News

巨竜を、迎え撃て。 『ツイスターズ』の予告編

【最近の私】最近はマ・ドンソクがお気に入りで、彼の映画を観ています。新作『犯罪都市 PUNISHMENT』予告編を観て楽しみにしています。

火山の噴火や、隕石の落下など、現実では起きてほしくはないが、映画としてハラハラできる自然災害(ディザスター)映画はこれまで数多く制作されている。大規模な災害をスペクタクルな映像で描くので、観客を魅了しているからか。今回はそのディザスター映画の中から、『ツイスターズ』(2024年)の予告編を紹介したい。

予告編の開始そうそう、竜巻から逃げる人たちの場面から始まる。

“『ジュラシック・ワールド』の製作陣が贈る 地球が生んだ最強のモンスター”とテロップが流れる。巨大竜巻は直径2000メートル、時速500キロ。この数字から、もはや怪獣を軽くしのぐ規模である。自動車なども軽く吹き飛ばされていく。

前作『ツイスター』(1996年)が制作される数年前、ある映画がこれまでの特撮技術を大きく変えた。それは『ジュラシック・パーク』(1993年)である。最先端のCGでリアルに動く恐竜の姿に、当時の観客は圧倒された。以降、さらなる技術の発達とともに、今まで作られなかった災害を描く映画が多く作られ、『ボルケーノ』『ダンテズ・ピーク』(ともに1997年)、『アルマゲドン』(1998年)などが撮られている。

予告編に戻る。気象学の天才ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)は、ニューヨークで自然災害を予測し、被害を防ぐ仕事をしている。彼女の故郷、オクラホマで史上最大の竜巻が群れで発生していることを知る。竜巻にトラウマを抱えているケイトだが、友人からの依頼で、自身の故郷に戻ることになる。そこで、竜巻チェイサーのテイラー(グレン・パウエル)とともに、この異常気象に挑む。

竜巻チェイサーとは、レーダーを搭載した車で竜巻に接近し、竜巻の発生や移動などのメカニズムを解明すること。竜巻の予知精度を上げる研究のためだ。タイラーは「最新技術など無用。現場での経験がすべてだ」と自分の現場で鍛えたカンと経験で竜巻に立ち向かおうとする。ケイトは、巨大な竜巻を破壊する方法を考えつく。だがそのためには、竜巻に近づく必要がある。どうやって近づく?タイラーが「俺ならできる」と竜巻に危険なアプローチを試みる。巨大竜巻VS人類の戦いが始まる中、竜巻が合体してさらに強力になっていく。ケイトとタイラーの技術と現場主義で竜巻を破壊できるのか?

本作の監督はリー・アイザック・チョン。『ミナリ』(2020年)で、アメリカで暮らす韓国系移民を描いた(監督も韓国系の移民である)。『ミナリ』は高い評価を得て、その年のアカデミー賞で、ユン・ヨジュンが助演女優賞を受賞している。『ミナリ』の次に竜巻映画を手がけるとは意外だが、自然災害に加えて、人間ドラマを描いているのではと予測できる。

『ツイスターズ』の原案に『トップガン マーヴェリック』(2022年)のジョセフ・コシンスキー監督が名を連ねている。彼は『マーヴェリック』で実物の戦闘機や空母を使って、迫力の映像や空中戦を描いた。また、アメリカで実際に起きた巨大山火事を題材とした『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017年)も撮っているので、もしコシンスキーが「ツイスターズ』を撮ったら、さぞド迫力の映像が生まれたのではと思う。

前作『ツイスター』が世に出てから、約30年が経った。この間、映像技術はどんどん進化し、さまざまな特殊効果を使った映画が作られている。新たに生まれ変わる『ツイスターズ』が、どう観客を驚かせてくれるのか楽しみである。とりあえず、映画館で巨大な竜巻を体験してきます!

今回注目した予告編:『ツイスターズ』

監督:リー・アイザック・チョン

出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル

2024年8月1日より公開

公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/twisters/

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

誰が許されざる者なのか ジーン・ハックマン in 『許されざる者』

【最近の私】9月公開予定の『エイリアン:ロムルス』の予告編を観ました。監督があの『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレスなので、きっと怖い話になっているはずです。

『許されざる者』(1992年)は、クリント・イーストウッドが製作・監督・主演を務めた作品で、この年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、助演男優賞(ジーン・ハックマン)、編集賞を獲得している。本作は数々の西部劇に出演してきたイーストウッドが「最後の西部劇」としてメガフォンを取った。今回はこの作品でジーン・ハックマンが演じた保安官を紹介したい。

物語の舞台はワイオミング州にある小さな町ビッグウイスキー。この町で、カウボーイと娼婦の間で事件が起きる。カウボーイ2人が娼婦の態度に腹を立て、ナイフで彼女の顔を切ってしまう。カウボーイたちは保安官リトル・ビル(ジーン・ハックマン)に突き出されるが、ビルは2人に馬7頭を娼婦の雇い主に渡すことで、事件を終わらせてしまう。この結果に納得できない娼婦たちは、1000ドルの賞金をカウボーイの首にかける。

一方、カンザスの田舎で、マニー(クリント・イーストウッド)が娘と息子と暮らしていた。マニーはかつて列車強盗や殺人で悪名が高かったが、妻に先立たれ、今は農業を営んでいる。貧しい生活を送っていたマニーは、ビッグウイスキーで起こった事件の話を知る。マニーは賞金目当てで、旧友ローガン(モーガン・フリーマン)を誘い、一緒にカウボーイのいる町を目指す。

『許されざる者』でマニーと対立するのは、保安官ビルだ。ビルは自分の町を守るために、無法者や見知らぬ者には容赦しない。賞金稼ぎが町に来ても、銃を取り上げ、抵抗すれば立てなくなるまで叩きのめす。正義の名のもとで、暴力を楽しんでいる面も見られる。だが、ビルは暴力だけの男ではない。普段は気のいい性格で、人にも好かれる。休日には自分の家を建てているという、穏やかな面も持っている。映画では詳しく語られないが、西部の時代には、暴力で平和を収める必要があったのではないか。ビルを見るとそう感じる。マニーとビル、この2人の持つ二面性が、本作のテーマ「善人が必ずしも善人ではなく、悪い人間がそれほど悪くはない」であり、観る者に向けられたメッセージだと思われる。

ビルを演じたジーン・ハックマンは1930年生まれで、30歳すぎから俳優を志すようになる。『俺たちに明日はない』(1967年)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、37歳で注目を浴びる。1971年に『フレンチ・コネクション』で麻薬組織を壊滅しようとする刑事を演じ、アカデミー賞主演男優賞を獲得する。以降は主演、脇役を問わず幅広い作品に出演している。

物語が進むにつれて、マニーは銃を手に取り、犯罪者として恐れられていた過去の自分に戻っていく。過去を消し去ろうとしても、本当に消すことができるのか。そして、ビルは、平和を守るために、暴力をふるうという自身をさらけ出していく。この映画は観客に問う。忘れたい過去がない人間はいないのか。そして、他人から理解できない欠点を持ちながら、それでも自分のルールに沿って生きていく人間はどこにでもいるのでないか。「孤独な正義のヒーローVS悪徳保安官」という単純な構図を避けた点が、この映画の大きなポイントだと思う。観るたびに、誰が許されざる者なのかと問われる作品である。

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

この物件、なんか変 『ナイトスイム』の予告編

【最近の私】映画プロデューサー、ロジャー・コーマンが亡くなりました。数多くの映画を作り、またコッポラやスコセッシなどの監督たちに映画を撮るチャンスを与えた功績は大きいと思います。

ホラー映画で、恐ろしい何かがとりつくといえば、悪霊が家にとりつく『死霊館』(2013年)、悪魔が人間にとりつく『エクソシスト 信じる者』(2023年)などがある。今回はその中から、プールに何かがいる“訳アリ物件映画”『ナイトスイム』(2024年)の予告編を紹介したい。

予告編は、復帰を目指している元メジャーリーガーのレイ、妻のイヴ、娘イジーと息子エリオットの4人家族が、新しい家を見に行く場面から始まる。「お値打ちの物件で、早めの決断を」と勧められた物件には、庭にプールがついていた。この家を気に入った一家は、引っ越すことに。さっそくプールに飛び込む子どもたち。だがエリオットは、このプールに中に潜む何かの存在に気づく。その何かは、プールだけではなく、家の中の水にも姿を表すようになる。エリオットは確信する。「この家は変だ」。ある夜、イジーは恋人とプールでかくれんぼをする。「もういいかい」と呼びかけるイジーに、「もういいよ」と答える声が。だがその声の主は…予告編は最後に何かが水の中から飛び出してくるところで終わる。

本作の注目ポイントは、『透明人間』(2020年)、『ゲット・アウト』(2017年)など話題作、ヒット作を送り出し、今やホラー映画の信頼できるブランド(と私が呼んでる)ブラムハウス・プロダクションズと、『ソウ』(2004年)や『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)などの作品を撮っているマスター・オブ・ホラー、ジェームズ・ワン監督がタッグを組んでいる点である。ワン監督とブラムハウスは、全米ヒットを記録した『M3GAN ミーガン』2022年)に次いでのコラボレーションになる。

本作の監督はブライス・マクガイア。『ナイトスイム』は、マクガイア監督が2014年に制作した4分の短編映画を元に超変化している。ワン監督は『ソウ』を作る前、この作品の原型となる短編映像を撮影し、その短編をハリウッドに売り込んで『ソウ』を長編作品として完成。大ヒット作となったというエピソードは有名だ。『ナイトスイム』の元ネタになった短編はネットで観ることができるので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。怖いですよ。

ホラー映画の場合、インパクトのある恐怖描写を盛り込んだ短編をネットで発表⇒長編化という流れができつつあるようだ。ホラー『ライト/オフ』(2016年)はスウェーデン出身のデヴィッド・F・サンドバーグ監督が2013年に発表した短編を観たワン監督が自らプロデューサーを名乗り出て、サンドバーグ監督が長編としてメガホンを取っている。以降、サンドバーグ監督は『アナベル 死霊人形の誕生』(2017年)、DCコミックの映画化『シャザム!』2019年)などを撮っており、ハリウッドで注目の監督となっている。ワン監督の才能を見つける目の確かさもあるだろうが、ホラー短編は、新しい才能の登竜門として注目されているのかもしれない。

『ライト/オフ』は「部屋の電気を消したら恐ろしいものが出てくる」という、誰もが感じる恐怖を題材にしている。今回の『ナイトスイム』も、足の届かないプールの底に何かがいる」とこれまた身近なプールをモチーフに、得体のしれない「何か」による恐怖物語になっていると予測できる。

 『ナイトスイム』のマクガイア監督は、新たなジェームズ・ワンになることができるか。注目したいと思います。とりあえず、恐怖のプールを映画館で体験してきます!

注目した予告編

『ナイトスイム』

監督:ブライス・マクガイア

出演:ワイアット・ラッセル、ケリー・コンドン、アメリ・ホーファレ、ギャヴィン・ウォーレン

公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/night-swim

 

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

初の悪役に挑んだ話題作 イーサン・ホーク in 『ブラック・フォン』

【最近の私】米アカデミー賞で『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞しました。日本映画が世界に誇るゴジラでの受賞は嬉しいです。

 

俳優が悪役を演じると、そのキャラクターのイメージがつくことがある。そのため、悪役を演じることを避けてきた俳優がイーサン・ホークだ。今回はその彼が連続殺人鬼を演じた『ブラック・フォン』(2022年)を紹介したい。

物語の舞台は、1978年のコロラド州デンバー郊外。この町では、謎の男グラバー(イーサン・ホーク)による子どもの誘拐事件が相次いでいた。町中には、失踪した子どもたちのポスターが貼ってあるほどである。この町で暮らす少年フィニー(メイソン・テムズ)は、家では高圧的な父親におびえ、学校ではいじめグループの標的になっている。フィニーの妹グウェン(マデリーン・マックグロウ)は、今は亡き母親と同じ予知夢を見る能力があった。ただ、父親はグウェンの能力を否定し、夢の話をするグウェンを激しく叱責する。

ある日、フィニーはグラバーに誘拐されてしまう。フィニーが目覚めると、そこは見知らぬ部屋の中だった。そして、不気味なマスクをかぶったグラバーが現れる。その部屋は防音になっており、いくらフィニーが叫んでも外には聞こえない。そして部屋には、断線した黒電話が壁にかかっている。

誘拐されたと知ったフィニーは、暗い部屋の中で絶望する。その時、鳴るはずのない黒電話のベルが鳴る。受話器を取るフィニー。電話をかけてきたのは、グラバーに誘拐されて殺された子どもたちの霊だった。死んだ子どもたちは、フィニーにこの部屋からの脱出法を教えようとする。一方。グウェンは予知夢の能力を使って、失踪した兄の行方を追っていた。果たして、フィニーは誘拐犯の手から逃れることができるのか。

イーサン・ホークが悪役を演じることを避けていた理由として、『シャイニング』(1980年)のジャック・ニコルソンに、あの映画の狂気にとりつかれた役のイメージが強くついてしまったことを挙げていた。そのため、『ブラック・フォン』のオファーが来た時、監督のスコット・デリクソンに「役を引き受ける可能性は低い」と伝えたという。だが、脚本を読んで出演を決めたのだから、このグラバーが、悪役を演じることをイーサンに決断させるほど魅力的だったのだろう。あるインタビューで、「この作品は子どもたちの視点で語られており、兄妹はお互いを愛し、助け合っていく。悪がある世の中で、自分たちで自分たちの面倒を見る。僕はそこに美しいものを見る」と話していた。デリクソン監督は『フッテージ』(2012年)をイーサン主演で撮っている。あえてイーサンに殺人鬼の役をオファーしたのも、目の付けどころが素晴らしいです。

イーサン扮するグラバーは、登場する時は終始、不気味なマスクをつけている。マスクで素の表情が見えないので、話している相手の恐怖をあおる。この独特なマスクをデザインしたのは、特殊メイクアップアーティストの巨匠、トム・サヴィーニである。『ゾンビ』(1978年)や『死霊のえじき』(1985年)など、数多くの映画で特殊メイクを担当している第一人者だ。そのトムが制作に携わっているマスクだけに、見る者に強い印象を残すインパクトがある。

マスクごしの演技で、子どもたちを恐怖のどん底に落とし入れる殺人鬼を表現できたのは、イーサンの演技力によるところが大きい。マスクだけではなく、グラバーには彼の過去など、明確な説明はない。彼がどんな男なのわからないので、観客の想像に任せたのも、この映画が成功した点なのではないか。

『ブラック・フォン』で悪役を演じることに手ごたえを感じたのか、この作品の続編にも再び登場するという(2025年に米公開予定)。監督のデリクソンをはじめ、他のメインの出演者も続投する予定だ。イーサンがどのような悪役になるのか、注目して待ちたいです。

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

恐怖の夜を生き延びろ『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』の予告編

【最近の私】来月はアカデミー賞の発表ですね。『哀れなるものたち』が評判高いので注目してます。あと『ゴジラ-1.0』は視聴覚効果賞を受賞してほしいです。

映画では、閉じられた空間で物語が繰り広げられる作品がある。限定された場所で、生き残れるかを描くとサスペンスは盛り上がる。主人公が避難用の密室に逃げ込む『パニック・ルーム』(2002年)や、謎の部屋に閉じ込められた人間たちを襲う恐怖を描いた『キューブ』(1997年)などがすぐに思い浮かぶ。今回は、そんな“密室映画”になるであろう『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2023年・以下『FNAF』と略)の予告編を紹介したい。

予告編は、マイク(ジョシュ・ハッチャーソン)が、閉鎖されたピザレストランに警備員として働く場面から始まる。この店は1980年代に機械仕掛けのマスコット人形たちがいることで人気の店だったが、子どもたちが謎の失踪をとげ、今は閉店して廃墟となっている。実はマイクの弟も行方不明になり、マイクは今でもその事件に苦しんでいる。彼の両親は亡くなり、妹アビー(パイパー・ルビオ)を親代わりとして育てている。生計を立てるべく、マイクはこのレストランの夜間警備員として働くことになる。

廃墟のレストランでは、誰もいないはずの店内に異様な雰囲気が漂う。マイクの仕事は、監視室でモニターを見るだけだった。だが不信に思ったマイクは、店内を見回ることに。その時、不気味な笑い声が聞こえ、動かないはずのマスコットたちが目を覚ます。なぜ動くのか?目を怪しく光らせながら、マスコットたちはマイクたちを襲い始める。マスコットたちの目的は?80年代に起こった子どもの失踪事件との関わりは?マイクと妹は、恐怖の夜をサバイブできるのか?

『FNAF』はスコット・カーソンが開発したPC、およびスマホ用のゲームが原作だ。ゲームでは、プレイヤーは警備員が事務所にたてこもり、ライトや監視カメラを駆使してマスコットたちから生き延びようとする。私はこのゲームをしたことがないのですが、なぜ廃墟と化した店を警備するのかは、ちょっと疑問です。きっと映画では説明されていると思います。

今回の映画は、『M3GAN/ミーガン』(2022年)や『透明人間』(2020年)などのヒット作を制作し、ホラー系映画のブランドともいえるブラムハウス・プロダクションズが手がけている。『FNAF』は昨年10月にアメリカで一足早く公開され、大ヒットを記録している。本作に登場するマスコットたちは、クマのフレディー、ベースを演奏するウサギのボニー、ヒヨコのチカとカップケーキ、骨格がむき出しになっているキツネのフォクシーなど、個性的なキャラクターたちにも注目したい。このマスコットたちは、例えば、80年代ごろに遊園地やデパートの屋上にいた、動物の着ぐるみのような感じである。

人気ゲームを映画化するにあたり、ヒットするかは、このマスコットたちをどう実写化するかにかかっていたのではないか。映画に登場するマスコットたちは、CGではなく、『セサミストリート』などのキャラクターを手がけていることで有名な、ジム・ヘンソン・クリーシャーショップが担当している。中に人間が入るサイズのマスコットたちも作られたという。ゲームの開発者カーソンも撮影現場を訪れて、作品世界についてチェックし、アドバイスをしたそうだ。

決してかわいいとは言えない機械じかけの動物たちだが、動き出して人間を襲うという点では、『チャイルド・プレイ』(1988年)に登場した人形チャッキーを思い浮かべる人もいるだろう。アナログ感あふれるマスコットたちが主人公たちを襲う『FNAF』は、お化け屋敷映画として、きっと子どもから大人まで楽しめる怖い作品になっていると思います。これから、映画館に行って確かめてきます!

今回紹介した予告編:『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

監督:エマ・タミ

出演:ジョシュ・ハッチャーソン、マシュー・リラード、パイパー・ルビオ

2024年2月9日より公開

公式サイト:

https://fnaf-movie.jp/

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

地中に潜む地中の『ジョーズ』 グラボイド in 『トレマーズ』

【最近の私】エディ・マーフィ主演の『ビバリー・ヒルズ・コップ』シリーズの新作が配信されることに。約30年ぶりの続編に期待しています。

2024年になりました。今年もよろしくお願いします。

私は年末年始、動画配信やTVで80年代~90年代の映画を観て過ごしていた。今回は、その自分の視聴リストの中から、『トレマーズ』(1990年)に登場した怪物(グラボイド)を紹介したい。

物語の舞台はネヴァダ州の砂漠地帯にある小さな町パーフェクション。この町で便利屋を営んでいるバル(ケヴィン・ベーコン)とアール(フレッド・ウォード)はある日、鉄塔の上で絶命している町民を発見する。さらに2人は他にも町民や羊が死んでいるのを見つける。この小さな町で、なんでこんな事件が起こっているのか。

一方、地質調査でパーフェクションを訪れていた大学院生ロンダ(フィン・カーター)も、この町で異変が起きていると感じている。彼女がバルたちと原因を探っていると、突然、地中から10メートルを超える巨大な蛇のような怪物(グラボイド)が出現し、住民たちを襲い始めた。この怪物は肉食性で、人間や動物を捕食しているのだ。他の町に避難しようにも道がふさがれている。逃げ道を遮断された人間たちは、怪物と生死をかけたサバイバルを始める。

本作に登場する怪物、グラボイドは、巨大なツチノコのような外見で、大きな口を持ち、その口から細かいヘビのような触手が伸びてくる。この映画が公開された時のポスターを観ると、この映画は地中版“ジョーズ”だというフレーズが思い浮かんだ。“ジョーズ”とは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『JAWS/ジョーズ』(1975年)のことで、のちの動物パニック映画の先駆けとなった作品である。

『トレマーズ』が制作された時は、まだCGが映画に多用される前だったので、あえて「怪物を見せない」演出がとられている。例えば、グラボイドが地中を進む場面では、地響きと地表に土埃が吹き出すことで、怪物が猛スピードで進む様子を描写していた。低予算(だったと思われる)を逆手にとって工夫を凝らした演出がお見事でした。そういえば「見せない描写」は『ジョーズ』でも使用されていた。

さらに、グラボイドの特徴として、目が見えないという点がある。目が見えないので、音で地上の人間の動きを察知して地中を動くのだ。「音が聞こえなければ襲われない」という特徴を見抜いたバルたちは、グラボイドに音が聞こえないよう屋根の上や、大きな岩の上で音を立てないように避難するのだが、「鬼ごっこ」みたいなゲームのようでもある。岩と岩の間は、棒高跳びのように宙を舞って移動し、または小型のトラクターをおとりに使って、音を立てて怪物の注意をそっちに向かわせるなど、「一難去ってまた一難」な展開も、パニック映画でありながら、どこかユーモラスな味わいがある。映画で登場するグラボイドは4体。住民たちはダイナマイトを使って怪物を吹き飛ばそうとする。爆薬を使って退治しようとする展開も『ジョーズ』を彷彿させる。他のグラボイドたちをどう倒すのかは、観てのお楽しみである。

バルとアールを演じたケヴィン・ベーコンとフレッド・ウォードの共演も、漫才のやりとりみたいで笑いを誘う。彼ら以外のキャラクターも、個性的なメンバーがそろっている。怪物パニック映画でありながら、恐怖とユーモアの融合に成功している。のちに続編が作られてシリーズ化されたのも納得である。

おせち料理のような豪華な予算をかけた大作映画ももちろん面白いが、時にはB級(ほめてます)だけどアイディアが詰まった、肩の凝らない楽しい作品が観たい、そんな方には、『トレマーズ』をおすすめします。

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

霊、ヤバい、キモチいい 『Talk to Me/トーク・トゥ・ミー』の予告編

【最近の私】毎年年末に購入している『このミステリーがすごい!』。面白そうなミステリーを読むガイドブックになっています。

ホラー映画では、登場人物が幽霊やモンスター、怪奇現象の恐怖に苦しむことが多い。その恐怖は、呪いであったり、復讐であったりと、いろいろな形で現れる。今回は、若者たちが好奇心からある儀式を行ったことから、恐ろしい目に遭う『Talk to Me/トーク・トゥ・ミー』(2022年)の予告編を紹介したい。

予告編は、若者たちが集まり、ロウソクに火をつけて「始めよう」と盛り上がっている場面から始まる。そして、そこで登場するのは、肘から先だけの、人間の片腕だった。

「世界中をハイにさせた、危険なゲーム」とのナレーションが入る。

主人公は、2年前に母親を亡くした女子高校生ミア(ソフィー・ワイルド)。彼女は、今でも、母親の死を受け入れられない。そこで、気晴らしにミアは友人たちとSNSで流行しているゲーム、#90秒憑依チャレンジを行うことにする。そのゲームに必要なのは、呪われた手。この手は切断された人間の腕だった。ルールは、1:手を握る 2:唱える。唱える言葉は「トーク・トゥ・ミー(話したまえ)」。すると、唱えた者の体は電流にしびれたような快感に震える。その感想は「これ、超イケる」。次々に「手」を握って、その衝撃的な快感にひたる若者たち。その様子は、ドラッグにおぼれていくような感覚だろうか(経験したことはないが)。

この危険なゲームには、もうひとつのルールがあった。それは、「手」を90秒以上握ってないけないことだった。そして、ついにそのルールを破ってしまった。

「ルール」を破ると、大変なことになる映画といえば『グレムリン』(1984年)が思い浮かぶ。クリスマスに贈られた、かわいい生物ギズモに「明るい光をあてない。水をかけてはいけない。真夜中を過ぎたら、食べ物をあげてはいけない」というルールを飼い主たちが破ったことで、街中が大騒ぎになる作品だった。

予告編に戻る。90秒以上その「手」握っていると、霊がその者に憑依してしまうのだった。禁断のルールを破ってしまったミアの友人に、なんとミアの母親の霊が憑依してしまったことで、ミアたちに恐怖が襲いかかる。気軽に始めたゲームが、取返しのつかないことになる展開は、SNSにはまって、ネット情報や誹謗中傷、脅迫などさまざまな新しい恐怖につながる現代社会を映しているように思える。

監督は、今作が監督デビューとなる双子のダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウ。You Tuberとして活動をはじめた後、傑作ホラー『ババドック~暗闇の魔物~』(2014年)に撮影クルーとして参加していたので、デビュー作にホラーを選ぶのは自然だったのだろう。『Talk to Me/トーク・トゥ・ミー』のヒットで、一躍注目を浴びた双子監督の次回作は続編『Talk 2 Me』(原題)になるという。

本作は日本で12月から公開されるが、他にも『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』(2023年)、『ファミリー・ディナー』(2023年)、『サンクスギビング』(2023年)、2024年も『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2023年)など、アジアやヨーロッパ、アメリカなど、様々な国のホラー映画が次々と公開される。個人的には、このような作品にひかれる。最近のアメコミを原作とした莫大な予算をつぎ込んだ作品も面白いが、決して予算は多くないが、今まで見たことがない奇抜な世界や恐ろしい物語を観たくなるのです。

大作が次々と制作される中、ホラーやアクションの中規模な作品が少なくなっている気がする。とりあえず、憑依された霊の呪いからミアたちは逃れられるのか、映画館で確かめてきます!

注目した予告編:『Talk to Me/トーク・トゥ・ミー』

出演:ソフィー・ワイルド、ミランダ・オットー

監督:ダニー・フィリッポウ、マイケル・フィリッポウ

2023年12月22日より公開

公式サイト:

https://gaga.ne.jp/talktome/index.html

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら 

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

人々の希望を奪う残酷な刑務所長 ボブ・ガントン in 『ショーシャンクの空に』

【最近の私】

公開中の『ゴジラ-1.0』は評価がわかれているようで、早く観たいです。

映画ファンなら、折に触れて繰り返し観る作品は多いと思う。自分の場合は、『ショーシャンクの空に』(1994年)がそうだ(他にも『インファナル・アフェア』(2002年)や『大脱走』(1963年)なども)。今回は、『ショーシャンクの空に』でボブ・ガントンが扮した刑務所長を紹介したい。

物語は、銀行員のアンディ(ティム・ロビンス)が妻と愛人を殺害した罪で裁判にかけられる場面から始まる。アンディは無罪を訴えるが、終身刑の判決が下る。彼が服役するのは、ショーシャンク刑務所だ。この刑務所の所長はサミュエル(ボブ・ガントン)。彼は聖書を愛読し、厳しい規律で刑務所を管理している。だが刑務官には囚人への暴力を許しており、そのため命を落とす囚人もいる恐ろしい刑務所だ。

所長は囚人を農作業など公共事業に従事させるプログラムを始める。表向きは社会奉仕だが、業者からピンハネや賄賂を受け取ることが日常茶飯事となっている。その裏金の管理を、元銀行員のアンディに任せている。

ショーシャンク刑務所には、レッド(モーガン・フリーマン)が服役していた。レッドは長い年月を刑務所で過ごし、仮出所の申請を何度もしている。だがレッドの申請は、ことごとく却下され、生きる希望を失っている。自分は無罪といい、希望を持つアンディに、レッドは「希望は危険だ。そんなものを持っていても、裏切られて無駄になるだけだ」と話す。だが、アンディは刑務所に図書館を作りたいと何度も申し出て、予算を得て図書館を設立する。

そんななか、アンディは、とある囚人から妻と愛人を殺した犯人の手がかりを得て、所長に直談判をする。だが所長はそんな話は取り合わない。「裏金のことは誰にも言わない」と伝えるアンディ。所長は激怒し、彼を独房に入れてしまう。さらに所長は「これ以上逆らうなら、図書館をつぶす」と脅かすのだった。

所長が恐ろしいのは、囚人に対して圧倒的に強い立場を利用し、私腹を肥やしながら、囚人の人権などは無視、さらに抵抗するなら懲罰もいとわない点であろう。どんな困難に直面しても、希望を捨てないアンディと、希望を奪おうとする所長の対立関係がどうなるかが、この映画の見どころといえる。所長室には、聖書の一節の言葉「主の裁きは下る。いずれ間もなく」が額に入れて飾られている。額の裏には、裏金を管理する帳簿など、所長の悪事の証拠が隠されている。この言葉も作品のポイントとなっているが、それは観てのお楽しみである。

本作で冷酷な所長を演じたボブ・ガントンは1945年アメリカ生まれ。1960年代から舞台で俳優としてのキャリアをスタートし、80年代からは映画にも出演するようになる。『黙秘』(1995年)や『ブロークン・アロー』(1996年)などシリアスな映画からアクション映画まで、幅広く活躍しており、最近では『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)にも登場していた。他にもテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』(2007~2010年)、『救命医ハンク セレブ診療ファイル』(2010~2016年)などで、数多くの映画やドラマで脇役としてポジションを担っているといえる。たぶん名前を知らなくても、顔を観ればわかる俳優の1人ではないだろうか。

冤罪で劣悪な刑務所に入れられたアンディが、目標と希望を捨てずに生きていく姿を描いた見事な作品です。自分は、折に触れて観ると思います。未見の人には、ぜひおすすめしたい映画です。

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら 

比類なき恐怖が目覚める。『エクソシスト 信じる者』の予告編

【最近の私】あの、『悪魔の毒々モンスター』(1984年)のリブート作が完成しました。しかも出演はイライジャ・ウッドにケヴィン・ベーコン!これは観てみたいです。
 
過去の作品の続編が、長い期間を置いて作られることがある。『トップガン』(1986年)の続編『トップガン マーヴェリック』(2022年)が36年ぶりに制作されて大ヒットを記録したのは記憶に新しい。今回は、『エクソシスト』(1973年)の約50年ぶりの続編となる『エクソシスト 信じる者』(2023年)の予告編を紹介したい。
 
予告編は、ある女性、クリス(エレン・バースティン)が部屋に入る場面から始まる。その部屋のベッドの上には、1人の白人の少女キャサリンが座っていた。少女の表情は、明らかに何かが違う。その少女に女性に言う。「前に会ったわね」と。すると、少女は高らかに笑い出す。部屋の中に異様な空気が流れ、少女は叫ぶ。「娘は地獄へ堕ちた」。少女に何かが乗り移り、その取りつかれた「娘」はもうこの世には存在しない。つまり少女は死んでしまったのか。さらに少女はベッドの上で苦しそうに暴れだす。
 
画面は変わり、もう1人の別の黒人の少女アンジェラにも異変が起きだす。アンジェラの父親は言う、「何かが起きている」と。すると、別の女性が「私の娘もよ」と答える。この女性は、最初に登場したキャサリンの母親なのか。2人の少女に何が起きているのか。本作のオリジナルとなる『エクソシスト』は、少女に取りついた悪霊と、牧師の死闘を描いたホラー映画である。当時大ヒットとなり、この作品以降、数多くの『エクソシスト』フォロワー映画が作られることになる。本家の『エクソシスト』も『エクソスト2』(1977年)、『エクソシスト3』(1990年)と続編が制作された。今回の『信じる者』は、第1作目の直接の続編となる。ということは、第2作目と3作目はなかったことになるのか。ポイントは、『エクソシスト』第1作目に登場したクリスが再び出ている点だろう。第1作目で、悪霊に取りつかれた少女は、クリスの娘だった。その過去があるから、クリスは本作でも悪霊に憑依された2人の少女を救うために、再び悪との戦いに挑む。
 
もう1つのポイントは、監督デヴィッド・ゴードン・グリーンである。グリーンは1978年に制作されたホラー映画『ハロウィン』の続編として、『ハロウィン』(2018年)を監督する。『ハロウィン』も第1作目以降、数々の続編が制作されたが、あえて1作目の直接的な続編を監督し、さらに1作目で主演していたジェイミー・リー・カーティスを40年ぶりの続編に再登板させている。ゴードン版『ハロウィン』はヒットし、新シリーズとして『ハロウィンKILLS』(2021年)、『ハロウィンTHE END』(2022年)と3部作になった。70年代のホラー『ハロウィン』を新たにシリーズとしてよみがえらせたゴードン監督。次に手がける70年代ホラー『エクソスト』続編だが、こちらにも第1作目に登場した俳優を再登場させている点からも、『ハロウィン』と似た構造になっている。ちなみに、新『エクソシスト』も、3部作となる予定である。
 
予告編に戻る。2人の少女の両親は、彼女たちを救おうとする。だが悪霊は、さらにその力を強めていく。第1作目では1人の少女が取りつかれていたが、続編では2人となって恐怖も2倍になっている(と思われる)。悪魔が選んだのは、2人の少女。そのうち1人は生き残り、1人は死ぬ。果たしてどちらの少女が生き残るのか。
 
『信じる者』の続編のタイトルは『The Exorcist:Deceiver』(原題)で、2025年にアメリカで公開予定だ。Deceiverは「欺く者」という意味だが、誰が誰を欺くのか、意味深なタイトルである。ホラーの古典ともいえる『エクソシスト』の続編が約半世紀ぶりに、どのように生まれ変わったのか。そして第1作目で観客に与えたあの恐怖はよみがえるのか、映画館で確認してきます!
 
今回注目した予告編:『エクソシスト 信じる者』
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:エレン・バースティン、リディア・ジュエット、オリヴィア・マーカム
2023年12月1日より公開
公式サイト:https://exorcist-believer.jp/
 

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら 

 

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ

スタントマンは耐死仕様の殺人ドライバー! カート・ラッセルin『デス・プルーフ in グラインドハウス』

【最近の私】Netflixで配信のノルウェー製ドラマ『ミステリーバス』が北欧版『世にも奇妙な物語』みたいで面白かったです。

 
俳優が似たような役を演じていると、観客から「また同じ役か」というイメージを持たれやすい。だから、俳優は普段と違った、変化球ともいえるキャラクターを演じたりする。今回は、カート・ラッセルが『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2007年)で扮した殺人ドライバーを紹介したい。

 

『デス・プルーフ』の舞台は、テキサス。あるバーに女性グループが久々に集い、飲みながら恋愛話やいろいろな話題で盛り上がっていた。そんな彼女たちを、見つめている男がいた。この男は、スタントマン・マイク(カート・ラッセル)。自身の車のボンネットに骸骨のマークをペイントしている。数々の映画でスタントマンを務めてきたマイクは、自分がこれまで出演した作品について女性たちに語る。だが若い女性たちに「そんな映画知らな~い」と言われ、ムッとするマイク。おじさんが若い女性に自慢話をしたらフラれるような、笑える場面です。こんな感じで、映画の前半はガールズトークと、スタントマンおじさんの話が延々と続きます。だが、マイクは実は殺人鬼。バーで犠牲者となる若い女の子を探していたのだった。ここから映画は一気にシフトチェンジし、ホラー映画へと雰囲気が変わっていく。

 

マイクの愛車は、耐死仕様(デス・プルーフ)となっていて、スタントマンが車を運転して危険なアクション場面に挑む時に使うような特別車である。酔った勢いでバーを出る女性たち。マイクは愛車に乗り、暗闇で女性たちを待ち伏せていた。車を走らせながら話に夢中になっているガールズだち。そこに、反対方向からフルスピードでマイクが突っ込んでくる!女性たちは壮絶な最期を迎える。マイクも重症を負ったが、デス・プルーフ車のおかげで死は免れた。

 

ホラー映画では、殺人鬼がナイフやチェーンソーを持って殺人を繰り返す。だが本作でマイクが使うのは、特別仕様の車である。凶器を自動車にしたのが、この映画のユニークな点である。デビッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(1996年)で、自動車事故に性的興奮を覚える人物が登場していた。マイクも自身が傷ついても殺人を犯すという、変質的な面が垣間見られる。

 

カート・ラッセルは1951年マサチューセッツ州生まれ。10代から子役として映画に出演する。『ニューヨーク1997』(1981年)や『遊星からの物体X』(1982年)などのジョン・カーペンター監督作に出演。『バックドラフト』(1991年)では消防士、『デッドフォール』(1989年)では刑事など、タフな役が多い。

 

『デス・プルーフ』のクエンティン・タランティーノ監督が”物体X”“ニューヨーク”のファンで、彼を起用したという。のちの『ヘイトフル・エイト』(2015年)でも、タランティーノ監督はカートを再び起用している。カートはそれまで悪役(しかも殺人犯)を演じたことはないので、そんな意外なキャラクターを演じさせるのも、映画狂のタランティーノらしいチョイスといえる。

 

テキサスでの殺人から14カ月後、舞台はテネシー州に移る。この土地に、映画業界で働く4く人の女性たちが集まり、休暇を過ごそうとしていた。そして、ここにもマイクの姿があった。後半では、女性4人組とマイクの死闘となるが、そこからさらに意外な展開になる。その内容はここでは言えないので、未見の方はぜひ観てほしいです。

 

—————————————————————————————–
Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
—————————————————————————————–

戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

バックナンバーはこちら
 

◆【次期開講は2024年10月】
英日・日英映像翻訳にご興味をお持ちの方は「リモート・オープンスクール」へ!
入学をご検討中の方を対象に、リモートでカリキュラムや入学手続きをご説明します。
※詳細・お申し込みはこちら

◆割引キャンペーン実施中!
2024年10月からの留学生対象

興味を持ったら「リモート留学相談会」へ