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明けの明星が輝く空に 第93回 『エイリアン:コヴェナント』を観て:日本の特撮にも戦う女性主人公を!

明けの明星が輝く空に 第93回 『エイリアン:コヴェナント』を観て:日本の特撮にも戦う女性主人公を!
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『エイリアン:コヴェナント』(以下『コヴェナント』)は、知的好奇心をくすぐられる映画だ。「コヴェナント」という言葉が、神との契約を意味していることから分かるように、この映画は西洋の宗教的世界観を土台にしており、本当の意味で理解するには聖書等の知識が求められる。

 
残念ながら、「ただの特撮ファン」に過ぎない僕には、その世界を論じるだけの見識がない。ならば、カッコつけずに、日本の特撮作品の土俵に引っ張り上げ、思いついたままを語ろう。

 
僕が注目したのは、『コヴェナント』の主人公が女性だということ。これでエイリアン・シリーズは、1作目『エイリアン』のリプリーから6作目『コヴェナント』のジャネット・ダニエルズまで、全て女性登場人物が主人公として、襲い来る恐怖と戦ったことになる。

 
最近、バイオハザード・シリーズや、8月に公開された『ワンダーウーマン』のように、スーパーヒロインが活躍する映画をよく目にするようになった。また『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のレイや、『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のジン・アーソは、それまでルークとアナキンという男性主人公の物語だったシリーズに、新しい風を吹き込んでいる。

 
一方、我らが日本の特撮作品はどうか。戦うヒロインが主人公という作品は、非常に少ない。かろうじて思い出されるのが、『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000年)と、『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)だ。それぞれ、辻森桐子(田中美里)と家城茜(釈由美子)という女性兵士が物語の中心となっていた。ただ残念なことに、両者とも、リプリーやダニエルズが極限状況に置かれた時のような緊張感に欠けている。桐子は海を泳ぐゴジラの背中に乗り、茜はメカゴジラを操縦してゴジラに真っ向勝負を挑んだ。それなのに(それだから?)、緊張感やリアリティーが感じられないのだ。

 
もちろん、その一因は彼女たちの演技力にあるが、それが全てだとする見方はフェアではない。というのも、例えば『エイリアン』と『ゴジラ×メカゴジラ』を比べて、緊迫感という点でどちらの作品が上かと問われれば、答えるまでもないほど明らかだからだ。

 
しかし、R15+指定の『コヴェナント』と、子供から大人までをターゲットにしたゴジラシリーズを比較すること自体、無理なところがある。特に『ゴジラ×メカゴジラ』がアニメ『とっとこハム太郎』の劇場版と同時上映だったことを考えれば、『コヴェナント』のような緊迫感がなくてもまったく不思議ではない。

 
日本の特撮は、基本的に子供をターゲットにした作品として発展してきた。ならば、それなりの方向性で、戦う女性主人公を登場させればいい。手始めとしては、必ずヒロインがメンバーの中に含まれる、スーパー戦隊シリーズがいいだろう。このシリーズは、個人ではなく戦隊自体が主人公なのだが、センターポジションを任されるキャラクターが必ず一人いる。赤色のヒーロー「レッド」だ。それを女性キャラクターに任せてはどうか。実は、すでにレッドのヒロインは誕生しているが(シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』に登場した「姫シンケンレッド」)、彼女は番組終盤の数話のみに登場し、暫定的にセンターポジションに立っただけである。真の意味でチームの中心は、男性キャラクターのシンケンレッドだった。

 
制作サイドから見て、単体のヒーローであるウルトラマンや仮面ライダーを女性にすることは、一種の冒険なのかもしれない。その点、男女混合の複数メンバーで構成される戦隊ものは、ハードルが低いのではないだろうか。もともと戦隊ものに女性メンバーを入れたのは、子供たちが「ヒーローごっこ」をする際、女の子が仲間はずれにされたり、悪役をやらされたりしたのを、制作者が目にしたことがきっかけだという。そんな優しい思いが込められたスーパー戦隊シリーズだ。女性のレッドを登場させ、番組のセンターポジションを任せてもらえないだろうか。

 
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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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