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『Peter Barakan’s Music Film Festival 2023』が開催中! 音楽作品の字幕制作秘話を紹介

『Peter Barakan’s Music Film Festival 2023』が開催中! 音楽作品の字幕制作秘話を紹介
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9月1日、角川シネマ有楽町で『Peter Barakan’s Music Film Festival 2023』が開幕し、ピーター・バラカン氏が選んだ音楽映画31作品が一挙上映中だ。ビリー・ホリデイ、ザ・バンド、ジョン・レノン、ザ・ローリング・ストーンズ、ビー・ジーズなど、豪華なラインナップ。このうちの2作品の字幕をJVTAの修了生、野村佳子さんと岡崎はなさんが手がけている。これまで、多くの音楽ドキュメンタリーやライブ映像の翻訳、歌詞対訳を手がけてきたお2人に、音楽作品の字幕制作秘話を聞いた。

 

◆『Dance Craze /2TONEの世界 スカ・オン・ステージ!』
字幕翻訳:野村佳子さん

Dance Craze
©︎ Chrysalis Records Limited.

【作品の見どころ】
『Dance Craze/2 Toneの世界 – スカ・オン・ステージ!』は、1980年に流行したスカ・リヴァイヴァルの熱狂を6組のバンドのライブ映像で捉えたドキュメンタリーです。スカは1950年代にジャマイカで誕生した音楽ですが、それが移民を通じてイギリスに渡り、1970年代後半にパンクと融合されて生まれたのが2トーンです。2トーンという言葉は、ザ・スペシャルズのレーベル“2トーン・レコード”から来ていて、ザ・スペシャルズのようなジャマイカ系移民と白人の人種混合バンドに由来しています。当時イギリスでは不況が続いており、不満の矛先が移民の人々に向きがちだった中、黒人も白人も一緒に踊れる音楽をという思いの上に、レーベルは設立されたのです。そういう経緯を知ると、見え方や聴こえ方がまた違ってきますよね。(野村さん)

 

【歌詞翻訳の前に社会的背景をリサーチ】
「本作の字幕は9割が歌詞だったので、訳すにあたりまず行ったのは、当時の社会的背景を詳しく知ることでした。というのも、若者たちの社会に対する不満や怒りから生まれた音楽は、何気ない日常を描いているような歌詞でも、メッセージが込められていることが多いからです。“この言葉は何かを隠喩しているのか?”と見落とさないように、でも深読みしすぎないように気をつけました。」(野村さん)

 

【言葉のトーンやカラーをバンドごとに差別化】
「今回は6組ともカラーが異なるので、それぞれのバンドの特徴をとらえることにも注力しました。2トーンの代表格であるザ・スペシャルズ、全員女性のボディスナッチャーズ、特徴的なサウンドのバッド・マナーズなど多岐にわたっているので、言葉のトーンの差別化もさりげなく意識しています。」(野村さん)

 

【歌詞とメロディーがうまく溶け込む字幕を演出】
「これはどの作品にも言えることですが、歌詞を訳す時は、聞こえてくる歌詞やメロディーに字幕がうまく溶け込めているかを重視しています。楽曲に浸りながら、リズムにノリながら、自然と字幕が頭に入ってくるか。音楽の邪魔をするような字幕は、私が観客だったら絶対にイヤなので、それだけは極力避けるようにしています。今回はスカというリズムが何よりも重要なジャンルなので、結構そこは苦戦しました。

 

劇場で観る皆さんには純粋に貴重なライブ映像を楽しんでもらいたいですね。自然と体がリズムを刻んでしまい、じっと座っているのがつらくなるはずです(笑)。また2トーン・スカならではのファッションも見逃せません。個人的にはマッドネスがオススメ。スカが好きな方、気になる方、夏の疲れをぶっ飛ばしたい方はぜひ劇場に足を運んでください。」(野村さん)

 

◆『Dread Beat and Blood/ダブ・ポエット リントン・クウェシ・ジョンスン』
字幕翻訳:岡崎はなさん

 

Dread Beat An' Blood
© 1979 The British Film Institute

【作品の見どころ】
『Dread Beat and Blood/ダブ・ポエット リントン・クウェシ・ジョンスン』は、ジャマイカ出身で11歳の時にイギリスに移住して活躍する詩人、リントン・クウェシ・ジョンソンの初期である70年代の姿を捉えたドキュメンタリー作品です。レゲエのリズムにのせて朗読するスタイルで、現在もコアなファンがいるアーティストです。歌詞は人種差別など社会的な内容が多いので、当時のイギリスの時代背景も描かれており、リサーチを重ねました。」(岡崎さん)

 

【「ブラックミュージックが好き」のアピールが多くの仕事に繋がった】
「元々、レゲエやヒップホップ、R&Bなどブラックミュージックが好きで、JVTAを修了時にアピールしたのをきっかけに、こうしたジャンルの作品の翻訳を沢山いただきました。ほとんどの作品がスクリプトなしなので、聞き取りができたのもお声がけいただいた理由かもしれません。馴染みのないジャンルに取り組む際は、まずリサーチで曲を聴き、いろいろな記事などを見てその作品に浸らないと字幕にその世界観が出せません。その点、好きなジャンルはすでにある程度の知識や世界観を知っているので楽しく取り組めます。どんなことでも好きな分野がある人は絶対にアピールしたほうがいいと思います。」(岡崎さん)。

 

【ニッチなジャンルを訳す時はリサーチが特に大切】
「この作品は、アフリカの言語と英語が融合したジャマイカン・クレオール(ジャマイカン・パトワ)で歌われています。好きなジャンルとはいえ、単語や語彙が英語とは少し違うので、聞き取りに苦労することも多々あります。このアーティストの場合は詩的で知的な作風なのでスラングなどが少なく、尺にも余裕があったので比較的訳しやすく、原音に合わせて同じ言い回しで日本語でも揃えたり、ルビをふって語感でリズム感を見せたりするなど工夫をすることができました。

 

自分に馴染みのないジャンルの時は、まずリサーチでさまざまな記事を見て知識を深めるのですが、ニッチなジャンルの場合、個人の書いたブログなどがヒットすることもあり、複数の情報を集めて裏どりに苦労することも。日本語のサイトが少ない時は英語やフランス語のサイトも利用するほか、同じジャンルの日本人アーティストの曲やインタビューをリサーチして、日本ではどのような言葉が使われているかを参考にすることもあります。」(岡崎さん)

 

【行間や曖昧さを伝える難しさ】
「歌詞の訳でいつも悩むのは、抽象的な詩をどこまで訳すかいうこと。リサーチをする中で、このことについて語っているのではないかという推測ができても、翻訳者の勝手な解釈で言い切ってはいけない。オリジナルの表現がいくつかの解釈ができるのなら、訳詞にも曖昧さを残して視聴者の理解に委ねることも大切です。これは歌詞を訳すうえで常に意識している点でもあり、難しいポイントです。実は私の母もJVTAの修了生で翻訳者なので、意見を求めることもあります。翻訳者は1人で作業することも多く、同じ翻訳者同士で客観的な意見を聞けるのは有難いですね。

 

リントン・クウェシ・ジョンスンの原点ともいえる作品を観られる貴重な機会。ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。」(岡崎さん)

 

『Peter Barakan’s Music Film Festival 2023』では、このイベントでしか観られない貴重な作品もラインナップされている。音楽好きな人はもちろん、今後、音楽作品の翻訳に携わりたいという皆さんもどうぞお見逃しなく。字幕にも注目してほしい。

 

◆『Peter Barakan’s Music Film Festival 2023』

2023年9月1日(金)―9月21日(木)
角川シネマ有楽町
https://pbmff.jp/

 

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