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翻訳者なら聖書を知っておきたい 修了生・小松原宏子さんがクリスマス児童劇の脚本を執筆

翻訳者なら聖書を知っておきたい 修了生・小松原宏子さんがクリスマス児童劇の脚本を執筆
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JVTAの修了生、小松原宏子さんが脚本を手がけた『教会・幼稚園・保育園用 クリスマス児童劇セレクション』(いのちのことば社・フォレストブックス)が刊行されました。二つの降誕劇、クリスマスの名作『クリスマス・キャロル』『靴屋のマルチン』、そしてオリジナルストーリーの5本の劇脚本が収録されています。

 
小松原さんは翻訳者、児童文学作家として活躍。かつてはJVTAの課外講座で聖書を学ぶ講座の講師を担当され、毎回人気となっていました。「聖書からの引用はもとより、聖書を起源とする格言やことわざ、言い回し、果てはダジャレに至るまで、聖書と英語と映画は切っても切れない関係です」と話す小松原さんにお話を聞きました。

 
◆教会のイベントで実際に使っていた台本を書籍化
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これを書くにあたっては、JVTAに通う前にシナリオの基礎講座を受講し、脚本の書き方を学んだことが役に立ちました。また、過去に経験した「編訳」という仕事(『若草物語』や『あしながおじさん』などの名作を子どもたちが読みやすいように分かりやすい言葉で翻訳をし、さらにコンパクトにまとめていく)の経験や、JTVAで学んだ字幕翻訳のスキルが活かせています。この児童劇セレクション出版のきっかけは4,5年前、自分の教会でクリスマスイベント用に『靴屋のマルチン』の脚本を書いたことでした。これが好評で翌年は『クリスマス・キャロル』を上演。その後、いのちのことば社の編集者に台本集の出版を提案し、実現の運びとなりました。その際、「やはりクリスマスと言えば降誕劇をぜひ収録したい」という出版社からの要望があり、小学生以上向けの『クリスマスのよる』と幼児用『クリスマスおめでとう』の2種類の脚本を新たに書きました。ふたつの降誕劇は、ひらがなと漢字など表記の違いや単語やセリフの言い回しを微妙に変えているので、読み比べていただくのも面白いかと思います。ミッション系の幼稚園やスクールに通っていても、実は聖書のことをまだあまりよく知らない、という子どもが多いので、幼稚園や教会で活用されているとのことです。

 
◆聖書やキリスト教の知識は翻訳者に必須
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欧米の映画やドラマ、小説には、聖書にまつわるエピソードが数多く散りばめられています。
それを知らずに思わぬ誤訳をしそうになったという同業者の声をこれまで沢山聞いてきました。でもいきなり聖書を読み込むのは難しいと思うので、こうした子ども向けに書かれたものをきっかけにリサーチして知識を深めるのも一考だと思います。キリストの降誕劇は絵画でも受胎告知として数多く描かれていますし、この脚本にも「イエス様は馬小屋で生まれた」「マリア様は結婚前にイエス様を身ごもった」「初めてのお祝いしたのは3人の羊飼い」「3人の博士が黄金、没薬、乳香を贈った」など、基礎的なエピソードは盛り込んでいます。こうしたキーワードが頭の片隅にあるだけでも気づきのきっかけになりますよね。

 
◆『スリー・キングス』のタイトルの背景にも聖書がある
聖書を知ると英語も映画も10倍楽しい
最近発売された書籍『字幕翻訳 虎の巻 聖書を知ると英語も映画も10倍楽しい』(いのちのことば社・フォレストブックス) は、JVTAの受講生・修了生の皆さんにもぜひ読んで欲しい1冊です。著者は、元ワーナー・ブラザース映画製作室長として、英語、洋画、聖書に精通した小川政弘氏。『ミッション・インポッシブル』や『燃えよドラゴン』『エデンの東』など新旧さまざまなジャンルの映画を題材に、聖書をモチーフにしたセリフやジョーク、皮肉などを具体的に解説しています。ジョージ・クルーニー主演の『スリー・キングス』のタイトルにも実は先ほど言及した❝3人の博士❞が由来しているそう。神学校を卒業されているプロ中のプロの指南は必ず翻訳に役立ち、映画を観る目が変わるはずです。映画は聖書をセリフでもじったり、ダジャレになったりしていることが多く、それが肝になっているものもたくさんあります。キリスト教の神を信じる、信じないということではなく、文化として根付いているものとして翻訳者にとって聖書の知識は避けては通れないもの。それは日本の昔話をみんなが知っているのと同じ感覚なんです。

 
◆「水をワインに変えてみる?」をどう訳す?
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例えば「水をワインに変えてみる?」というセリフがあったら、どう訳しますか? これはある婚礼に呼ばれたキリストが水を芳醇な葡萄酒に変えたという聖書の一節から来ていることばです。ですからこの場合は、「奇跡を起こしてみる?」「魔法を使ってみる?」というニュアンスに訳すと聖書を知らない日本人にもセリフの意図が伝わります。こうした気づきがなければ言葉通りに訳してしまい、日本人は首をかしげてしまうでしょう。

 
ロバート・ダウニーJr.主演の『アイアンマン』にもこんなシーンがあります。米ラスベガスのシーザース・パレス・ホテルで行われたアポジー賞の授賞式。名誉ある賞を獲得したトニー(ロバート・ダウニーJr.)は会場におらず、カジノではしゃいでいます。そこへわざわざトロフィーが届けられるのですが、興味がないトニーは通りすがりの人に渡してしまいます。この時かける言葉が下記です。
Render unto Caesar that which is Caesar’s. There you go.
(シーザーの物はシーザーに返す)

これも聖書に出てくる「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい」というフレーズをジョークにしたもの。ちなみに、カエサルは英語ではCaesar。渡された相手はジュリアス・シーザーの扮装をしていて、クリスチャンならクスっと笑える場面です。こうした例はあげはじめたらキリがないほどあります。

 
◆キリストの呼び方もたくさんある
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例えば、文中で冒頭ではないのに「He」「Him」など頭が大文字の場合はイエス様をさしています。またmy Lord、Son of Man、ダビデの子、ダビデの裔(すえ)などもキリストを表わす表現です。

 
余談ですが、聖書に慣れすぎて気づかなかったこともあります。ある時、JVTAの聖書講座で「ダビデの裔」の話をしたら「それは父方か母方か」と受講生から質問されたんです。どうしてそんなことを聞くのかと思いましたが、よく考えてみたら、もし父方であれば、マリアは結婚前にイエスを身ごもっており、ダビデ家の末裔である父のヨセフとは血の繋がりはないのではないか?という疑問だったわけです。クリスチャンにとっては当たり前になっていて考えたこともなかったので、目からうろこでしたね。実はこの「目からうろこ」も聖書からきたことばです。日本でも馴染みがある「豚に真珠」「狭き門」「迷える子羊」「スケープゴート」などもそうです。そう聞くと、より身近に感じられるのではないでしょうか?

 
◆今回書き下ろした新作にも聖書の要素がある
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今回収録の『かけをしたふたりのおはなし』は唯一のオリジナルで、同書のため書き下ろしたものです。カイトとケントという二人の少年が80代になるまでを追った物語ですが、根本にあるのは「神さまはいるのかいないのか」というテーマです。創作のヒントはミッション系スクールで学んだパスカルの名著『パンセ』でした。授業の中で「神がいるかいないかは分からない。でもいる方に賭けたら絶対間違いない」という先生の言葉がずっと心の中にあり、このお話を書きました。放蕩息子のカイトがお金を使い果たして帰ってきても父は受け入れてくれます。これも「信仰から離れて世俗にまみれても心を入れ替えれば神様はちゃんと迎えてくれる」という聖書の教えを盛り込んでいます。

 
もう一人の主人公ケントは、受験に失敗し、貧しさから大学も辞めてカイトの実家の工場で働きますが、カイトのせいで工場が破産するなどさまざまな試練にぶつかります。クリスチャンならその姿に、聖書のヨブ記を想起することでしょう。ヨブ記も欧米人なら誰でも読んだことがある聖書の書物です。ヨブは、裕福で家族にも恵まれて幸せに暮らしていますが、神様が彼に厳しい試練を次々に与えて全てを失ってしまいます。最後は自らも病気になりますが、それでも信仰を失いません。もし、セリフに「ヨブみたいな目に遭う」とあれば、相当ひどい目に遭っているということ。ちなみにヨブのスペルはJob。ジョブ(職業)で訳して違和感がある時は人名のヨブかもしれないと調べてみてください。神がいるかいないかに関わらず、自分の気持ちの持ち方で人生の豊かさが変わってくる。『かけをしたふたりのおはなし』は、教会だけでなく一般の場所での上演も想定し、そんな要素も盛り込んでみました。

 
今年はコロナ禍でクリスマスの劇もなかなか上演できませんが、この本で聖書を身近に感じてもらえたら嬉しいです。聖書を知り、西洋の映画や絵画をより深く理解して翻訳に活かしてください。

 
表紙0714_ol
「教会・幼稚園・保育園用 クリスマス児童劇セレクション」
いのちのことば社・フォレストブックス
1,650円(税込)
https://www.wlpm.or.jp/pub/?sh_cd=107855

 
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