News
NEWS
明けの明星が輝く空にinCO

明けの明星が輝く空に 第115回:特撮俳優列伝21 高島忠夫

明けの明星が輝く空に 第115回:特撮俳優列伝21 高島忠夫
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

【最近の私】『シン・ウルトラマン』の2021年公開が発表された。今の時代に、どれだけリアリティのある作品になるか心配だが、『シン・ゴジラ』の庵野秀明・樋口慎司コンビが製作するという。果たして、どんな作品になるか・・・。

 
僕の世代にとって、高島忠夫さんは『ゴールデン洋画劇場』での映画解説や、『クイズ・ドレミファドン!』での司会でおなじみの人だった。特に『クイズ~』では、頻繁に「イエーイ」を連発していたのが、当時かなり話題になっていたことを思い出す。

 
高島さんが特撮映画に出演していたことを、今回の訃報で初めて知った、という方も少なくないだろう。出演作品は、『キングコング対ゴジラ』(1962年)、『海底軍艦』(1963年)、『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年)、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)、そして『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)の5本。特別出演だった『ゴジラVSメカゴジラ』を除き、いずれも物語において主要な人物を演じている。

 
『キングコング対ゴジラ』は、それまでのゴジラシリーズとは打って変わり、“恐さ”よりも“楽しさ”を追求する娯楽大作であったが、高島さんの持つ天性の明るさは、そんな映画にピッタリだった。役どころは桜井というテレビ局員で、視聴率アップを求めるスポンサーの指示に従い、同僚とともに南海の孤島の「巨大なる魔神(キングコング)」を調査しに出かける。ちょっと頼りない同僚との掛け合いはテンポが良く、観てい4て楽しい。さらに、スポンサー会社のコミカルな宣伝部長が二人に絡み、観る者を飽きさせない。この映画の一番の“売り”は、もちろんゴジラとキングコングの対決だが、むしろ作品の色合いを決めているのは、高島さんたちだった気がする。ちなみに、同僚を演じたのは、故藤木悠氏だ。テレビドラマ『Gメン’75』での刑事役で覚えている人もいると思うが、僕はその前に同じ枠で放送されていた『アイフル大作戦』や『バーディー大作戦』での、丹波哲郎氏とのコンビで披露したコミカルな演技が忘れられない。

 
高島さんと藤木さんの掛け合いは、『海底軍艦』にもある。ただ、こちらは作品の雰囲気がシリアスだった分、そういったシーンは少なめで、前作にはなかった高島さんの(珍しく?)キリリと締まった表情が印象的だ。さらに続く『フランケンシュタイン対地底怪獣』では、コミカルな要素の全くない役柄での出演となった。演じたのは、ある医学研究所に勤務する川内という博士で、基本的に善人であるが、非情な一面も合わせ持つ人物だ。ドイツのテクノロジーが生んだ“フランケンシュタイン”は、手足を切り落としても再生すると聞かされ、研究所で偶然保護していた“怪人”が“フランケンシュタイン”かどうか、確かめようとするのだ。“怪人”は人に危害を加えたりはしなかったので、同僚の博士には反対されるが、「人造人間は人間じゃない」とまで言い切ってしまう。単に科学的探究心が感情を上回ってしまうタイプなのだが、観客に嫌われても仕方がないような男だ。しかし、実際はそれほどの悪人に見えなかったのは、高島さんの持っている“人の良さ”がにじみ出ているからだろう。祖父は神戸の大地主で、父親は定職に就かずとも生活できる家庭だったというが、もしかしたらそんな育ちの良さも関係しているかもしれない。

 
『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』は、 いまで言う“キモカワイイ”ゴジラの息子、ミニラ初登場の作品だ。だだをこねるミニラを、ゴジラが厳しく教育するなど、ユーモラスなシーンが多く、ゴジラ映画のターゲットがより低年齢化したことがうかがえる一本だが、そんな作風とは逆に、高島さんの演じた役は前作同様シリアスな人物だった。それどころか、いくらか憂いを含んだような表情を浮かべて物静かにしゃべる姿は、テレビで僕が観ていた高島さんとは別人のようである。演じたのは、あるプロジェクトを推し進める研究チームのリーダー。メイクで白髪混じりの頭にしているところからすると、それまでの作品より年齢設定が高いようだが、どこか“枯れた”味わいすら感じさせる演技だった。

 
高島さんが出演した最後の特撮映画『ゴジラVSメカゴジラ』は、息子である政宏氏が主演を務めた作品だ。二人は、短いシーンではあるが、親子共演を果たした。政宏氏演じる青木という人物が、ゴジラ対策チームの隊員だと自己紹介すると、「なんだか、頼りなさそうだねぇ」と言い捨てる。高島さんの演技が自然体だったこともあり、僕には劇中の人物の言葉というよりも、まだキャリアの浅い息子に対する父親としての言葉に聞こえたのだが、あとになって「あの台詞はアドリブだった」という記事を見つけた。やはり、そこには何かしらの思いがあったのではないだろうか。

 
以上、特撮作品における高島さんの演技をざっと振り返ってみたが、個人的に一番のハマリ役だと思うのは『キングコング対ゴジラ』の桜井だ。やっぱり高島さんには、明るいキャラクターが似合う。天国で藤木悠さんと再会し、愉快な掛け合いに興じている。そんな姿を想像したら、なんだかホッとした気分になった。

 
—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
—————————————————————————————–

 

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 

※田近さんのコラムでは、「特撮俳優列伝」として往年のスターたちを紹介。
現在公開中『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のエンドロールに登場した初代スーツアクターの中島春雄さんや、仮面ライダー』の死神博士でお馴染みの天本英世さんら20人以上の魅力を解説しています。バックナンバーはこちら

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page