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修了生の滝本安里さんが女性や子供に人気の科学絵本を翻訳

<strong>修了生の滝本安里さんが女性や子供に人気の科学絵本を翻訳</strong>
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映像翻訳者というと、一般的に多くが文系出身で“理系は苦手”という人も多いのではないだろうか。だからこそ、理系の知識や経験のある人は大きな強みとなる。
 
英日映像翻訳科の修了生、滝本安里さんもその一人。大学で生物学を専攻後、企業で研究開発に従事していたという。その知識と経験を活かして、出版社、化学同人から発売された「バクテリアブック 細菌、ウイルスと、ふしぎな仲間たち」と「おなかの花園 きみのおなかにひそむ不思議な世界 マイクロバイオームをめぐる冒険」の翻訳を手がけた。コロナ禍になった2020年に発売されたこの2冊は、大人からも関心を集めているという。この絵本の翻訳秘話と映像翻訳との共通点や違いについて伺った。
 
この2冊のテーマはバクテリアや腸内フローラなどで、専門用語が頻出する内容となっている。化学同人の加藤貴広氏は、「絵本とはいえ、バイオサイエンスの知識のある人に翻訳を任せたい内容であり、大学で生物学を学んでいた滝本さんなら、専門的にも適任ではないかと依頼しました。」と話す。まずはこの絵本がどんな内容なのか、滝本さんに分かりやすく解説していただいた。
 
◆『バクテリアブック 細菌、ウイルスと、ふしぎな仲間たち』

「楽しいイラストや写真から微生物について、やさしく学べる本です。ゆかいなサイエンスショーや本を通じて科学のふしぎを解説する作者のスティーブ・モールド氏は、オックスフォード大学で物理学を学んだ専門家です。なので、この絵本も、実は、理系学部の教養課程で学ぶほどの専門性を備えています。でも、周囲に反応をうかがうと、小学生にウケているそう。アリがゾンビになったり、生き物が闇に光ったりする写真が楽しいみたいですね」(滝本さん)
 
◆『おなかの花園 きみのおなかにひそむ不思議な世界 マイクロバイオームをめぐる冒険』


「こちらは微生物のなかでも、腸内細菌に着目しています。絵本作家のケイティ・ブロスナン氏がちみつな取材を経て描いた作品なので、どんな人にも『どうして腸内細菌が大切なのか?』がわかる工夫がたくさんあります。菌類のキャラクターが、口からおしりまでの体内の旅を案内してるんですよ。デザイン会社さんの計らいでステキな装丁に仕上がり、インテリアにもなると女性から好評です。余談ですが、校正作業中にスタッフの間で乳酸菌飲料が流行りました」(滝本さん)
 
滝本さんの解説を聞くと難しい専門分野でありながら、旬のテーマを子どもにも分かりやすく解説した内容が人気の秘密なのだと分かる。ちなみに滝本さんは、絵本の内容が彼女の専門分野に近かったので、まず自分の常識を疑うことに心を砕いたという。知識があるだけに知らず知らず、専門的な言い回しを使ってしまうことがあるからだ。そこで裏取りをして作者がどういうスタンスでその事柄を語っているのかを調べたうえで2段階にわけて調査した。
 
「ひとつ目は、絵本の内容が日本では一般的にどう扱われているのかに焦点をあてました。該当する分野のやさしめの新書や一般書、乳酸菌飲料のメーカーのホームページなどを読んで、世間が一般的に何を知っていて、どんなイメージを抱いているのかをつかもうとしました。
 
ふたつ目は、子どもが楽しく読めることを目標にしました。司書さんから『子どもは読んだときのリズムで内容をとらえる』というアドバイスをいただいたので、翻訳した文を実際に声に出して読みながら整えていきました。その前に、下調べとしてジャンルを問わずにいろいろな絵本を音読しました。」(滝本さん)
 

※『バクテリアブック 細菌、ウイルスと、ふしぎな仲間たち』より
 
滝本さんによると、スペースの限られる絵本では、長い説明は入らない。しかし、内容を咀嚼しすぎると、“バカにされた”と子どもの心が離れてしまうのだという。そこで最初にひっかかりそうな部分を数ページ訳して、編集担当の加藤氏と言葉づかいや文字の分量、認識のズレなどを調整しながら読者の気持ちに寄り添う翻訳を意識したという。
 
こうした翻訳作業が功を奏し、『おなかの花園』が『小学図書館ニュース』(少年写真新聞社)の付録で「これこれ、これは役に立つ!」というコーナーに掲載されたほか、『バクテリアブック』が雑誌『プレジデントファミリー』(プレジデント社)で、「新型コロナについて詳しくなれる4冊」として紹介されるなど教育関係からも注目を集めている。子どもが楽しく科学を学べるよう、小学校の図書室や図書館の児童室などにぜひ置いてほしい1冊だ。
 
「『バクテリアブック』に登場するキャラクターは、家の子どもたちも気に入っています。総ルビなので、幼稚園児の下の子も理解できるようです。」(加藤氏)
 

※『おなかの花園 きみのおなかにひそむ不思議な世界 マイクロバイオームをめぐる冒険』より
 
滝本さんは、映像翻訳者として中国ドラマや映画祭上映の子ども向け作品の吹き替えのほか、自動車をカスタムしたり、アンティーク家具などを修理したりする過程を描いたドキュメンタリー番組のボイスオーバーなどを担当してきた。メカニックにアレルギーがなく、エンジンの仕組み(構造やはたらきの原理)が分かっているのがメリットと言えるだろう。映像の翻訳と書籍や絵本の翻訳の共通点や違いを聞いてみた。
 
「ドキュメンタリー番組もノンフィクションの書籍・絵本も、視聴者や読者にすんなり入る説明が求められるように思います。それから、映像と絵本には尺・字数・スペースという制限があるので、簡潔な表現を目指すところも共通しているのではないでしょうか。
 
違いは…。映像では吹き替え翻訳が多いのですが、そのときには声優さんなどが読みやすいよう台本の使い勝手に配慮します。出版では、すばらしい声優さんの演技がないので、文字を目で追ったときに退屈しないように心がけています。」(滝本さん)
 
滝本さんは昨今、読んでリズムのある文章を目指したいと思い、JVTAのバリアフリー講座で音声ガイドの制作を学んだ。音声ガイドとは見えない、見えづらい人が映像を楽しめるよう、映像の時と場所、人物の動きや表情などを言葉で解説するツール。耳だけで聞いて映像を理解できる言葉作りは吹き替え翻訳や絵本の翻訳にも親和性が高く、新たなスキルの習得となった。これからは、サイエンスものはもちろん、ヤングアダルルトやミステリーなど幅広い分野を手がけてみたいという滝本さん。今後のさらなる活躍に期待したい。
 
◆バクテリアブック
細菌、ウイルスと、ふしぎな仲間たち
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b531848.html
 
◆おなかの花園
きみのおなかにひそむ不思議な世界 マイクロバイオームをめぐる冒険
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b548028.html

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