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映像翻訳は過去の経験すべてを活かせる仕事 目指すのに遅すぎることはない

<strong>映像翻訳は過去の経験すべてを活かせる仕事 目指すのに遅すぎることはない</strong>

映像翻訳は、インターネットとPCがあれば世界のどこにいてもできる職能だ。修了生でプロの映像翻訳者として活躍する春木美果さんは、「翻訳者になるのに年齢は関係なく、学び始めるのに遅すぎることはない」と話す。春木さんは、アメリカでの留学やNPO研修の経験に加え、日本でも国際人権団体や大学で勤務していた時に仕事で英語を使う機会があり、「老後は在宅で翻訳者」という想いがあったという。JVTAに入学したのは50代になってから。コロナ禍もあり、人生後半の自分の働き方を考え、翻訳者になる夢を叶えるタイミングは今だと感じた。決め手は、トライアル合格後にOJTがあるなどプロデビューへのサポートの手厚さだった。プロデビュー後、春木さんが実際に手掛けた仕事や、映像翻訳者という仕事の魅力について話を聞いた。

◆映画祭で短編映画の字幕づくりを経験
JVTAは毎年多くの映画祭に字幕翻訳で協力しており、修了生の活躍の場となっている。映画祭の上映作品は短編映画も多く、新人翻訳者の登竜門ともいえる。春木さんもプロデビュー後、沖縄で開催される「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」や、心に響く短編作品を集めた「ダマー国際映画祭」、アジア最大級の短編映画の祭典「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」、「ひろしまアニメーションシーズン2026」などの上映作品を手がけた。短編ならではの翻訳の難しさはどんな点にあるのだろうか?

「長編に比べ、短編ではダイナミックなストーリー展開や演出よりも、登場人物(人ではないこともありますが)の心情に、短い時間で強くフォーカスされていると思います。時には『伝えたいことはなんだったのだろう?』とメッセージが分かりにくい場合もあります。短編の方が作品や登場人物を理解するための情報が少ないので、何回も見直し、とにかく映像から読み取れるものをくまなく探す工夫が必要だと感じています。」(春木美果さん)

◆映画祭会場で翻訳者ならではの醍醐味を味わう
春木さんは今年、ダマー国際映画祭に足を運び、字幕を担当した映画を初めて観客と共に鑑賞した。映画祭の会場では監督や俳優など関係者と観客の距離が近く、会話をする機会もあったことに驚いたと話す。

ダマー国際映画祭の会場にて

「私が字幕を担当した短編映画『Side A: A Summer Day』は、台湾に住む小学校5年生の男の子とお母さんの関係を描いた作品です。上映が開始した時は、なんだか自分の子どものピアノや学芸会の発表会に来たような気分で、ストーリーはわかっているのに登場人物に『そう、その調子』と、謎のエールを心の中で送っていました(笑)。作品の最後に自分の名前がスクリーンに表示されるのを初めて見た時、自分は映像翻訳者なんだという実感が湧くと同時に、改めて責任も感じました。映像翻訳者として、この日は一生忘れられない日になったと思います。」(春木美果さん)

◆映像翻訳者は常に新たなジャンルや作品と出会えるやりがいのある仕事
JVTAの映像翻訳コースで学ぶ過程で、受講生は様々なジャンルやテーマの映像と向き合う。その後プロデビューすると、さらに幅広い作品と作品が描く世界にふれるチャンスが増える。作品の世界観を正しく伝えるために、翻訳者は、入念なリサーチを行う。翻訳を通して、自身の知見が豊かになるのもこの仕事の大きな魅力だ。課題では英語の作品を日本語に翻訳することがほとんどだが、実務では映画祭上映作品など世界各国の作品がある。オリジナルの言語が英語以外の作品の場合、すでに付いている英語字幕から日本語に訳すことも少なくない。

「多言語の場合、オリジナルの言語からいったん英語に翻訳された段階で、字数制限により途中で抜け落ちてしまう情報や文化的なニュアンスなどもあります。それでも、丁寧な調べものをして、映像をくまなく見つめることで少しでも作品が伝えたいことを読み取っていきます。ですから英語さえ分かっていれば何でも訳せるというものではありません。まず自分が作品の魅力を理解して日本語の字幕をつくり、1人でも多くの視聴者に作品を届ける。とてもやりがいのある仕事だと実感します。」(春木美果さん)

◆映像翻訳者になるのに遅すぎることはない

春木さんは現在、プロの映像翻訳者として情報番組や、音楽アワード番組、建物の紹介、韓流ドラマやサスペンスアクションなどの映画、スポーツの試合の実況や解説など幅広いジャンルに取り組み、字幕を中心に活躍。最近はミュージカル台本の参考訳なども手がけている。2025年は、JVTAが字幕制作で長年サポートする難民映画祭の広報サポーターにボランティアとして参加した。人権団体に勤務したこともある春木さんにとって、ぜひ関わりたい映画祭だったという。サポーターの中には、映像翻訳の話に関心を持ってくれる人や映画好きの人も多く、映画祭が終わった今でも難民をテーマにした映画やイベントの情報を交換するなど映画祭を超えたつながりができたと振り返る。今年も広報サポーターとして活動中だ。

「翻訳者になるのに年齢は関係なく、遅すぎることはありません。映像翻訳のニーズは幅広いため、過去の経験や知識が作品の解釈や調べものに活かせます。遅咲きのデビューでも日々、未知の分野の作品にワクワクできる仕事です。」(春木美果さん)

春木さんの体験談は、「映像翻訳者は、これまでの経験や知識を活かせる職能」ということを実証してくれた。年齢を重ねたからこそできる解釈や表現もあるはずだ。「いまから始めるのは遅いかな?」と迷っている人もぜひ挑戦し、自分の得意分野や経験を活かして活躍してほしい。

◆春木美果さん

アメリカ留学時代にNPOの活動に関わり、帰国後は人権に関する取り組みやNPO運営支援、大学で学生の国内外のボランティア活動を支援する活動などに従事。JVTAの英日映像翻訳コースおよびロジカルリーディング強化コースを受講後、2025年にプロデビュー。現在は、ヒューマンドラマやライフスタイル、アワード番組などの映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの字幕を手がける。今後は、平和やサステナビリティに関する作品のほか、様々な国や町の文化やグルメの紹介、そして大好きなインド映画やアートなどに関する作品、さらに吹き替え翻訳にも多く携わることが目標。

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