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JVTAが英語字幕を担当 アニメーション映画『音楽』がカナダの映画祭でグランプリを受賞!

JVTAが英語字幕を担当 アニメーション映画『音楽』がカナダの映画祭でグランプリを受賞!
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アニメーション映画『音楽』(岩井澤健治監督)が、カナダで開催された第43回オタワ国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門でグランプリを受賞しました! JVTAは同映画祭出品のための英語字幕制作をサポート、修了生の磯貝さおりさんが字幕を手がけました。この話題作がいよいよ2020年1月11日(土)から劇場公開されます!

 
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※『音楽』より ©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 
原作は、大橋裕之氏による「音楽と漫画」。楽器を触ったこともないのに思いつきでバンドを始めた不良学生たちの日常が描かれています。特筆すべきは、岩井澤監督が個人で制作したということ。すべて手書きの作画は4万枚を超え、実に7年もの期間を費やした力作なのです。さらに実写の動きをトレースする“ロトスコープ”という手法を採用し、リアルな動きを再現。臨場感がありながら、温かみのある映像となっています。

 
豪華な声優陣も話題です。主役の研二役は、ミュージシャンの坂本慎太郎さん。同級生の亜矢役は、女優やファッションモデルとして活躍する駒井蓮さん。そのほかにも、竹中直人さん、平岩紙さん、芹澤興人さん、前野朋哉さんら俳優陣が名を連ねています。

 
★受賞後、プロデュースをされた映画監督の松江哲明さんからJVTAにメッセージを頂きました!

「オタワでは翻訳が作品の魅力を最大限に伝えている、と実感できる上映でした。その証拠に『音楽』には圧迫するのが大好きな「アッパくん」というキャラが登場するのですが、この子が「圧迫させろー」(HEY! LET ME SQUEEZE YOU.)と男性に迫り「やめろ! 警察呼ぶぞ」(Stop! I’ll call the police!)と抵抗されると、冷静な顔で「それは止めろ。警察とか、圧迫感はんぱないだろ」(THE POLICE WILL ENFORCE, WITH MAXIMUM SQUEEZE, YOU FOOL.)と答えます。
と、こうやって日本語で説明しても面白さを伝えるのが難しい場面なのに、劇場では爆笑が起きたのです。大橋裕之さんのシュールな笑いが海を越えた瞬間、私は観客と共に笑い、「磯貝さん、そしてJVTAありがとう!!」と心の中で叫びました。」(松江哲明さん)。
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※『音楽』より ©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 

英語字幕を手がけた修了生・磯貝さおりさんにこの作品の魅力や英語字幕の工夫を聞きました。

 
◆受賞を聞いた時のお気持ちを聞かせてください!
まずは、おめでとうございます! オタワ国際アニメーション映画祭では今年、長編部門には7作品がノミネートされ、日本勢は本作品と『海獣の子供』、またアヌシー国際アニメーショングランプリ作品『I Lost My Body』などもある中、まさに快挙です。授賞式の時間帯はそわそわしていましたが、第一報を頂いたときは拍手で喜び、その日は祝杯をあげました!

 
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※会場の岩井澤健治監督と監督のイラストです。

 
岩井澤監督及び松江プロデューサーから、「こちらが意図した部分も想像以上の爆笑が起き、とても盛り上がりました。上映後の興奮も伝わってきました」とのお言葉をいただきました。字幕が多少なりとも海外の観客への橋渡しの役割をすることができたわけですから、字幕翻訳者としては嬉しい限りでした。

 
◆この作品の魅力はどんなところですか?
4万枚の作画を手描きで作り上げられた本作品には、CGによる作品と比べ、映画全体に手作りの温かさやキャラクターへの愛情、ある一種のノスタルジアが感じられます。一方で、ロトスコープ(モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法)が、リアルでダイナックな表現で映画を盛り上げます。野外コンサートのシーンでは、実際のロックフェスティバルの会場や演奏をもとに描かれており、1970年代のプログレシブロックを思い出させるような臨場感あふれる演出を楽しめます。その反対には、シュールでサイケデリックな映像もあり、豊かな表現法は見逃せません。二次元的手法と三次元的手法を同時に楽しめるわけです。ストーリーの起承転結はシンプルかつ無駄がなく、大変スピード感がある中、主役の研二をはじめとする個性豊かなキャラクターが見事に演出され、感動、笑い、興奮というエンターテインメントの要素が発揮されているのがこの映画です。

 
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※『音楽』より ©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 
◆英語字幕を作るうえで悩んだり、工夫したりしたポイントを教えてください。
悩んだのはまさに、冒頭のメッセージで松江監督が例に挙げてくださった場面。漫画原作者である大橋氏独特のシュールなユーモアが感じられる「アッパくん」と中年の男性とのやり取りです。宇宙人のようなキャラのアッパくんと人間の男性の区別をつけるために、アッパくんは大文字斜体、男性は通常斜体という書き分けをしました。冒頭から10分も経っていないのに、爆笑が起こり観客の心を掴んだと伺い、嬉しかったですね。

 
◆音楽がテーマだけに、歌詞の対訳も大変だったのでは?
フォークミュージック、ロック音楽を合わせると4曲ほどの歌詞を訳しました。1曲は演奏者ご本人からのコメントもいただき、かなり何度もやり取りがありました。野外コンサートでの「森田君」のロック音楽では、歌詞、音感、リズム感を考慮する中、「ばくち」という音感を残しながら、その意味も英語でも伝わるように工夫しました。
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※『音楽』より ©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 

♪君の横顔とてもステキだったから
Your silhouette looked so wonderful

 
僕は晩からバクチ打ちながら うわの空
I am banging the odds tonight,
thinking of you

<省略>

♪晩からばーばー昼は寝てるぜー
Bar bar bucking the odds tonight,
Having siesta

 
晩からばーばー
Bang, bang, bar, bar

 
うーうー 
Woooooooo

 
くっち
Kucci!

 
※(劇中の演奏曲の歌詞より引用)

 

 
◆登場人物それぞれの魅力を伝える工夫もありそうですね。
キャラクターの特色をいかに出すかという点でも工夫いたしました。例えば、主人公の研二は不良高校生で他校からも恐れられているのですが、しゃべりだすまで独特の長い間があるなど、“微笑ましいほどの間抜けさ”がとても可愛らしいのです。バンド仲間の太田とベースのヘッド部分についたチューニングペグについて話すこんな場面があります。

 
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※イメージ

ああ、あれのことは俺もずっと考えていたんだが
Yes, I was wondering about that too.

 
あのつまみは回して音を…。
Tuning the knob makes the sound…

 
ビヨーンってするためのものなんじゃないか
go “boing” maybe.

 
その後、現れた亜矢にライバル校とのケンカをそそのかされた研二はさらにこう話します。

 
そうだ、今からビョーン奏法について研究だ
Yes, I must study
the boing technique.

 
「ビョーン奏法」という面白い表現と、研二のぶっきらぼうでぼそっとした口調を考えながら英語字幕も作成しました。

 
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※音楽より ©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 
◆実写とアニメ、翻訳するうえで何か違いを感じましたか?
今まで『あなたを待っています』(※『音楽』原作の大橋裕之氏が主演、松江哲明氏がプロデュース)や『カランコエの花』など、実写映画の字幕を担当することが多く、長編アニメは初めてでした。シュールレアリズム、ロトスコープ技法によるダイナミズム、キャラクターに対する能動的愛情表現等がアニメならではの面白さと思いました。またシンプルかつ明白なストーリー、その展開の速さや動き、間の取り方にも、実写にはないものがありました。ラストのクライマックスに向かって、研二がライバル校のギャングたちを振り切って全力疾走するシーンがあるのですが、カナダでも笑いが起こり、会場がとても盛り上がったそうです。やはり、グランプリを受賞される作品というのは、起承転結が明確、かつ周到な段取りにより、観客をクライマックスへと導いているのではないかと思いました。

 
◆日本では2020年1月から劇場公開。今後の海外での展開も楽しみですね。
日本のアニメ・漫画は浮世絵から脈絡と引き継がれた財産と思っております。京アニの悲劇に多くの励ましの声が寄せられたように、世界から愛されていることは事実です。今回一枚一枚手描きで描かれたアニメーションは意味があり、よりグローバルに上映していただきたいと思います。映画を観ていただくと分かるのですが(字幕者でなければ)楽しく元気がでます!これからも、微力ながら日本のアニメが世界に共有されるよう、字幕を通して貢献させていただければ幸いです。最後に、全力でサポートしてくださった石井ディレクターとJVTAに心より感謝いたします。

 
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©大橋裕之・太田出版/ロックンロール・マウンテン

 
関係者の皆さん、おめでとうございます。
◆『音楽』公式サイト  http://on-gaku.info/

 
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