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【ポーランド映画祭にJVTAが字幕で協力】ポーランド出身ディレクターがおすすめの3作品を紹介

【ポーランド映画祭にJVTAが字幕で協力】ポーランド出身ディレクターがおすすめの3作品を紹介
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今年は、日本とポーランドの国交樹立100周年。現在開催中のポーランド映画祭では、巨匠アンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキーから、ここ数年ポーランドで話題となった最新作まで新旧の名作が上映されています。JVTAは今年も字幕制作で協力し、3本の日本語字幕を修了生が手がけています。
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今回は、JVTAのポーランド出身のディレクターカイェタン・ロジェヴィチが注目する3作品を紹介します。
カイさん
ジェニ・ドブリー!(こんにちは)ポーランド出身のカイェタンです!
ポーランド人として日本の皆さんが母国の映画を見られる機会は大変嬉しく思います。今年のポーランド映画祭の上映作品から個人的にも思い入れのある3作品をご紹介します。

 
◆今年ポーランドで物議を醸している問題作
『ソリッド・ゴールド』

ソリッド・ゴールド
Amber Goldという実在のエセ金融機関のスキャンダルを題材にしたフィクション映画です。詐欺事件の事実をベースにしたフィクションですが、政治的なスキャンダルも含んでいることから、公開時期が二転三転し、ポーランドでは今年大きな注目を集めています。

 
Amber Goldは、Marcin Plichtaが2009年に設立。金に投資して破格の高配当をうたい、多くの出資金を集めましたが投資の実態はなく、その本質は無限連鎖講でした。Plichtaは過去にも何度も詐欺を働き、有罪判決を受けながらも刑罰は見送られてきた人物です。金融監督庁はAmber Goldが金融活動を行う許可を持っていないと警告していたものの、投資者はさらに増え続けました。2012 年には損失を被った投資家が政府に実情を訴え、裁判所などが動きますが、すでに清算を始めた同社は、同年倒産しました。被害者は1万8000から1万9000人にも及びます。裁判には2016年から2019年と実に3年の月日が費やされ、Marcin Plichtaと妻が有罪になりました。

 
Amber Goldが活動していた時期、ポーランドの与党は、「市民プラットホーム」でした。長い間詐欺が横行していたのに、なぜ当時の政府や首相が積極的に動かなかったのかと非難を浴びています。
 
この過程を映画化したのが『ソリッド・ゴールド』です。上映が延期になってきた背景には政治があります。2015年に「市民プラットフォーム」が選挙に敗れて野党になり、現在は敵対する「法と正義」という政党が与党になっています。そのため、政治的なプロパガンダに利用されている可能性があると指摘されているのです。直接非難はしていないものの当時の政治家の不十分な対応などを示唆する内容になっており、現在の与党がそれを利用していると見方があります。
当初は7月5日の予定だった公開が見送られ、その後は10月11日という話もあったものの、13日に選挙を控えていたことから、明らかにプロパガンダの意向があるとされ、監督側や製作側の想いも考慮した上で選挙後の18日に変更。しかし、その後も公開されず、現在は11月下旬の予定になっています。

 
ちなみこの映画の予算の3分の1をポーランドの公共放送「ポーランド・テレビ」(TVP)が算出し配給権を得ており、国内では大きな話題となっています。まさに今ポーランド国内が注目する1本です。

 

◆ポーランドでジャズ好きなら誰もが知るアーティスト
『コメダ・コメダ』

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コメダは、「ポーランドでジャズ好きな人なら知らない人はいない」というピアニストで作曲家です。私も個人的に聴いていました。私はジャズなどの影響が強い街で暮らし、父も音楽に携わっていたので、コメダは身近な存在でした。でも実は50年も前に亡くなっていたことを、今回初めて知りました。

 
彼は、一般的にロマン・ポランスキー監督の映画のBGMを作ったことで知られており、代表的なアルバムは『アスティグマティック(ASTIGMATIC)』(非点収差)です。
コメダは、幼いころから音楽学校で学びましたが、第二次世界大戦という時代に翻弄されて、医学の道へ進みます。医師になってもジャズへの想いは消えず、演奏活動は続けていました。当時は共産主義政権の下、多くを規制されている厳しい時代。ジャズはアンダーグラウンドなもので、友人宅などで演奏していたようです。スウィングやビバップ、ディキシーランドなどさまざまなスタイルに触れましたが、最終的にはポーランドでモダンジャズのパイオニアとなりました。60年代に入ってからは海外でも演奏し、映画の音楽も作り始めます。彼の本名はTrzcinskiですが「ジャズは俗っぽくて怪しい音楽」という評判から、同僚からジャズマンのキャリアを隠すために、彼はKomedaというあだ名を使っていたようです。

 
北欧でも人気があり、スウェーデンやデンマークで頻繁に演奏したほか、ヨーロッパ各国でコンサートを行いました。30代後半に不慮の事故で亡くなったのは残念ですが、短い人生ながら大きな功績を残しました。アメリカのジャズを復元するだけでなく、ヨーロッパ風のジャズを確立したと評価する声もあります。そんなコメダの生涯を追ったドキュメンタリーが日本で初公開。ジャズファン必見だと思います。

 
◆原作は20カ国語以上に翻訳された名作小説
『人形』

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ボレスワフ・プルスによる原作は、ポーランドでとても有名な小説で、20カ国語以上に翻訳されています(日本では2017年に翻訳版が初出版)。舞台は19世紀のワルシャワ。この小説には貴族、裕福な商人、下の階級の者などさまざまな階級の人が登場しますが、主人公は裕福な貿易商です。没落貴族の女性に恋をするものの身分の違いに苦悩します。彼は、冷酷なビジネスマンでありながら、若い頃は化学者を目指していた一面もあります。彼が科学に興味を持っていることでSFめいた部分もあり、私も学生時代に読みましたし、友人たちからも好まれていました。

 
18世紀末は、ポーランドがドイツ、オーストリアとロシアに分割され、地図上にポーランドがなくなってしまいます。しかしだからこそ、愛国心が高まり熱を持ってポーランド文化が作られた時代でもありました。そういう時代背景を知ると、作中にユダヤ人、ドイツ人などさまざまな人物がでてくる意味が分かると思います。国が存在しないような状況なのに、貴族は遊び暮らし、商人層は裕福だが無意味な貴族の生活を追い求めるという皮肉が描かれており、社会の構造をタテにもヨコにも深く分析しているのが魅力といえるでしょう。
 
監督のヴォイチェフ・イエジー・ハスは、第2次世界大戦後から、自分のキャリアを築き始めました。共産主義の時代には政府が好みそうなドキィメンタリーを作っていた時期もあります。クラクフの芸術学校を卒業後、画家を目指していましたが、あまりキャリアを残せず、やがて映画を作り始め才能を開花させました。シュールで幻想的で細かいところまでこだわるのがハスのスタイルです。代表作『サラゴサの写本』(The Saragossa Manuscript)は歴史ファンタジーで、1960年代のポーランドを代表する1本。私の父が一番好きな映画でもあります。

 
映画『人形』では、セリフなど原作の根本的なところはきちんと踏襲されながらも、ハス独特の幻想的なシーンもあります。主人公が落ち込んでいる場面では動物の死骸をおいて街が腐っていることを象徴したりしています。一方で美術的に優れていながら、長い原作を153分の映画にしたことで、かなりの登場人物やエピソードが省略されていることから、評価は意見が分かれているようです。

 
この映画は50年前の作品ですが、その後もテレビドラマ化もされるなど本国では誰もが知る名作です。この機会にぜひご覧になってみてください。

 
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ポーランド映画祭
東京都写真美術館ホール
2019年11月10日(日)~11月23日(土祝)
※11月11日(月)・18日(月)休館
出町座(京都)
2019年11月9日(土)~11月22日(金)
※11月19日(火)休映
公式サイトhttp://www.polandfilmfes.com/

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