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「音声ガイドディスクライバーのプロ養成講座ができるなんて夢のよう!」

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これは、バリアフリー映画鑑賞推進団体シティ・ライツの代表、平塚千穂子さんの言葉です。

 
平塚千穂子さんが音声ガイドの制作を初めて手掛けたのは2001年。チャップリンの無声映画『街の灯』が最初の映画でした。それから12年、試行錯誤しながら築き上げてきた“シティ・ライツ流”の音声ガイド。団体設立時のエピソードやこれから音声ガイドディスクライバーのプロを目指す人たちへ期待することなどについて、平塚さんにお話を伺いました。
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※写真は同団体が主催していた第6回City Lights映画祭の会場にて。右が平塚さん。左は同映画祭実行委員長の斉藤恵子さんです。

 
◆シティ・ライツの立ち上げは2001年
きっかけは「洋画を吹き替えで観るのは苦手なので、字幕を読んでほしい」という視覚障害者の声でした。その時は、どのくらいの人が音声ガイド付きの映画鑑賞を求めているのか全く分かりませんでしたが、ちょうどその頃、アメリカで劇場公開された『タイタニック』(1998年)が音声ガイド付きで上映されたことを知りました。そこで、メールなどで「音声ガイド研究会」を立ち上げる旨を伝えたところ、80人を超える視覚障害者の方々から反応がありました。「家族と一緒に映画館に行きたい」とか、「音声ガイド付き映像を使って目の不自由な子どもに社会の授業をしたい」などの声が届いたのです。
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※写真は初期のシアター同行鑑賞会の様子です。

 
◆原点は映画館で耳元にコソコソっと解説する鑑賞会
2001年に初めて視覚障害者とのシアター同行鑑賞会を開催しました。当時『千と千尋の神隠し』が大ヒットしており、視覚障害者の友人から「映画館で観たいので、一緒に観に行って耳元にコソコソっと映画の内容を説明してほしい」と頼まれたのです。劇場に問い合わせたところ、平日の空いている回に前の方の席でならと許可を頂きました。視覚障害者とボランティアの2人1組、計20人で出かけました。しかし、実際には観た映像をその場で相手に説明するのは本当に難しく、途中で登場人物の名前も出てこなくなってしまいました。「あのオカッパの男の子誰だっけ?」「ハクだよ」と逆に教えられてしまうこともありましたね(笑)。それでも、そんな一生懸命さと、映画館ならでは臨場感を楽しめたということで、視覚障害者には好評でした。

 
◆長靴のマイク、MDプレイヤー、8つのタコ足配線
その後『ハリー・ポッターと賢者の石』を鑑賞した時には、劇場を貸し切らなくてはならないほどの参加希望者があり、やはり多くの方々が音声ガイドを求めていたことを実感しました。さすがにこの規模では1対1のガイドは無理ですから、ボランティアの中からガイドの上手な人を選び、そのガイドを複数で共有する方法を考えました。当初は、子供用の長靴やペットボトルにマイクを仕込んで、なるべく劇場内に声がもれないようにライブで解説をしたり、MDデッキを使って事前に録音編集した音声ガイドをタコ足配線のイヤホンで最大8人が共有したりと、様々な工夫をしていました。現在、私たちが開催する映画祭などでも採用しているFMラジオで音声ガイドを聴くというやり方は、こうした経験を経て出来上がったのです。
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◆言葉にしなくても伝わっていることがある
私は、シティ・ライツでのボランティア活動を通じて視覚障害者から「見えている人は、多くを伝えようと言葉を詰め込みすぎる」「言葉にしなくても伝わることがある」「余計なものはいらない」などのことを気づかせてもらいました。視覚障害者は映画を鑑賞する際、音だけを手がかりに、見えている人以上にイメージを膨らませて、人物に感情移入しながら鑑賞しています。ですから、セリフを聴くだけで役者の表情まで頭に描けているものなのです。それをあえて言葉に起こしてしまうと陳腐なイメージになることもあるのです。また、映像鑑賞には“間”を楽しむことも大切な要素です。その“間”の中にむりやりガイドを詰め込むと、邪魔をされたと感じる人もいるようです。私たちが10年前に手がけた『ローマの休日』の音声ガイドを今あらためて聴いてみると、ガイドを詰め込みすぎている印象ですが、最近手がけたガイドは透明感があってスッキリしていると感じます。
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◆音声ガイドのプロ
シティ・ライツを立ち上げた頃のことを考えると、今では日本映像翻訳アカデミーさんに音声ガイドのプロ養成講座があるなんて夢のようです。音声ガイドはこれから成熟していく分野です。音声ガイドのディスクライバーを目指す人たちには、ぜひ視覚障害者と直にコミュニケーションを取ってほしいですね。そして、その経験の中から“ちょうどよいガイド”を自分なりに編み出していってほしいと思います。いつか「このディスクライバーの解説で映画を楽しみたい!」という選択ができる時がきたら、素晴らしいですね。期待しています!
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※写真は今年の第6回City Lights映画祭のトークショーの様子です。

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