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大学生たちが目指した「字幕翻訳で伝える難民問題」

大学生たちが目指した「字幕翻訳で伝える難民問題」
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JVTAでは、2014年から明星大学人文学科国際コミュニケーション学科で映像翻訳の授業を通年で行っている。毎年4月になると履修科目として「映像翻訳」を選んだ学生たちが集まる。学生たちはJVTA講師の指導のもと、字幕のルールや基本的なスキルを学び、夏には1本の映像作品に字幕を付けていく。これまで扱ったのはすべて難民映画祭の上映作品だ。
 
難民映画祭はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の主催で2006年にスタート(現在は国連UNHCR協会が主催)。困難な状況で力強く生き抜く難民の姿を捉えた作品を上映し、映画を通じて一人ひとりの人生にフォーカスすることで、難民問題の現状を伝えてきた。そして秋には完成した字幕を披露するため、学生たちが自ら上映会を企画し、運営まで行う。過去2回の上映会は、コロナ禍ということもありリモートで行われたが、今年は久々に大学構内で観客を招いての開催となった。
 
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今年は学生25名が字幕翻訳に打ち込んだ。作品は実話をもとに制作された長編映画『地中海のライフガードたち』。スペインのライフガードたちがある1枚の写真をきっかけに、ギリシャのレスボス島に向かう。命がけで海を渡ってくるシリア難民を救出する姿を描いたドラマ作品だ。登場人物たちが話すのはスペイン語、ギリシャ語、英語、アラビア語で、学生たちはすでについている英語字幕をもとに8日間で日本語に翻訳した。
 

作品の上映が始まると、学生たちが翻訳した字幕が表示される。翻訳作業は複数のグループに分かれて行われたが、表記やキャラクターの言葉遣いにも統一性があり、字幕は違和感なくスムーズに流れていく。映像翻訳は、正確に訳すだけではなく、視聴の邪魔をしない自然な文章を作ることが大前提。学生たちの字幕はその条件を十分にクリアしていた。
 

上映後には、国境なき医師団(MSF)日本の今城大輔氏を招いたトークイベントを学生たちの進行で行った。今城氏は2017年までUNHCR駐日事務所で「UNHCR難民映画祭」の企画・運営を担当し、難民問題を熟知しているだけではなく、「映像で伝える」ということに力を注いできた。今城氏によれば、国境なき医師団も地中海でシリア難民の救護に関わっており、それらの難民の約3分の1が未成年者で、その大半は親がいない。学生たちと同年代の若者たちが厳しい現実の中を生きている。多くの学生たちの心に浮かぶのは「自分たちに何ができるのか?」。そんな学生たちに今城氏は自身の体験からこんなアドバイスをした。
 

「皆さんに得意なことがあれば、工夫次第でサポートすることはいくらでもできます。映像翻訳も同じです。字幕を付けることで映像を通して、難民問題を知ってもらう機会を作ることができる。学生の皆さんも自分にしかできないことを見つけて、それを難民問題に生かしていってください。そうすれば、その輪は広がっていくはずです」(今城氏)
 
字幕翻訳を指導したJVTAの藤田奈緒講師も学生たちの頑張りを評価している。
 

「例年ドキュメンタリー映画を扱うことが多かったのですが、今年は事実をベースにした長編ドラマ作品でした。多言語のセリフも多く英語字幕から訳すのには苦労する面もありましたが、非常に読みやすい自然な言い回しに仕上がりました。また上映会準備も講師陣が指導をしながら学生主導で進めましたが、特に当日は学生たちの自主的な動きが目立ち、大きなトラブルなく終了を迎えることができたことに感動しています」(藤田奈緒)
 

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現在、開催中の第17回難民映画祭では、同作品が学生たちの字幕で上映されている。参加した学生の1人は映像翻訳と難民問題に関わったことで、目指したい職業を考えるきっかけになったと語った。この経験を機に自分にしかできないことを見つけ出して行動に移していってほしい。
 

『地中海のライフガードたち』は第17回難民映画祭で12月14日(水)までオンライン配信されている。ぜひ、字幕にも注目しながらご覧ください。
 

第17回難民映画祭 【オンライン配信 6作品 視聴期間】

2022年12月01日(木)~12月14日(水)

【料金】
日本初公開2作品を含む6作品を、視聴期間中は何度でも視聴可能
2,000 円(視聴料2,000 円)
3,000 円(視聴料2,000 円、難民のための匿名募金1,000 円)
5,000 円(視聴料2,000 円、難民のための匿名募金3,000 円)

事前申し込みの詳細はこちら


 

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