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人間の英文解釈を支えるものは、機械翻訳に足りないもの。――イベント「機械翻訳に勝つ英語力を身につける」開催レポート

人間の英文解釈を支えるものは、機械翻訳に足りないもの。――イベント「機械翻訳に勝つ英語力を身につける」開催レポート
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分からない英文に対面した時、Google翻訳などの機械翻訳にかけて訳文を出し、何となく読めた状態のまま次のステップに進んでいませんか? もしそうなら、あなたは常に誤訳と隣り合わせの状態で仕事をしているのかもしれません。
 

機械翻訳ができないこと、人間の解釈を支えるもの
10月6日(日)、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)のイベント「機械翻訳に勝つ英語力を身につける 英文を深層まで読み解くロジカルリーディング力の習得法」が開催されました。明らかになったのは、現在の機械翻訳ができること/できないこと、そして私たち生身の人間の「英文解釈」を支える複数の要素でした。JVTAの「ロジカルリーディング力 強化コース」を教える山根克之講師による翻訳ワークショップとトークセッションをレポートします!
 

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イベント前半は翻訳ワークショップ。機械翻訳が作成した訳文の“明らかに意味がおかしい”と思われる部分を指摘して、その原因は何なのかを考えます。
 

まずは機械翻訳(ワークショップではGoogle翻訳を使用)の実力を確認。近年の機械翻訳の発展は目覚ましく、複雑な構文でもしっかりと理解し、自然な日本語で訳出してくれる場合もあります。とはいえ、できないことがあるのも事実。山根講師は6つの例文を使い、参加者同士のディスカッションも促しながら、そのポイントを明らかにしていきます。
 

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「不自然な日本語を読んだ時の“理屈がおかしいな”と思える感度が大切です」「言葉の裏にある意味まで読み通せるようになると、英語を読むことがもっと面白くなるし、翻訳力の向上に絶対に役立ちます」。ワークショップとレクチャーを経て、参加者らは、英文解釈は「単語・熟語の知識」「文法事項の理解」「センテンス同士の関係を見ること」「雑学知識やユーモア感覚」などに支えられていて、同時に、機械翻訳はこれらの力が弱いという発見をしました。
 

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イベント後半は映像翻訳者としての山根講師と、JVTAの映像翻訳ディレクター/講師の石井清猛によるトークセッションです。
 

100%解釈できないと、プロとしての責任を果たせない
石井●今回のイベントは「機械翻訳の正体を暴く」みたいなところがあって。その機械翻訳を斬った刀で、皆さんの“人間翻訳”は機械に勝てていますか? という問いでもありました。勝手ながら、今日この場に立つ山根講師は「映像翻訳の仕事をやっている」というのがすごく大きいのかな、と思っています。
 

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山根●もし映像翻訳者になっていなかったら、今のレベルで英文を読めるようにはなっていないでしょう。翻訳とは読んだ英語の内容、目の前の映像で語られている内容をまず自分で咀嚼して、理屈を再構築して日本語で表現することです。そうなると、必ず「説明の責任」が伴う。
 

石井●翻訳を仕事にすることで「妥協を許さない解釈」をしなくてはいけなくなったということですね。
 

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山根●若い頃からペーパーバックは読んでいたんだけど、翻訳者になって、自分の日本語を説明するようになって「意外と読めていない」ことに気づくわけです。プロになって良かったことの一つですね。仕事の時は100%解釈できないと、責任を果たすことができません。
 

石井●“こだわり抜く力”。進化し続ける機械に人間が勝てるところがあるとすれば、その1点なのかもしれませんね。テキストや映像の中に登場する人は本当にそう言ったのか? 本当にそう動いたのか? そこに懸けることが、翻訳者としてこれからの時代を生きるヒントになると思います。
 

想像力までも使って、正解に近づく
やがて、イベントはQ&Aセッションへ。
 

質問者●改めて「解釈」って何なんだろうな、と思いました。それは「ファクトからずれない想像力」ですか? 解釈の意味を教えてください。
 

山根●「解釈=想像力」ではなくて、“想像力”も解釈を支える要素の一つ、という言い方が正しいと思います。ワークショップを通して見えた「単語・熟語の知識」「文法事項の理解」「センテンス同士の関係を見ること」「雑学知識やユーモア感覚」――これらを駆使しても、話者の真意は最終的にはその人に聞かなければはっきりしないこともある。でも、いちいち本人に確認するわけにもいかない。その中で翻訳者は何をするかというと、想像力までも使って正解にできる限り近づく努力をする、ということだと思います。
 

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* * *
 

その後も質問は続き、イベントは盛況のうちに幕を閉じました。英語で仕事をしている、あるいは、しようとしているあなたの“人間翻訳”は機械に勝てていますか? 誰もが気軽に機械翻訳を使える今だからこそ、英文解釈を学ぶ時なのかもしれません。
 

英文を貫く論理の見いだし方、筋の通った訳文の作り方を山根講師が伝授する講座の詳細はこちら:

機械翻訳に打ち勝つ‘翻訳脳’をつくる
「ロジカルリーディング力 強化コース」

EC
http://www.jvtacademy.com/chair/ec.php
 

新講座「ロジカルリーディング力 強化コース」では、英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やドキュメンタリー番組のスクリプトなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。

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