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明けの明星が輝く空に 第74回 帰って来たスタンプラリー

明けの明星が輝く空に 第74回 帰って来たスタンプラリー
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【最近の私】東京マラソン当日、僕は姫路城マラソンを走ってました。青空に浮かぶ天守閣を仰ぎ見ながらのゴールは最高。いろんな意味でランナーフレンドリーな大会でした。
 

今年も東京都内のJR線各駅で、ウルトラファンが走り回った。1年前、僕らを夢中にさせた期間限定イベント、「JR東日本 来たぞ我らの!
ウルトラマンスタンプラリー」(こちらを参照)が、「JR東日本 帰って来たぞ!我らのウルトラマンスタンプラリー」となって戻って来たのだ!。
 

参加駅は、去年から一つ増えて65。スタンプに使用されるキャラクターは、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰って来たウルトラマン』『ウルトラマンA(エース)』『ウルトラマンタロウ』の5作品から選ばれたウルトラ戦士、怪獣、星人、そしてメカだ。その中から各駅が扱いたいキャラクターの希望を出し、抽選によってキャラクターが振り分けられたそうだ。
 

駅とキャラクターの組み合わせの中には、思わず「うむ!」と膝を打ちたくなるものがあった。例えば、千駄ヶ谷駅と怪獣アボラス。アボラスがウルトラマンと戦った場所といえば?そう、千駄ヶ谷駅のそばにあった国立競技場だ。残念なことに、劇中で破壊された国立競技場は現実世界でも東京五輪のために取り壊され、今はただの空き地になってしまった。もう、スポーツ観戦しながら、「アボラスが今、スタンドの陰からぬうっと顔を出したら…」なんていう、楽しい夢想もできない。ウルトラファンにとって、大きな損失である。
 

目白駅とプロテ星人(『ウルトラセブン』)も、ファン納得の組み合わせだ。プロテ星人が登場したエピソードは、目白の学習院大キャンパスがロケ地に使われたからだ。ユニークな形で印象的だったのが、劇中にも登場したピラミッド校舎。プロテ星人に突き倒されたセブンにのしかかられて破壊されたことで、価値がより高まった(個人の意見です)この建物も、すでに取り壊されている。だから、夜のキャンパスを歩きながら、いつプロテ星人が出てくるか想像してドキドキしたくても、もうできないのだ。
 

ウルトラゆかりの建物が、こうして少しずつ消えていく…。アボラスとプロテ星人は、そのことに対して警鐘を鳴らすために、スタンプとなっていま僕らの前に再び現れたのかもしれない。いや、そうに違いない。そうとしか考えられない!
 

駅の中には、独自のキャラクターを持っていて、それにちなんだキャラクターが選ばれたケースもあった。例えば飯田橋には、「いいだべい」というクジラのキャラがいるのだが、スタンプの怪獣はガマクジラ(『ウルトラマン』)だ。また日暮里駅の場合、「にゃっぽり」というネコのキャラがいるので、ねこ舌怪獣グロスト(『ウルトラマンタロウ』)が選ばれた。怪獣がネコ舌などという脱力感は、シリーズの中でも『ウルトラマンタロウ』ならではのものだが、にゃっぽりというキャラのユルさと見事にマッチしている。
 

ダジャレでキャラクターが選ばれたとおぼしきケースは、今年もいくつかあった。まず、神田駅のダンガー(『帰って来たウルトラマン』)だ。去年はガンダー(『ウルトラセブン』)だったから、ダジャレ路線を貫いている。うーん、やるじゃない、神田駅! こうなると来年は、やっぱりダンカン(『ウルトラセブン』)かな。それから亀有駅は、去年がガメロン(『ウルトラQ』)で、今年はクイントータス、キングトータス、ミニトータス(『ウルトラマンタロウ』)の大亀怪獣一家。じゃあ来年はガメラねって、ちょっと待った! ガメラは大映さんで、ウルトラシリーズじゃない。来年はどうする、亀有駅?
 

この神田駅と亀有駅のダジャレ路線の他にも、独自の路線設定が浮かび上がってきたケースがある。それは、田端、高円寺、そして四ツ谷の3駅だ。まず田端駅は、去年が悪魔っ子リリー(『ウルトラQ』)で、今年は異次元人 女ヤプール(『ウルトラマンA』)。これはホラー路線だろう。能面をかぶった女ヤプールの写真は、まるで幽霊のようで怖かったと、ネット上でも評判だ。あろうことか僕は、そんな女ヤプールのスタンプを、間違えた場所に押してしまった。それもよりによって、天敵ウルトラマンAのスペースに! 怒った女ヤプールが、いつ目の前に現われるかと、僕は気が気ではない毎日を送っている。
 

高円寺駅の場合は、去年がニセ・ウルトラセブンで、今年はエースロボット。つまり、ニセモノ路線だ。ということで、来年はにせウルトラマン…では安直すぎる。ちょっとひねって、にせウルトラマンの正体であるザラブ星人でどうだろか?そういった意味では、四ツ谷駅のひねり具合が面白い。ここは去年がセミ人間(『ウルトラQ』)で、今年はバルタン星人(『ウルトラマン』)だった。なぜ面白いかというと、バルタン星人の着ぐるみは、セミ人間のものを改造して作られたからだ。いわば、着ぐるみ使い回し路線!意表を突く見事な着眼点だ。こんな遊び心を持つ四ツ谷駅の駅員さんたちに対して、世のウルトラファンは一目置くべきではないだろうか。
 

最後に遊び心つながりで、駒込駅のトイレで見かけたポスターについて触れておこう。駒込駅のスタンプは、ウルトラ警備隊の主力戦闘機ウルトラホーク1号(『ウルトラセブン』)だったのだが、そのポスターには「駒込駅上空にウルトラホーク1号」、「マッハ4の衝撃」、「前代未聞」、「駅員騒然」という文字が躍っていた。駅員騒然?ということは、この駅はどこかの星人の侵略基地か何かなのか?早く脱出せねば!などと想像力をかきたてられた。ちなみに、女子トイレにも同じポスターがあったのかどうか、当然のことながら確認できなかったのであります!
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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