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こんな事件、今まで見たことがない ジョン・ドウ in 『セブン』

こんな事件、今まで見たことがない ジョン・ドウ in 『セブン』
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関東も先週梅雨入りし、その直後から大雨を記録した。どしゃ降りの雨の中を歩いていると、映画『セブン』を思い出す。このサスペンス映画は、物語のほとんどが降りしきる雨の街で展開しているからだ。今回は『セブン』に登場した犯人を紹介したい。

 
『セブン』は、引退間際のベテラン刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と、新人刑事ミルズ(ブラッド・ピット)が、猟奇的な連続殺人事件を捜査する映画だ。刑事コンビが殺人事件を追う。これだけ聞くと、よくある話だ。しかし、この物語を「見たことのない新しい映画」へと変貌させていくのが、この事件の犯人である。

 
この作品はオープニングタイトルから、観客を作品の世界に引き込んでいく。オープニングで、いきなり犯人らしき人物の手が登場。ノートに写真を貼り、びっしりと文字を書き込む。自分が行う犯罪の準備をしているようだ。そしてノイズのような不快な音楽。これから何が起こるのかと観る者を、不安にさせる。

 
事件は、ダンテの叙事詩『神曲』に書かれた「七つの大罪」がモチーフになっている。「七つの大罪」とは、「暴食」「強欲」「怠惰」「肉欲」「高慢」「憤怒」「嫉妬」という人間の欲。最初の事件は、「暴食」で、犠牲者は肥満の男。次の「強欲」で犠牲者となったのは、弁護士だ。食べ過ぎで肥満の男=暴食、金で悪党を無罪にする弁護士=強欲。犯人はこうして、一つひとつの殺人を「七つの大罪」になぞらえていく。

 
雨が降りやまないように、次々と残酷な犯罪が続き、観ている方も暗い気持ちになってくる。やがて犯人が現場に残したある証拠から、サマセット刑事はこの事件が「七つの大罪」に関係していると気づく。サマセットは文学に造詣が深いので、「七つの大罪」だと分かったが、もし警察で誰も気づかなかったら、犯人のしたことは意味不明になるじゃないかとツッコミを入れたくなる。

 
2人は捜査の末、1人の男にたどり着く。その男の名前はジョン・ドウ(John Doe)。ジョン・ドウというのは、身元不明の男性の死体に、警察が実際につける名前だ(女性の場合はジェーン・ドウ/ Jane Doe)。この名前はもちろん偽名だろう。ジョン・ドウは名前を変えているだけでなく、自分の指紋を削り取り、身元を調べられないようにしている。自分を証明するものを徹底的に消して身元不明の人物、すなわちジョン・ドウになろうという執念は恐ろしい。作中でもサマセット刑事が「こんな事件は、今まで見たことがない」と言うほどだ。

 
公開時、ジョン・ドウを誰が演じるかは秘密になっていた。オープニングタイトルにも、その俳優の名前は出てこない。このコラムを読む人の中にも、まだ映画を観ていない人がいるかもしれないので、ここでは誰が犯人を演じているかは明かさない。終盤、ジョン・ドウがある行動を起こしたことから、物語は誰もが予想できない方向に進んでいく。ネタばれになるので詳しくは書けないが、映画は観客の心にトラウマになるような傷を残して終わる。『セブン』の暗澹たる世界感を表す要素として、ジョン・ドウの存在は大きい。

 
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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】ハリウッド版『ゴジラ』がアメリカでヒットしているようです。どんなゴジラになっているのか、7月の公開が楽しみです。
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