米で開催のIJET(日英・英日翻訳国際会議)-28 (コロンバス)でJVTAが講演
2017年4月8日(土)~9日(日)、アメリカ・オハイオ州コロンバスにあるオハイオ州立大学で、IJET(日英・英日翻訳国際会議)が開催されました。このイベントは日本翻訳者協会(JAT)が主催。実務翻訳や通訳を中心に翻訳関係者の間で情報を交換することを目的に毎年行われています。2014年に東京で行われたIJET-25 には、JVTAの新楽直樹代表が登壇し、映画やドラマだけに留まらず多様化する映像翻訳の現状について講演しました。今年のテーマは「日英翻訳・通訳業界 全体の底上げ」。日英映像翻訳者の育成や日本のコンテンツの海外進出のサポートを積極的に進めるJVTAがJATから依頼を受け、ジェシー・ナスディレクターがプレゼンをしてきました。実務翻訳と映像翻訳のジャンルの違いを超え、今後の翻訳者にはどんな可能性はあるのか? ジェシーディレクターによる現地のレポートをお送りします。
主な参加者は、アメリカ在住でインハウスかフリーランス翻訳者として活躍している方で、中には教授などアカデミックな業種の方もいらっしゃいました。日本人3割、外国人7割くらいの割合でした。また、今回の開催地が大学ということで、開催地のオハイオ州立大学や近隣のケント州立大学で日本語を勉強している学生が、イベントにボランティアとして参加。会場内の案内や、プレゼン前の紹介などをしていました。翻訳会社で翻訳チェッカーとして働いている若い人から、翻訳者歴20年以上のベテランのフリーランス翻訳者まで幅広い層の方と交流することができました。
◆映像翻訳に関するプレゼンが好評
私は「Tokyo 2020 and More – Latest Trends in Visualmedia Translation」と題し、まずは映像翻訳とは何かを紹介し、日本の映像翻訳業界のトレンドや東京オリンピックを前に拡大するインバウンドの需要などについてお話をしてきました。プレゼン中は私からの質問にも参加者が積極的に答えてくれたほか、Q&Aでも多くの質問がありました。「実務翻訳の経験はあるが映像翻訳にも仕事の幅を広げるにはどうしたらよいのか?」「実務翻訳は定訳も多いが、映像翻訳は答えが一つではない。チェックはどのようにしているのか?」など具体的な問いが印象的でした。プレゼン後、私のところに挨拶や名刺交換をしに来てくださった方は10人以上。ほぼ全員が実務翻訳をしている方で、映像翻訳はまったく初めてだけど面白そう、興味があるという声が多かったですね。JVTAでの受講(特にオンライン受講)に関するお問い合わせもたくさんありました。中には「このプレゼンはカンファレンスの中で一番面白かった」と言ってくださった方も…。持参したJVTAパンフレットがあっという間になくなり、映像翻訳への関心の高さを実感しました。
◆共通の課題は「機械翻訳の可能性」
私も現地でコメディーの翻訳や、通訳業界の紹介などのプレゼンなどに参加してきました。共通して話題になっていたのは、「機械翻訳の可能性」や「品質管理」です。例えばQC翻訳チェックツールはどのように使ったらいいのかという点も多く語られており、興味深かったですね。
◆映像翻訳は実務翻訳にとって「憧れ」
やはり実務翻訳者にとっては、「映像翻訳は文字数制限があるから難しい」というイメージが強いようです。でも、私のプレゼンで触れた「映像翻訳の目的(=観客を楽しませること)」や、「ストーリーストラクチャー」「コンテキスト、ビジュアルの大事さ」などについては、これまで考えたこともなかった、目からウロコだったというコメントもありました。「エンターテインメント系の翻訳はいいな、面白そう、楽しそう!」という反応も多く、映像翻訳に対する「憧れ」という気持ちも強く感じました。同じ翻訳業界の中でも、映像翻訳についてはまだ知らない方も多く、今後まだいろいろな可能性があることが分かりました。これからも映像翻訳ならではの魅力をより多くの方に紹介していきたいと改めて感じたイベントでした。
IJET-28 (コロンバス) 公式サイト
https://ijet.jat.org/ja/