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【SSFF &ASIA 2023 受賞作品発表】短い尺、少ないセリフだからこそ丁寧に翻訳する

【SSFF &ASIA 2023 受賞作品発表】短い尺、少ないセリフだからこそ丁寧に翻訳する
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6月26日(月)、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2023(SSFF & ASIA 2023)」のアワードセレモニーが開催され、最高賞である「ジョージ・ルーカスアワード」が発表された。


2023年のジョージ・ルーカスアワードは、ポーランド在住の日本人監督である吉田和泉監督のアニメーション映画『希望のかけ橋』が受賞した。ライブアクション部門のインターナショナル優秀賞は、スペインのマニュエル・オモンテ監督による『テルエルの彼方へ』に決定。両作品ともに、第96回アカデミー賞短編部門のノミネート選考対象作品となる。


JVTAは毎年本映画祭を字幕でサポートしており、受賞作品の字幕もJVTA修了生が手掛けている。


■SSFF & ASIA 2023グランプリ ジョージ・ルーカスアワード受賞作品『希望のかけ橋』

実話をもとにしたアニメーション映画。1920年に日本へ逃れたポーランド孤児の歴史を、10歳の少年の視点から描いている。

『希望のかけ橋』/吉田和泉/0:22:30/ポーランド/2022
Photo:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア プレスリリースより


『希望のかけ橋』の字幕を手がけたのは、JVTA修了生のカーター美幸さん。本作で特筆すべきは、冒頭と最後のテロップ以外に言葉による表現がまったくないことだ。カーターさんは「あらゆる視聴者層にきちんと理解してもらうこと」をもっとも念頭に置いて翻訳作業を行ったという。

「この作品は作中にセリフが一切ないため、冒頭と最後のテロップに監督の思いが込められています。そのため、このテロップ部分できちんと説明しなければならないと意識しました」(カーターさん)

映像翻訳者の仕事は、セリフを翻訳するだけではない。画面上に表示される言葉は、基本的にすべて映像翻訳者が翻訳する対象となる。そしてセリフがない作品では、テロップがストーリーを伝えるための重要な役割を果たす。


さらに今回のテロップ翻訳では、史実との確認も必要だった。映像翻訳の仕事において、事実関係を調べることは重要な作業のひとつだ。カーターさんも今回、事実確認に力を入れたという。中には調べた用語に定訳がなかったり、資料によって異なる情報が掲載されていたりということもあって悩んだそうだが、常に「視聴者への分かりやすさ」を念頭に置き、情報を取捨選択して言葉を吟味した。


字幕を担当した作品がグランプリにあたる「ジョージ・ルーカスアワード」を受賞したことについては、「テロップのみの翻訳なのでおこがましいのですが、この作品を担当させていただき恵まれたということに尽きます」と喜びの声を寄せた。困難が続く今の世界情勢に通じるストーリーが「今、多くの人に届けたい作品」だと審査員に評価された本作。カーターさん自身も「監督が作品に込めたメッセージが、多くの方に届いてほしい」と願っている。



■ライブアクション部門 インターナショナル 優秀賞受賞作品『テルエルの彼方へ』

村を出たいと思っている羊飼いの老人が、偶然出会った若い写真家と共にワゴン車で地方を旅する物語。

『テルエルの彼方へ』/マニュエル・オモンテ/0:23:00/スペイン/2022
Photo:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア プレスリリースより


『テルエルの彼方へ』の翻訳を手掛けたのは、ウォルシュ未加さん。本作は『希望のかけ橋』とは異なりセリフがあるものの、全体のセリフ量は決して多くない。ウォルシュさんは翻訳にあたり、「セリフが少ないと情報も少ないので、訳を作るのは普段よりも慎重になる」という。


ウォルシュさんは本作について、「物語が進むうちに、羊飼いの老人が発する言葉にドキッとしたり哀愁を感じたりするようになった」と初見の印象を語った。全体的にセリフ量は少ないが、だからこそセリフの裏に込められた意味合いや感情を丁寧に拾うことが必要になる。自身が哀愁を感じたりドキッとしたりした言葉を、1つ1つよりしっかりと考えて翻訳に取り組んだ。


例えば物語の中盤、主要人物の2人が内戦の跡地を通る場面がある。内戦時代の遺物を見つけて興奮する若い写真家に、羊飼いの老人は自身が経験した内戦時代のことを語る。「内戦」という過去の出来事に対する2人の気持ちに、差が出ている場面だ。ウォルシュさんは特にその場面で、羊飼いの老人の感情をうまく表現できるように心がけた。

「『~なんだぞ』『~だったんだよ』など、感情が見えるような表現はあえて避け、『~だった』『~した』のような淡々とした表現を意識的に使いました」とウォルシュさんはいう。内戦は写真家にとって単に古い歴史の一部という感覚だが、羊飼いにとっては実際に体験した生の記憶である。セリフの語尾まで吟味することで、記憶のリアルさや、羊飼いの悲しみ、怒り、やるせなさが伝わる字幕を作り上げた。


「短編映画を翻訳するにあたって大切なことは?」と2人に聞くと、カーターさんは「短い尺の中にエッセンスが詰まっているので、そのエッセンスを外さず監督の思いを正確に伝えることが重要」と回答。ウォルシュさんは「短いからこそ1つ1つのセリフがとても重要。シンプルなセリフであっても解釈をしっかり行い、丁寧に訳すことが大切」と答えてくれた。2人に共通していたのは、「作品をしっかり解釈する」ということ。短編映画は、短い尺の中に様々な要素が詰め込まれている。翻訳者は、短い尺、少ないセリフでも作り手の意図を正確に汲み取り、それをセリフやテロップを通して視聴者に伝えなければならない。短編映画の翻訳にこそ、作品の深い理解や解釈力が求められるのだ。


『希望のかけ橋』と『テルエルの彼方へ』は、共に2023年7月10日までオンライン上で視聴可能。カーターさんとウォルシュさんが作品を隅々まで理解し紡いだ言葉を通して、ぜひ作品を楽しんでもらいたい。


■アワードセレモニーのアーカイブ視聴はこちらから!

●SSFF & ASIA 2023 公式サイト


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