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やさしいHAWAI’I 第59回 火の女神ペレの嫉妬

やさしいHAWAI’I 第59回 火の女神ペレの嫉妬
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【最近の私】右ひざを痛めてすでに3カ月。ようやく歩くには不自由なくなってきた。1カ月ほど前からほぼ毎日プールでウォーキングをしているが、少し飽きてクロールを始めた。この10年ほどプールから遠ざかっていたが、体が覚えていることは忘れないものだ。
 

昔からハワイ島のキラウエア火山には火の女神ペレが棲むと語られてきた。ペレは時折怒りを爆発させ火山を噴火させる。噴火で流れ出た溶岩は、触れるものすべてを焼き尽くして海を目指す。そんな火の女神ペレは、ハワイの人々の心にいまだにリアルに生きている。今回はそんなペレのお話。
 

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今ハワイ島では、キラウエア火山が活発な活動を続けている。大量の溶岩が島の南東部カモクナに向かって流出する“オーシャンエントリー”と呼ばれる現象を起こしているのだ。3000度もある熱い火の塊が海に流れ込む時、海は激しく沸騰し、溶岩は細かい火の塊となって飛び散る。その様子は実にすさまじいもので、地球の誕生を思わせる。オーシャンエントリーが始まったというニュースはアメリカ本土にも伝わり、この劇的な自然現象を見るためにオアフ島をはじめとした州内のみならず、はるばるアメリカ本土からも大勢の観光客が集まり、今ハワイ島は大賑わいとなっている。以下はその様子を撮影した動画だ。
 

https://www.facebook.com/Epiclavatours/videos/510090125840922/
 

ペレは嫉妬深く激しい気性を持つ、独占欲の強い女神だ。時には若く美しい女性、またある時は白髪の老婆に姿を変え、人々を迷わせ苦しませる。ハワイには、そんなペレにまつわる神話が数多くある。中でも最も良く知られているのが、オヒアレフアの話だ。
 

オヒアレフアは、ハワイ諸島、主にビッグアイランドと呼ばれるハワイ島に自生する灌木の名前。苔むしたようなザラザラとした木肌の幹はオヒアと呼ばれ、そこに咲くねむの花に似た赤い(黄色もある)房をつけた美しい花がレフアと呼ばれる。なぜ木の幹と花に別々の名前が付けられているのか?
 

オヒアの木に咲くレフアの花

オヒアの木に咲くレフアの花


昔ハワイにとても素敵なオヒアという青年がいた。オヒアを一目見て大変気に入ったペレは、自分の恋人になるよう彼に迫る。しかしオヒアにはレフアという大切な女性がいた。いくら迫っても言うことを聞かないオヒアに腹を立てたペレは、ついにオヒアを醜い一本の木に変えてしまった。それを知ったレフアは悲しみのあまり毎日涙に暮れる。ペレの兄弟たちはレフアの哀れな姿に心を痛め、いつも2人が一緒にいられるように彼女をオヒアに咲く花に変えた。だから、ハワイでは「オヒアの木に咲くレフアの花をつんではならない。せっかく一緒になれたレフアをオヒアから離すと、必ずレフアの涙の雨が降る」と言われている。
 

ペレの嫉妬深さを表す話は他にもたくさんある。
 

ハワイにはナウパカという白い可憐な花が咲いている。不思議なことに5片ある花弁は花の半分にしかついていない。このナウパカの花は山と海辺の両方に咲いていて、それぞれマウンテンナウパカ、ビーチナウパカと呼ばれている。ペレの性格を考えれば、みなさんも想像がつくだろう。
 

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ある日ペレはハンサムな青年に一目ぼれするが、彼には深く愛する女性がいて、ペレの思うようにならない。ペレから激しい溶岩の攻撃を浴びせられた二人は、別々に海と山へと逃げお互いに会うことができなくなってしまった。その後、ペレに引き裂かれた二人の気持ちを表すように、遠く離れた山と海辺にそれぞれ、半分だけの花、ナウパカが咲くようになる。いつか巡り合って丸い1つの花になることを願って…。
 

何ということだろう。そこまでしてペレは想う男を手に入れたいのだろうか。しかし周囲を見回すと、ペレに似たような人間はこの世の中にもいそうな気がする。女神と呼ばれるペレは、実は生々しく現実的な存在なのだ。
 

そして最後に、ペレ神話の決定版『Pele and Hiiaka』を紹介しよう。
 

ペレはもともと、カヒキ(タヒチか?ハワイ語にはTの発音はないので、TahitiがKahikiになったのではと言われている)と呼ばれる島に棲んでいた。しかし、幼少のころからあまりに激しい気性と火を強く好むことから家族からうとまれ、ついにはカヒキを追い出されてしまう。ペレはその時まだ卵だった妹のヒイアカを大切に抱えて、ハワイ諸島へたどり着く。ペレは火とともに棲家を見つけるために島々を転々と渡り歩くのだが、ハワイの火山のほとんどはすでに活動を止めてしまっていた。そんな彼女が最後に落ち着いたのがキラウエアの火口。
 

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やがて卵から孵った妹のヒイアカは優しく美しい女性に成長する。たとえ姉と妹であっても、ハンサムな男性の登場で、二人は激しい戦いを展開することになるのだ。この壮大な物語のすべてをここで語ると長い長い話になってしまうので、いつか改めてご紹介させていただきたい。
 

たとえ相手が妹であろうとも、激しい嫉妬と憎悪を燃やすペレ。となれば火山を噴火させることなどお手の物だ。現在もまたキラウエアを激しく噴火させているペレは、今度は一体誰に嫉妬し、怒りを爆発させているのか。また新たな神話が作られるのを待つことにしよう。
 

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Written by 扇原篤子(おぎはら・あつこ)
1973年から夫の仕事の都合でハワイに転勤。現地で暮らすうちにある一家と家族のような付き合いが始まる。帰国後もその 一家との交流は続いており、ハワイの文化、歴史、言葉の美しさ、踊り、空気感に至るまで、ハワイに対する考察を日々深めている。
 
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やさしいHAWAI’I
70年代前半、夫の転勤でハワイへ。現地での生活を中心に“第二の故郷”を語りつくす。

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