお客さんが、梅干しについて知りたいって言うんだけど、話聞いてくれる?」と相談を受けました。そのお客さんは40~50代のアメリカ人の男性で、話を聞くと、梅の実をたくさん買ったので、梅干しを作ろうと思うんだけど、赤紫蘇はどこで売っているのか?という内容でした。近頃タイ人でも梅酒を飲むし、作ることにも興味があるようです。日本の文化は着実にタイに浸透しているなあと思っていたら…なんと西洋人が梅に関するこんなディープな質問をしてくるとは!!

梅干しじゃなくて、もっと簡単な梅酒や梅シロップを作ったらと提案したら、すでにYouTubeを見て両方作ったそう。そして青紫蘇なら最近スーパーでも見かけるけれど、赤紫蘇は私もチェンマイで見た事がないと伝えました。でも赤紫蘇がなくても梅干しは作れるし、まずは赤紫蘇なしの梅干しを好きかどうか食べてみたら?と薦めてみたところ、なんと彼はまだ梅干しを食べたことがないと言うではないですか。ええー!それじゃ出来上がりが分からないじゃなーい…と拍子抜けしながらも、西洋人が梅仕事をする時代なんだなあと驚いた一コマでした。

—————————————————————————————–

Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
—————————————————————————————–

花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.101 ニッポン中古文化

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

お茶の時間、タイ人の友人が、日本の中古品のことを話題にあげました。もちろん、20年前からタイでも中古品のお店はあり、洋服の中古店などは、こだわった店主がセレクトしたものが置いてあるようなイメージでした。ところが今は…「いやいや、もっと規模が大きいファクトリーのような中古販売場になっていて面白いのよー!」と友人がいうので、そのまま二人で一緒に見に行くことに。いつも通っている大通りから少し入ると、殺風景で大きな敷地に4~5軒、トタン屋根の工場のような建物がありました。建物の中に入ると日本の家にありそうなものが山のように置いてあります。洋服、おもちゃ、アウトドア用品、家具、トランク、胡麻すり器、日本人形、引き出物の食器…。圧倒されて、何を見て良いかわからないほど!また、曜日によって、セールの割引額が変わり、洋服やバッグは1キロいくらで販売されています。ちなみに私が行った日は90%オフセール!友人はコーチのバッグを数百円くらいで買いました。タイ人や中国人、西洋人もいます。目が肥えている人は、金が付いたもの、お財布など(たまにお金が入っている)を目当てにする人もいるそうです。

中古販売場の雰囲気
中古販売場の雰囲気

つまり、これらは亡くなった人の荷物(遺品)、引っ越しで不要のものなどが、そのままこちらに海を越えてやって来た証であり、日本の高度経済成長期で物が豊かだった時代の痕跡のように感じました。不要なものが必要な人の所に行くのは良いことですが、これからますます進む高齢化社会の一面を切り取った現実に見えました。土地が変われば見方も変わる。日本では要らないものでも他の視点でみたら安い宝物になるのです。そんなお店の中で躊躇し圧倒されていた私も、しばらくすると友人の宝物探しに参加しているのでした。

昭和レトロなキリンの100周年ペアグラスを150円でGET
昭和レトロなキリンの100周年ペアグラスを150円でGET

—————————————————————————————–

Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
—————————————————————————————–

花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

明けの明星が輝く空に 第195回:特撮俳優列伝31 志田こはく

半世紀続いたスーパー戦隊シリーズが、ついに幕を下ろした。最後の作品となった『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(2025年2月~2026年2月)は、なんとか無事に完走した、という印象が強い。というのも、メインキャストの1人が不祥事を起こし、これから物語の佳境を迎えるという昨年11月、番組降板に追い込まれてしまったからだ。そのピンチを救ったのが、第40話から急きょ代役で出演した、志田こはくさんである。

志田さんが演じたのは、戦隊メンバーの一人、ゴジュウユニコーンに変身する一河角乃(いちかわすみの)。前任者の降板が突然だったため、同一人物を異なる俳優が演じることになってしまった。しかし、偶然にも角乃が探偵という設定があったおかげで、何とかつじつま合わせが可能になった。つまり、彼女は潜入捜査のため特殊な力を借りて顔を変えたのだが、その容貌が気に入ったので元に戻らなくてもいいことにした、という理由付けがされたのだ。

正直、無理がないとは言い切れない展開だ。しかし、志田さんの勢いのある演技は、そんな疑念を吹き飛ばすほどパワフルなものだった。「無理は承知の上」と言わんばかりの、いい意味で開き直った、潔さすら感じさせる明るい演技は、全く嫌みがない。これは天性のものだろう。

その溌剌とした明るさは、テレビドラマ初出演となった『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年3月~2023年2月)でもいかんなく発揮されていた。そう、志田さんはすでに、スーパー戦隊シリーズの出演経験があったのだ。それも、オニシスターに変身して戦う鬼頭はるか役。戦隊メンバーの一員だ。そこで見せたはじけっぷりは、新人俳優であることを感じさせない、天晴なものだった。

実際、番組プロデューサーの白倉伸一郎氏は、志田さんのことを「逸材」だと思ってみていたそうだ。戦隊シリーズの中で、最も印象に残っている女性メンバーは誰かと聞かれ、­­「強いて挙げれば」という条件付きながら、唯一、志田さんに言及している。白倉氏いわく、志田さんは「18歳ながら俳優として一本立ちしており、周囲の模範になるようなところがある。」実際、「志田を見習え」と言っていた監督も中にはいたそうだ。

志田さんが演じた鬼頭はるかは、さっぱりした性格の女の子で、かなり三枚目な役どころだ。敵からの攻撃を受け「うへぇ!」と叫んだりするなど、“ヒロイン”という言葉から想像するようなタイプではない。ファンの間で話題になったのは、毎回のように見せる“変顔”で、かなりオーバーな表情を臆面もなく披露してくれている。そんなコメディエンヌとしての素養を買われたためか、鬼頭はるかが運転免許を取ろうと四苦八苦する第40話「キケンなあいのり」は、志田さんのコミカルな演技を前面に押し出した作品となった。少々やりすぎと感じる場面もあるのだが、それは演出の問題だろう。路上教習中に敵と遭遇し、ハチャメチャな運転で対峙するシーンは、志田さんのはっちゃけた演技が最高レベルに達し、痛快だ。そして物語終盤、めでたく免許を取得し得意げなはるかが、あちこちにぶつけた跡のある車で現れ、仲間をドライブに誘う。その時の、滑稽なほどカッコつけたセリフの言い回しと表情は、絶妙の一言。僕は思わず吹き出してしまった。

そんな志田さんだが、俳優としての魅力はむしろシリアスな場面にある。特に、深刻な場面で見せる目の表情がいい。ご本人も印象に残っていると語る第10話「オニがみたにじ」は、そういった意味で見どころが多い。ある日、どんな願いごとも叶えられる条件をクリアしたはるかは、失った人生を取り戻すため戦隊から脱退する。そうして彼女の願いによって書き換えられた世界では、真利菜という別の女性が代わりに戦隊メンバーになっていた。しかし真理菜は、はるかの代わりに人生の苦悩も引き受けてしまう。苦悩する真利菜を見たはるかの心が揺れる。その際の思いつめたような表情。結果として彼女は戦隊に戻る決意を固めるのだが、その時には揺るぎない強い意志を感じさせる顔に変わっていた。眼差しによって、演じる人物の内面を見事に表現する志田さんの演技が、第10話のドラマ性を高めていると言えるだろう。

志田さんの目の演技は、ピンチヒッターとして一河角乃を演じた『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』でも、いいアクセントになっている。彼女のシリアスな表情が物語にドラマ性を加味し、コミカルなシーンの多い番組を締めてくれているのだ。キャスト降板からの代打出演という注目される状況で、きっと大きなプレッシャーもあっただろう。そんな中、堂々とした見事な代役ぶりだった。いや、むしろ、単なる代役を超え、「一河角乃=志田こはく」というイメージを視聴者に植え付けることに成功したのではないだろうか。まさに番組のピンチに現れた「救世主」。業界での評価も、さらに上がったに違いない。今後の活躍も、大いに期待できそうだ。

個人的な話をすると、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、放送当時、最後の数話しか観たことがなかった。今回、第1話から鑑賞し始め、途中第40話をフライングして観て、この原稿を書いている時点で第32話。残りは第40話を除いた17話だ。ここからは、志田さんの出演シーンをじっくり味わいつつ、ゆっくり完走を目指そうと思う。早く観終わってしまったら、もったいない。今は、そんな気分だ。

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】これまで大阪駅は乗り換えで利用した程度でしたが、今回その周辺も含め、初めて見て回って驚きました。新しい、きれい、そして便利!あっち見て「へえー」、こっち見て「ほおー」。完全に“お上りさん”状態でした。

—————————————————————————————–

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.100 ピーチ色のTシャツ

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

3月頭に、タイ人作家さんがやっている草木染めのワークショップに行って来ました。今の時期、満開の花を咲かせているのは、東南アジアに生息し、flame of forest flower(森の炎:鳳凰木)と呼ばれる木。炎と呼ばれるほど、鮮やかなオレンジ色の花で染めるという企画です。そして、その花を持って行くとワークショップ代が無料になりますというキュートなアイデアも!確かにこの時期、道路沿いにオレンジ色の花が落ちてオレンジ色の絨毯のよう、という場面を目にします。リサイクルという意味でもそれを拾って染めができるとは、まだ田舎であるここだからこそ実現可能なアイデアですね。染め自体は何度かやったことはあるのですが、この季節のお花で染めるのは初めて。どんな色になるのか期待ワクワク。早速花を煮たエキスに薄汚れた私の白いTシャツを入れた瞬間、一気にきれいな濃いオレンジ色に染まりました。さてその後、乾かす時間が充分になく、みんな家に持ち帰って干すことに。しかし、帰宅後、すっかり家のゴタゴタに惑わされた私は、ビニールにTシャツを入れたまま寝てしまいました。翌朝起きて慌ててTシャツを出してみるとくしゃくしゃになっていたところがマダラになって、お世辞にもタイダイ染めとも言えない模様に…。

ワークショップにて

穏やかな風景

急いで何度も何度も洗濯をしていくとみるみるうちに色が消えていき、もうどうしようもないくらい薄くなって、ようやくマダラが消えたのでした。「なんだか貧弱になっちゃったなあ。」とがっかりしながらTシャツを干しておいたその日の夕方…夕日の中、乾いたTシャツがきれいなピーチ色に変身しているではないですか。濡れた状態では想像もしなかった、失敗から生まれたピーチ色のTシャツ。この手間のかかった季節色のTシャツは、アップサイクルされたお気に入りの一枚となりました。

ピーチ色のTシャツ

—————————————————————————————–

Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
—————————————————————————————–

花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

明けの明星が輝く空に 第194回:『ウルトラマンF』

今年の1月、仮面ライダーシリーズ初の女性主人公が登場する作品、『仮面ライダーアインズ』の配信が始まった。ならば、ウルトラシリーズも女性が主役の作品がそろそろ出てもいいのではないか?これについては先日、ウルトラシリーズ最初期の2作品に出演した桜井浩子さんに、ご意見を伺う機会(白石雅彦著『「ウルトラQ」の誕生』と『「ウルトラマン」の飛翔』の増補版刊行を記念したトークショー)があった。その際、実写化の候補になるかもしれないとして桜井さんが名前を挙げたのが、小説『ウルトラマンF』だった。

ホラー小説作家として知られる小林泰三氏が書いた『ウルトラマンF』。僕は数年前に読んでいたのだが、正直な話、物語としてどこか消化不良な印象を受けた。ただ、10回以上の連載を想定した内容だった話を、4回分に縮小しなければならなかったという事情があったそうだから、物足りなかったのはそのせいなのだろう。

テレビ番組『ウルトラマン』の後日譚にあたる『ウルトラマンF』には、番組の主要キャラクターたちが登場する。今作品でウルトラマンになるのは、科学特捜隊の唯一の女性隊員、富士明子(『ウルトラマン』での表記はフジ・アキコ)だ。彼女は、『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」で宇宙人によって巨大化させられた過去があるが、今回は巨大化は特殊なナノロボットの仕業だったという設定が加えられた。そして、ある事故が起きてナノロボットが発動。富士隊員は巨大化してしまう。事故が発生したのが科特隊の施設内だった上、巨大化の程度も抑えめだったため、外部に知られずに済んだが、その後の作戦行動中に再び巨大化。その事実は、すでに巨人兵士計画を進めていた、ある国連関係者の知るところとなり、結果として富士隊員はその計画に協力することとなる。

しかし巨大化しても、富士隊員の身体は人間のままだ。ウルトラマンではない。ただ、彼女は特別に開発された巨人兵士用のアーマーを装着しており、それにはどんなエネルギーでも吸収し成長する宇宙生物バルンガの能力が取り込まれていた。そのおかげで、“悪のウルトラマン”、ダークザギの破壊光線を浴びてしまった富士隊員だったが、特殊アーマーと細胞内のナノロボットとの相互作用により、肉体がウルトラマンへと変貌する。

実を言うと、宇宙生物バルンガはウルトラシリーズ第一作、『ウルトラQ』の登場怪獣だ。『ウルトラマンF』には、このほかにもシリーズ各作品の“ネタ”が効果的に織り込まれている。例をもうひとつ挙げると、富士隊員と江戸川由利子が双子の姉妹であるという設定。江戸川由利子は『ウルトラQ』の主人公の一人で、両人物とも同じ俳優=桜井浩子さんが演じていたのだが、小説終盤、双子という設定が生きてくる。富士隊員が人間の姿に戻るための細胞の再構成に、由利子のゲノムが利用されるのだ。

この小説を原作にして、映像作品を作るとしたらどうだろうか?素人なりに想像してみよう。もし映画化するなら、ダークザギらを倒す小説中盤の第3章までが良さそうだ。その理由は、敵の“ラスボス”感が強く、交戦中、偶然にも富士隊員がウルトラマンへと変貌を遂げて敵を倒すという、まさにクライマックスにふさわしい展開だからだ。その後、それぞれ新たな敵が現れる第4章と第5章は、続編という形で分けた方がいいだろう。ただし、敵が小ぶりになった印象がある上、富士隊員の内面の描写が少ない点は気になる。彼女はウルトラマンになろうと思っていたわけではない。結果として通常の人間ではなくなってしまった彼女がどう感じ、何を思うかといったことが、もっと語られるべきではないかと思う。

映像化に際しては、ネックになりそうな問題もある。それは、アーマーが開発される以前の、肉体が巨大化しただけの富士隊員の姿をどう見せるかということだ。小説ではぼかしているが、どうやら裸身のようなのだ。昔から、巨大ヒーローに変身した主人公の服はどうなるのかという問題を、僕ら視聴者は意識の外に追いやってきた。普通に考えれば、ビリビリに破けてしまうだろう。このことを念頭に置いた発言ではなかったが、桜井さんはAIによるフェイク画像の蔓延という近頃の風潮を懸念されていた。ましてや、裸となると…。

もちろん、女性登場人物の描き方で注意が必要なのは、映像の面だけではない。たとえば、富士隊員が理性より感情を優先させたかのように思える行動を取る場面があるが、これは固定化した古い発想の表れだと指摘できるのかもしれない。しかし、全般的に見れば、容姿についての言及がほぼないことや、愛を行動原理にしていないことなどは、男目線からの型にはまった作劇とは一線を画しており、評価されるべきだろう。

小林泰三氏は本作のあとがきで、面白いことを言っている。『ウルトラマン』のファンは怪獣派、ウルトラマン派、そして巨大フジ隊員派(!)に分類できるというのだ。小林氏本人は、もちろん巨大フジ隊員派。そんな派閥があることは初めて知ったが、サブカルチャー界隈では「巨大娘」に萌える人もいるらしい。そう言えば僕も、どちらかといえば背が高いアイドルが好きだった。巨大娘萌え…。もしかしたら、素養があるのかもしれない。

参考:過去記事

第127回:ウルトラ名作探訪3:「バルンガ」

第143回:ウルトラ名作探訪11「禁じられた言葉」

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】窓の外にバードフィーダーを吊ってひまわりの種やミカンを置いたら、シジュウカラやメジロが来るようになりました。でもこれも、自然のエサが少なくなる冬の間だけ。小鳥のレストランも、もうじき店仕舞いです。

—————————————————————————————–

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.99 ポン・デ・リングみたいな果物!?

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

先日、パートナーの親戚が、南部の方から海の幸を沢山持ってきたというので、バーベキューにお呼ばれしました。こんがり焼かれた沢山の蟹や海老、いか、貝などのいい香りが庭中に行き渡り、お腹もそれに応えるように準備万端。お皿に山ほどの魚介類があり、日本だったらおいくらする!?というほどのご馳走っぷり。北部料理には海の幸がないため、久しぶりの魚介類をみんなで堪能しました。

そんな食後にご親戚の一人から「ヨーコ、マカムテー知ってる?」と聞かれました。マカムはタイ語で、いわゆるタマリンド(タイのフルーツ)のこと。我が家にも2本マカムの木があるので、「あ、うちにもあるよ!」と得意げに言ったのですが、みんな疑いの目。「マカムテーだよ!?」そして見せてくれたのが、きれいな黄緑とマゼンタピンクの、グルンと丸まったポン・デ・リング(ミスタードーナツの定番商品ポン・デ・リング)のような形のフルーツ。確かに我が家のマカムは茶色くて長い実で地味。さっそく、その柔らかい黄緑の皮を剥くと、ピンクがかった白い実が。サクサク&スカスカした食感でほんのり甘いかなあ!?我が家の茶色くねっとりしたマカム(タマリンド)とは全く別物。名前は一部一緒でも予想外の果物でした。マカムは日本のスーパーでも売っているくらいだいぶメジャーになって来ましたが、このマカムテーは傷みが早いのでなかなかお目にかかれないようです。まだまだ知らない食べ物があるなあ、国内食の旅にいつか行くのもいいなあと思った一コマでした。

まるでポン・デ・リングのようなマカムテー
先日公園に行ったら、珍しくこんな形のヤシの木が。

—————————————————————————————–

Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
—————————————————————————————–

花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

明けの明星が輝く空に 第193回 特撮キャラも見た目が9割!

誤解を恐れずに言おう。僕はルッキズムに支配されている!応援したくなるスポーツ選手は、だいたいイケメン・イケジョ。趣味のロードバイクを購入する際には、9割は見た目で選んだし、スマホも色と形が購入の決め手になった。

当然、僕のそういった嗜好は、特撮キャラクターにも及ぶ。先月の記事で取り上げたホースオルフェノクは、騎士のような外見に一目惚れした怪人だ。仮に僕がコスプレーヤーだったとしたら、迷わずそのコスチュームを選び、コスプレ会場に乗り込むことだろう。

物心ついたころから、僕にとって至高の特撮ヒーローはウルトラセブン(『ウルトラセブン』1967年~68年)だった。それは、悲劇性をはらんだ彼の活躍が胸に刺さったからだが、見た目の要素も小さくなかったことも事実だ。ホースオルフェノク同様、特撮史上、一二を争うイケメンではないかと思う。特徴的なのは、横長の六角形をした目だ。ウルトラマンの卵形の目とは対照的に、シャープな輪郭線を持つ目。前寄りの位置に小さな黒目(撮影用マスクに明けられた覗き穴)があり、そこから何本もの筋が放射状に、黄色に彩色された周縁部に向かって伸びる。一説によると、ウルトラセブンをデザインした芸術家の成田亨氏は、イギリスの彫刻作家、バーバラ・ヘップワースの影響を受けているという。ヘップワースの作品の中には、空洞に弦を張ったものがあり、成田氏ほかの作品には、それを取り入れたものがあるという。ウルトラセブンの目も、同じことが言えるのかもしれない。しかしその目にある筋は、見ようによっては一つの天体から四方に向かって伸びる光跡のようでもある。成田氏のデザイン画を見たとき、僕は直感的に宇宙を表現したものと感じた。

シャープな線で構成されているのは、目だけではない。銀色に輝くメタリックな頭部全体に、同じ特徴が見られる。特に人間の唇や顎をデフォルメしてデザインされた口元は、まるで彫刻刀で彫られかのようだ。さらに頭頂部の、西洋の騎士のヘルメットにあるようなとさか状の装飾。類似するデザインは、ウルトラセブンより先に、漫画(のちにアニメ化もされた)『鉄人28号』の主人公ロボットにも見られた。ただ、ウルトラセブンが独創的なのは、それが取り外し可能な武器で、ブーメランや小刀のような使い方ができたことだ。切れ味鋭い刃の部分は、当然ながら非常に鋭角的でシャープな形状をしている。

僕にとって外見が大事なのは、ヒーローだけでない。怪獣も同じだ。みなさんは、ゴジラの顔つきが作品ごとに違うことをご存じだろうか。新たに着ぐるみを作り直すため、微妙に変わってしまうのだ。また、シリーズが進んでいくうちに、目がクリッとして愛嬌を感じさせるような顔になったのは、ゴジラが人類の味方という設定に変わったからだった。その後、原点に戻って再び人類に災厄をもたらす存在となると、ゴジラは一様に凶暴な目つきになる。そんな中でもイイなあと思うのは、『ゴジラ2000 ミレニアム』(1999年)のゴジラだ。目つきは鋭いが、黒目が大きいせいか邪悪さは感じられない。むしろ、勝負に挑むアスリートのように、邪心のないまっすぐな目をしている。そして頭は小さく、長めの口吻は先が鋭角的で、歴代ゴジラの中でもスピーディーに動けそうな雰囲気がある。そして、各パーツのバランスが良く、非常に整った顔立ちのゴジラだと感じる。(その分、怪獣としての面白みには欠けるかもしれない。たとえば、着ぐるみの造形が粗雑な印象でアンバランスな印象がぬぐえない『ゴジラの逆襲』(1955年)の“逆ゴジ”や、極端に小さい目が、どこを見ているかわからない『シン・ゴジラ』(2016年)の“シンゴジ”には、尋常のモノにはない気味悪さと迫力があった。)

ただし、僕がいちばん好きなゴジラはほかにいる。それは、一般的な意味でのイケメンとは違うかもしれない。というのも、顔を腫らしたボクサーのような顔つきをしているからだ。そのゴジラとは、『モスラ対ゴジラ』(1964年)に登場した“モスゴジ”。顔が腫れているように見えるのは、眉骨付近の肉が厚ぼったく、頬の肉が垂れ気味なせいだが、強い眼光を放ち、何発パンチを浴びても戦意を失わない猛者といった雰囲気がある。さらに気に入っているのが、無理に怖そうな表情を作っていないところだ。最近のハリウッド版ゴジラは、取ってつけたようなしかめ面をしており、僕にはこけおどしのようにしか見えない。モスゴジはそれに比べれば無表情で、それがかえって凄みを感じさせる。余談になるが、以前、若貴兄弟の“お兄ちゃん”こと若乃花関の、現役時代の写真を見て背筋がブルッとしたのを覚えている。それは、取り組み前の仕切りの写真だった。無表情ながら、その目からは戦いに集中していることが伝わってきて、なんとも恐かった。あれが殺気というものだろうか。

最後に、僕が好きな特撮キャラはイケメンだけではない、ということを付け加えておこう。たとえば、『人造人間キカイダー』(1972年~1973年)の悪役ロボット、ハカイダー。頭に透明なヘルメット/笠のようなものを被り、移植された科学者の脳が透けて見えているという奇妙なデザインなのだが、卑怯な手を嫌い、実力で勝とうとする姿が魅力的だった。反対に、たとえばウルトラセブンの中身が“ダメンズ”だったら、いくら外見は良くても好きにはならなかったろう。つまり、見た目が9割、だけど残りの1割も大事、ということだ。(最後の最後で記事の主旨からずれてしまった気もするが、結論としてはきれいに収まった・・・、かな?)

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】ウルトラシリーズ最初期のヒロインを演じた、桜井浩子さん登壇のトークショーに行って来ました。最後の質問タイムで、女性が主人公の作品が今後生まれる可能性について尋ねたところ、なるほどそういうことにも気を配る必要があるのかと気がつかされ、勉強になりました。

—————————————————————————————–

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.98 新年です!自分のお寺にGO!

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

タイ北部では、一部のお寺が、干支の仏像を守り本尊としています。そして自分の生まれた年の干支のお寺に、一生に一度行くと幸運に恵まれるという言い伝えがあります。タイ人の友人に連れられ、私も20年前にチェンマイ県のお隣のランプーン県にある酉年のお寺に行きました。お寺には酉の置物がたくさん飾られていたのを覚えています。友人の話に触発され、私も!と早速お正月ドライブへ。運よく酉年のお寺は我が家から比較的近くちょうどいい距離。20年前の印象とは違い、観光客も増えていて、きれいに飾り付けされていました。多くの参拝客とともに仏塔の周りを周り、無事新年のお参りができました。元旦にタイの餅米をついたお餅でお雑煮を、そして人生の節目に自分の干支のお寺に行くなんて、日本とタイの混合文化行事という感じでいいもんだなあ…と青空に映える仏塔を眺め一年のいいスタートを切ったのでした。

タイの北部に訪れる際は、ぜひご自分の干支のお寺に行ってみてくださいね。

青空にそびえ立つ酉年のお寺の仏塔
酉の置物があちらこちらにたくさん!
たくさんの観光客で賑わっていました。
仏像
お参り後に可愛いカフェを見つけて一休み

—————————————————————————————–

Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
—————————————————————————————–

花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

明けの明星が輝く空に 第192回 干支と特撮:ウマ

去る12月某日、不要品処分のため、リユースショップに行った時のこと。査定の間、店内をぶらついていて、ウマがモチーフの怪人、ホースオルフェノクのフィギュアを見つけた。もちろん“即買い”した。今回の記事の参考資料として・・・というより、その姿に惚れ込んでいたからだ。
※写真は本人所有のフィギュアを撮影

平成仮面ライダーシリーズ(2000年1月~2019年8月までの20作品)には、ユニコーンなどを含むウマ系の怪人が数体いる。ホースオルフェノクは2003年~2004年放送の『仮面ライダー555(ファイズ」)』に登場。甲冑をまとった、西洋の騎士のような出で立ちは、「怪人」という言葉が似合わないほど雄々しく凜としており、どこかの古城に飾っても違和感がないかもしれない。ライダーシリーズ、いや、あらゆる特撮作品の全ての怪人の中で、その魅力的な容姿は群を抜いている。

まず目につくのは、その落ち着いたカラーリング。特撮ヒーローや怪人は、子どもを対象にしたビジネス=キャラクター商品販売の都合上、カラフルなものが多いが、ホースオルフェノクはグレーのモノトーンだ。『仮面ライダー555』の設定では、「怪人=人類の進化形態として蘇った死者」という設定があり、「死」のイメージを喚起する色としてグレーが選ばれたのだが、これがホースオルフェノクの騎士のような甲冑姿と相まって、重厚感を生んでいる。

もちろん、派手な色使いがさまになる場合もある。たとえば『仮面ライダーキバ』(2008年~2009年)には、ステンドグラスをデザインコンセプトに取り入れた怪人たち=ファンガイアが登場。黒がベースカラーの身体に、鮮やかな色が散りばめられ、ちょっとしたアート作品のようだ。ウマ系の怪人で言えば、『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010年~2011年)に登場するユニコーンヤミーは、ビジュアル系バンドのような、衝撃的な色彩が目を引く。薄い紫色の身体に、金色の角と銀色の顔。身体にも金色や銀色などを配し、ウェーブのかかった長いたてがみは赤紫色だ。

ファンガイアとユニコーンヤミー、そして僕の“推し怪人”であるホースオルフェノクも、同じデザイナー=篠原保氏が手がけた作品だ。ウマというのは鼻梁が長く、頭部が大きくなりがちなモチーフだが、ユニコーンヤミーとホースオルフェノクの場合、小顔でスタイリッシュなデザインにうまく落とし込んでいる。ただ、両者は首の長さが対照的だ。

ユニコーンヤミーの首にはヒトに似た顔があり、二つの顔が縦に並んでいるため、当然首は長くなる。長い首にもう一つの顔がある、と言った方がわかりやすいだろうか。顔が二つあるのは、ヤミーと呼ばれる怪人たちに共通した特徴だ。彼らが登場する『仮面ライダーオーズ/OOO』は、出渕裕氏――第189回『干支と特撮:ヘビ』(https://www.jvta.net/co/akenomyojo180/)で紹介したキャラクターデザイナー――がメインデザイナーを務めており、どうやら「二つの顔」は篠原氏のアイディアではなさそうだ。ただ、篠原氏はその7年前、『仮面ライダー555』のキャラクターデザインを単独で担当した際、同じコンセプトのデザインも考案していた。その一例が、ホースオルフェノクだ。

ホースオルフェノクの二つの顔は、ユニコーンヤミーのように、それぞれ独立したものとして存在しているわけではない。むしろ、二つが融合して一つになっているかのようだ。どういうことかというと、ウマの顔が仮面のようにもう一つの顔の前にあり、その重なり具合が絶妙なため、まるで一つの顔のように見えるのだ。この記事冒頭で、ホースオルフェノクの姿を「全身甲冑に覆われた、西洋の騎士」にたとえた。その頭部は、ローマ兵かギリシャ兵が着用したヘルメットをかぶっているように見える。特にその前面は、鼻を守るノーズガードが特徴的な、古代ギリシャのコリント式ヘルメットをモチーフにしたかのようなデザインだ。コリント式ヘルメットには、顔の側面を守る頬当てもあるため、兵士の顔で露出する部位は目のあたりと口元に限定される。ホースオルフェノクの場合は、額のあたりにウマの顔があり、その鼻梁がノーズガードのように鼻、さらには口元までも隠す形になっている。だから、その下に隠された顔で露出しているのは、二つの小さな目とその周辺だけだ。

ただ、この目は小さくとも、しっかりとした存在感がある。明るいグレーで彩色され、周囲が黒に近い色のため、まるで光を放っているようだ。生気を宿していると言ってもいい。それに比べ、ウマの目の方は漆黒で、まるで死んでいるかのように見える。もちろんこれは意図されたものだろう。おそらく、ウマの顔は単なる飾りで、その下がホースオルフェノクの本当の顔だということを示しているに違いない。それでも、顔面の大半を占めるウマの鼻梁の存在感が大きく、その下で輝くグレーの目とうまく融合して一つの顔に見えてくる。一種のだまし絵のようでもあり、なんとも巧みなデザインだ。

その他にも、正面からは耳に見えるが、横から見れば板状に後方に伸びる装飾や、ウマのたてがみのようでもあり、映画に出てくるローマ兵のヘルメット頭頂部に付けられた房飾りのようでもある装飾など、篠原氏のさまざまなアイディアが込められたディテールは見ていて楽しい。実は、控えめながら角も一本あり、だったらユニコーンオルフェノクでしょ、とツッコミたくもなるが、それは野暮というもの。特撮キャラクターの角については、4年前の記事(https://www.jvta.net/co/akenomyojo133/)にも書いたが、やはり角があるとグッと引き締まる(と思う)。これは完全な妄想だが、僕には見えるようだ。篠原氏がデザインの仕上げに角を加え、ひとこと、「これぞ画竜点睛・・・」と満足げにつぶやく姿が。

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】コラム記事仲間の土橋さんにいただいた『モスラの歌』のレコード。特注したシングル盤用フレームが完成し、早速飾りました。持ってること自体が奇跡的な半世紀以上前のお宝品。こうやって飾っている人間は他にいるまいと、悦に入っています。

—————————————————————————————–

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
バックナンバーはこちら

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら