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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第144回 “NEAGLEY”(and “REACHER”)

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第14<strong>4</strong>回 <strong>“NEAGLEY”(and “REACHER”)</strong>
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第144回“NEAGLEY”(and “REACHER”)
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 
予告編:『ニーグリー』 本予告

 
お待たせ! “Reacher”からのスピンオフ!
“Reacher”(2022~)はAmazon Prime Videoの代表作で、同時にこの10年間でも屈指のアクションドラマ。
“Neagley”は“Reacher”からのスピンオフ。ジャック・リーチャーの右腕だったクールで頭脳明晰な戦闘マシン、フランシス・ニーグリーの活躍を描く、キレッキレのアクションスリラーなのだ!
 
(※)“Reacher”に関しては、配信開始当時に絶賛する記事を某同人誌に投稿したため、本ブログでは紹介を控えた経緯がある。2つのドラマは切っても切れない関係なので、本稿では併せて取り上げる。
 
‘チーム・ニーグリー’誕生!
—イリノイ州シカゴ
ニーグリー(マリア・ステン)はリーチャー(アラン・リッチソン)の助けを借りて、誘拐された少女を無事に救出した。リーチャーはまた放浪の旅に戻っていった。
 
ジャック・リーチャーは元陸軍少佐(“major”)で、MP(米国陸軍警察)のエリート部隊を率いていた。フランシス・ニーグリーは当時曹長(“master sergeant”)で、彼の最も有能な部下だった。
 
現在ニーグリーは大手探偵事務所のP.I.(私立探偵)だ。独身で他人に打ち解けず、自宅で余命わずかな父親の世話をしている。彼女は接触恐怖症で、人に触ることと触られることを極度に嫌う(例外は敵を殴るときだけ)。
 
ニーグリーの数少ない友人トミーが深夜にハイになり、全裸で列車にはねられた。即死だった。
トミーの両親を弔問したニーグリーは、彼がここ数年「エコー・キャニオン農場」というカルト集団で過ごしていたことを知る。
 
ハドソン・ライリー(グレイストン・ホルト)は、シカゴ警察殺人課の刑事だ。腕利きだがクライム・ファミリー出身のため、署内では信用されず蔑まれている。
 
ニーグリーとハドソンは、トミーが死んだ夜の防犯カメラの映像を見て、目撃者を発見する。ストリートキッドのキノ(ジャスパー・ジョーンズ)だ。キノの証言から、エコー・キャニオンへの疑惑が沸き上がった。
 
トミーの遺品を受け取りにエコー・キャニオンを訪問した帰りに、ニーグリーは命を狙われる。余計な質問をし過ぎたようだ。
 
ニーグリーはシカゴの街を熟知するキノを雇い、探偵志望の助手レネー(アデライン・ルドルフ)にリサーチを命じた。ニーグリーはハドソンの協力を得て、エコー・キャニオンの捜査を始める。
こうして、‘チーム・ニーグリー’が誕生した。
 
だが、捜査は単なるカルト集団の蛮行にとどまらず、巨大企業絡みのグロテスクな陰謀へとつながっていく!
 
“Meet the Team Neagley!”
マリア・ステンは2008年ミス・ユニバースのデンマーク代表。“Reacher”(S1-S3)のニーグリー役で注目され、洗練された魅力と高い演技力で本作のタイトルロールを勝ち取った。走る姿は優れたアスリート、銃器の扱いも巧みで、アクションにも切れがあり、クールなP.I.に見事にフィットした。
 
ハドソン役のグレイストン・ホルト、キノ役のジャスパー・ジョーンズ、レネー役のアデライン・ルドルフともに知名度が低く(というよりゼロに近い)、初登場時の印象も薄い。だがこの3人がチーム・ニーグリーとしてまとまった時、互いに強力なケミストリーが働き、それぞれの好感度と存在感が爆上がりする。
 
ゲスト出演したアラン・リッチソンは“Reacher”で大ブレーク。原作のリーチャーは、身長195センチ、体重113キロの巨漢、フツメンのヤンキースファンで、‘シャーロック・ホームズの頭脳を持つ一人だけの軍隊’だ。リッチソンはあつらえたようにハマった(彼は身長約191センチ、体重も100キロを超える)。
(映画版でトム・クルーズが演じた小柄なリーチャーは、ファンには著しく不評だった。)
 
“FROM THE WORLD OF REACHER”
クリエーター(兼製作総指揮・共同脚本)はニック・サントーラとニコラス・ウートン。サントーラは“Reacher”のショーランナーで、ウートンは刑事ドラマの聖典“NYPD Blue”の脚本でエミー賞を受賞している。
 
リー・チャイルドによる世界的ベストセラー『ジャック・リーチャー・シリーズ』は、弟アンドリューとの共著を含めて30冊以上ある(筆者は全巻読んでる!)。ニーグリーは数冊にしか登場しないが、極めて印象的なキャラ。
本作のニーグリー像とその細部の人物設定、副キャラ、オリジナル・ストーリーは、ほとんどサントーラとウートンが創り上げたものだ。
(尚、製作総指揮に名を連ねるリー・チャイルドは、両作品でカメオ出演している。)
 
サントーラとウートンはマリア・ステンの美貌とセックスアピールを封印し、ラブシーンも一切なし(接触恐怖症の設定が効いている)。徹底してニーグリーを頭脳明晰な戦闘マシンとして描いた。そして、その無表情の奥に隠された過去や孤独を垣間見せることで、ステンの新たな魅力を引き出した。
 
ニーグリーとリーチャーの関係は常にプラトニックで、共に孤独を好み、価値観を共有し、深い信頼と絆で結ばれた親友同士だ。お互いに必要があればいつでも駆けつける。
博識なアナログ人間のリーチャーに対し、ニーグリーはITと金融犯罪に精通したテック系。放浪しながらトラブルに見舞われるリーチャーとは異なり、ニーグリーはシカゴに居を構え、期せずして自身の捜査チームを持つことになる。
 
ストーリーは、チーム・ニーグリーの絆、捜査プロセス、切れ味鋭いアクション、ニーグリーの過去が絶妙のさじ加減でブレンドされている。パイロットの冒頭から引き込まれ、後半はカルトリーダー、悪徳警官、凄腕の殺し屋ペアも参戦し、一気観状態に陥る。
エンディングはストレスなく感動的で、シーズン2への布石も抜かりなく打たれている。
 
“Reacher”は現在シーズン4を配信中。本作から観てニーグリーのファンになった人には、“Reacher”のシーズン2もお勧めだ。
 
本作は単なるスピンオフからステップアップして、本家と対等なシリーズに発展していくはずだ。
“Neagley”はクールで頭脳明晰な戦闘マシン、フランシス・ニーグリーの活躍を描く、キレッキレのアクションスリラーなのだ!
 
(※)“Neagley”の発音は「二―リー」に近いが、翻訳本の表記に合わせたのだろう。
(※)フランシス・L・ニーグリーは、チャリティー・オークションで原作者リー・チャイルドの「登場人物に自分の名前を使う権利」を落札した人で、カリフォルニア州に実在するミステリーファンだ(どうでもいいか)。

 
原題:Neagley
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2026年9月16日
話数:8(1話 41-57分)

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。