【JVTAが字幕を担当】イタリアの短編映画上映会SIC@SIC2022が9月22日に開催!
9月22日(金)、イタリア文化会館ホールにて、「短編映画上映会SIC@SIC2022」が開催、イタリアの短編映画5作品が上映される。このうち、4作品の字幕をJVTAが担当している(1作品はセリフがない作品)。
SIC(国際批評家週間)とは、ヴェネツィア国際映画祭の独立部門の一つで、長編映画未発表のイタリア人監督による短編映画7作品によるコンペティションだ。すべての作品が世界初上映される。今回のイベントでは、昨年のSIC@SIC2022に選出された7作品から4作品、さらにコンペ外の1作品が上映される。5作品のなかに共通するのは変化や変貌が描かれていることだ。長くても約20分という短い時間の中に凝縮された各作品の魅力について字幕翻訳者に聞いた。
◆『アルベルティーヌ、どこ?』
Albertine, where are you?
監督:マリア・グイドーネ/2022/イタリア/フランス語・英語/ 20分
アルベルティーヌはマルセルの愛の対象であり、彼は彼女を得るためには何でもする。これは愛と所有と嫉妬の物語である。だが同時に、傲慢で不遜な自由の解放と回復の物語でもある。(公式サイトより)
「この映画は『失われた時を求めて』という20世紀初めに書かれたフランスの長編小説、およびその作者プルーストの人生が下敷きになっています。小説中の登場人物であるアルベルティーヌという女性を題材にカナダの詩人アン・カーソンが『The Albertine Workout』という詩を書き、その詩から着想を得てさらに物語を現代劇へ翻案したのがこの作品です。
描かれるのは男性から女性への愛、疑い、嫉妬、所有欲。異性愛と同性愛。やがて男女の性の境目、非現実(物語世界)と現実(作者の実人生)との境目が曖昧に揺らぎ、交錯していきます。
訳出に際しては『失われた時を求めて』のフランス語原文と既刊の日本語訳を参考にしました。原作の内容や雰囲気を尊重しつつ、原作を知らない初見の視聴者にも独立した1つの作品として理解してもらえるよう、訳語選びや文体に気を配りながら字幕を作りました。」
(字幕翻訳・足立せりなさん)
◆『ハッピー・バースデー』
Happy Birthday
監督:ジョルジョ・フェッレーロ/2022/イタリア/ロシア語・英語/20分
*コンペ外
2022年2月28日、モスクワ。エレクタ(ロシア人)とアニータ(アルゼンチン人)の二人の主人公は環境運動家のポッドキャストを通じてオンラインで出会う。そこで、Z世代の迷いと困難に声が与えられる。(公式サイトより)
「本作品では主人公の心の葛藤が描かれていますが、その葛藤がストレートに表されているのが鏡の中の自分と会話するシーンだと思います。世界中で起きている様々な問題の影響を被り、主人公が抱く無力感や怒り、不安が画面を超えて押し寄せてくるようでした。
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また本作品はセリフのないシーンも多いのですが、描かれている感情とは相反するような映像の美しさが個人的にとても好きでした。本編の最後には作品の説明があり、この説明を読んでハッとする方も多いのではないでしょうか。
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翻訳をするにあたって工夫したところは、比喩表現の訳出です。なるべく原文のままに、説明が必要だと感じた部分だけ日本語の表現を少し変えるなど、作品の雰囲気を壊さないようにバランスを考えながら訳出ました。また作品全体を通して主人公が置かれている状況を直接的に示すせりふは出てこないのですが、主人公がどんな世界にいるのかがなるべく伝わるような言葉選びを意識しました。」(字幕翻訳 小倉麻里矢さん)
◆『残されたものたち』
Resti
監督:フェデリコ・ファディーガ/2022/イタリア/イタリア語/13分
ある若者たちのグループに起こる出来事を描いている。彼らは休暇へと向かう旅のさなか、荒廃した場所に立ち寄り、そこで一夜を過ごすことになる。(公式サイトより)
「昔の記憶と現実世界とが、絶妙に入り交じって描かれている作品です。私はストーリー全体を理解するのに、少なくとも3回は視聴する必要がありました。あなたもきっと、夢を見ているような不思議な感覚が楽しめるでしょう。
登場するのは若者たちなので、若者らしい言葉遣いを心がけて訳出しました。話すスピードが速く、簡潔なセリフが多かったので、訳出すべき情報の取捨選択や、追加すべき情報を判断するのに苦労しました。また、短い作品ながら登場人物が多いため、お互いの関係性が視聴者にも伝わるように意識しつつ、自然なセリフになるよう字幕を作りました。字数を極限まで抑えてテンポのよい字幕になるよう心がけたので、じっくりと映像もお楽しみいただけたら幸いです。」(字幕翻訳・平岡洋子さん)
◆『ミス・イタリア』
Reginetta
監督:フェデリコ・ルッソット/ 2022/ イタリア/ イタリア語/ 15分
1950年代の南イタリア。リゼッタの美しさは貧困から脱出するための希望である。しかしそのために人々は、おそらくは到達しないだろう「もっと、もっと」を追い求め、残酷な行為を実行に移していく。(公式サイトより)
「本作品の登場人物は、いわゆる標準イタリア語と方言を交えて会話をしています。本編の映像には、方言の部分にイタリア語字幕がつけられていました。イタリア映画では、方言にイタリア語字幕をつけ上映されることがあります。地方色が色濃く残っている、イタリアならではのことではないでしょうか。(※)
本作品では、「方言」は識字率の低かった時代背景を表現するための小道具なのかもしれません。けれども、現代でもイタリアは方言の宝庫です。若者も誇らしげに方言を使います。「イタリア人」であることよりも「ミラネーゼ(ミラノっ子)」や「ロマーノ(ローマっ子)」といった、どこの出身であるかをアイデンティティにする国民性が、そこにも表れているのだと思います。地元愛にあふれるイタリアでは、方言が廃れてしまうことはきっとないでしょう。そんなイタリアという国の背景にも思いをはせて、観ていただけたらと思います。」(字幕翻訳・杉本ありさん)
※この作品では、イタリア語字幕が表示される箇所の日本語字幕は、縦字幕で〈〉つきで表示されている
◆『ノストス』
Nostos
監督:マウロ・ズィンガレッリ/2022/イタリア/台詞なし/15分
ディストピア的な世界を旅する二人。そこでは、人間とテクノロジーの関係が人間の現代、そして未来についての省察を生み出す。
昨今のイタリアで注目の5作品を堪能できる貴重な機会。お見逃しなく。
◆短編映画上映会SIC@SIC2022
開催日: 2023 年 9月 22 日
時間: 18:30
主催 : イタリア文化会館
入場 : 無料(公式サイトから事前予約が必要)
詳細・参加お申し込みはこちら
https://iictokyo.esteri.it/iic_tokyo/ja/gli_eventi/calendario/2023/09/proiezione-dei-corti-sic-sic.html
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