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ハイウェイの幽霊か? ルトガー・ハウアー in 『ヒッチャー』

ハイウェイの幽霊か? ルトガー・ハウアー in 『ヒッチャー』
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【最近の私】今回紹介したルトガー・ハウアーが出演している『ブレードランナー』が、9月にIMAXで限定公開されることに。大画面で観るチャンスなので、行ってきます。

 
7月19日にルトガー・ハウアーが亡くなった。75歳だった。彼は数多くの作品に出演し、本コラムでも以前、『ブレードランナー』(1982年)でハウアーが扮した悪役について書いたこともある。彼のフィルモグラフィから、今回は『ヒッチャー』(1985年)でハウアーが演じた悪役を紹介したい。

 
物語は土砂降りの雨の中、テキサス州の道路を青年ジム(C・トーマス・ハウエル)が車を走らせている場面から始まる。ジムは、ヒッチハイクをしている男、ジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)を乗せる。だが、乗るなりライダーはナイフを突出し、ジムに「死にたいと言え」と脅す。すきを見てライダーを車から突き落としたジムは「助かった」と安心する。だが翌日、ジムの車を追い越したワゴン車の後部座席に、あのライダーの姿が。ジムはそのワゴン車を追いかけるが、見つけたその車に乗っていた人たちはすでに殺されていた。そして、ライダーに追われるジムの悪夢が始まる…。

 
本作の魅力は、何といってもライダーにある。ライダーがジムを追う理由がまったく説明されない。そもそも、ライダー(乗る人)という名前も偽名っぽい。ライダーはジムを追いながら、ガソリンスタンドを破壊し、警察のヘリコプターも爆破する。警官も躊躇なく殺し、パトカーも破壊する。スピルバーグ監督の『激突!』(1971年)も、トラックに追われる主人公の恐怖を描いた作品だったが、今回の主人公も、理由なき追跡に巻き込まれるサスペンスだといっていい。

 
主人公のジムを演じたC・トーマス・ハウエルは『E.T.』(1982年)、『アウトサイダー』(1983年)で人気を博した俳優だが、ハウアーに食われてしまっている感は強い。でも、もしライダーを演じたのが他の俳優だったら、これほど印象に残る作品になっていたかはわからない。

 
それにしても、ライダーは何者なのだろうか。今回、久しぶりに『ヒッチャー』を観直して、個人的には、ライダーは幽霊なのではと思っている。もしくは、恐怖の象徴として描かれているのでは。まず映画の冒頭で、雨の道路に1人で立つ男を車に乗せるか。いや、普通は乗せないでしょう。その後、ジムはライダーの起こした殺人の容疑をかけられ、保安官に逮捕される。ジムは留置所に拘留されるが、目が覚めると、留置所の鍵が開いている。事務所に行くと、保安官が全員殺されている。犯人はライダーだ。こんなに手の込んだことをするだろうか。では、なぜライダーは恐怖の象徴なのか。青年ジムにとって、大人になるための、恐怖の通過儀礼なのではと思う。大人になると、不合理な目に遭うこともある。その恐怖について、ジムに教えるためにライダーは登場したのでは。これはジムの見た夢なのだろうか。それはわからない。でも作品の内容や解釈について、いろいろと思いを巡らせるのも、『ヒッチャー』の面白さなのではないか。

 
もうハウアーの新しい作品が観られないのは残念だが、彼がこれまでに出演した映画は残っている。その作品群を観て、ハウアーを偲びたいと思います。

 

【関連記事】雨の中の涙のように…。ルトガー・ハウアーin『ブレードランナー』は▶こちら

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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

 
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