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TWO VOICE 映像翻訳者×映画監督『君の鳥はうたえる』

TWO VOICE 映像翻訳者×映画監督『君の鳥はうたえる』
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映像翻訳者の醍醐味の一つが、劇場公開映画の仕事。ここでは国内だけでなく「ベルリン国際映画祭」「ニッポン・コネクション」(ともにドイツ)、「キノタヨ現代日本映画祭」(フランス)など世界中の映画祭で上映されている『君の鳥はうたえる』の英語字幕翻訳を手掛けた修了生・田村麻衣子さんと、同作の監督・三宅唱さん二人の声をお届けします。
 


 

<ストーリー>
函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで共同生活を送っていた。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子(石橋静河)とふとしたきっかけで関係をもつ。その日から、佐知子は毎晩のようにアパートへ遊びに来るようになる。こうして、「僕」、佐知子、静雄の気ままな生活が始まった。佐知子と恋人同士のようにふるまいながら、お互いを束縛せず、静雄とふたりで出かけることを勧める「僕」。そんなひと夏が終わろうとしている頃、みんなでキャンプに行くことを提案する静雄。しかし「僕」は、その誘いを断り、キャンプには静雄と佐知子のふたりで行くことになる。次第に気持ちが近づく静雄と佐知子。函館でじっと暑さに耐える「僕」。3 人の幸福な日々も終わりの気配を見せていた。
 

映像翻訳者・田村麻衣子さん(『君の鳥はうたえる』の英語字幕を担当)
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男女の不思議な三角関係を通して、日常にある「普通」だけど「特別」な瞬間をリアルに描いている映画だと思います。印象的だったのは登場人物3人の心情、微妙な感情の変化、距離感、友情――が、言葉ではなく役者の表情や行動のみで表現されているシーンが多いこと。日本語特有の「間」や「行動」を英語で表現しようとすると、つい言葉数が多くなったり、説明的になってしまいがちなのですが、各シーンの雰囲気や空気感を壊さないよう、シンプルかつ短い言葉で的確に表現するよう心掛けました。
 

タイトルの由来となった『And Your Bird Can Sing』を調べて――
「僕」、静雄、佐知子の3人は言葉では多く語らないからこそ、それぞれの心情を理解するのに一番時間を使ったかもしれません。劇中で杏里さんの楽曲『オリビアを聴きながら』をカラオケで歌うシーンがあるのですが、歌詞も英訳することになり、純粋な歌詞の意味やこの歌が挿入された意味を考えながら訳していると、登場人物の心情とリンクしているなと感じたんです。そして、タイトルの由来となったビートルズの楽曲『And Your Bird Can Sing』の歌詞を調べていると、それはもう、さまざまな感情が絵に描いたように伝わってきて、一気にいろいろなことが腑に落ちました。これがなければ字幕もまた違ったものになっていたでしょうし、さまざまな角度で物語を解釈する大切さを実感しました。
 

英語字幕をJVTAで学んだきっかけは、私たちの世代のすばらしい日本映画を世界に届けたいという思いから。まさに、私が願っていたことが今回の作品を担当させていただいたことで実現しました。この想いは一層強くなり、さらに多くの作品を世界に広める手助けがしたいと決意を新たにしました。また、今回日本語ラップを含め歌詞の英訳にも取り組みましたが、とても奥が深く、興味深い経験となりました。『君の鳥はうたえる』を見るときは3人のさりげない表情の変化や目線を見逃さないよう注目してください。柄本佑さん、染谷将太さん、石橋静河さんの自然体な演技に引き込まれます。
 

映画監督・三宅唱さん(JVTAがアワードスポンサーを務める映画祭「ニッポン・コネクション」会場で撮影/インタビュー)
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今年ドイツで開催された世界最大級の日本映画祭「ニッポン・コネクション」では、英語字幕で観る観客の皆さんに挨拶する際「(登場人物の)彼らと友達になってください」という言葉を使いました。この映画は、男女の友情の物語。恋愛映画の形をしているけれど、実は友情についての物語だと思います。
 

終わりと始まりが恋愛にはあるけれど、友情の場合は、いつの間にか友達になっていて、年を取ってふと気づくと疎遠になっていたりする。友情というのは、実はあいまいなものだなと思っていて。そのことについて語った映画です。もう一つ、私は「映画を観る」ことは、“観る”というよりは映画に出ている登場人物と一緒に過ごすような感覚こそが醍醐味なのかな、と思っています。一緒に彼らと過ごすことで、友人のような距離感でこの物語を見てほしいと思いました。
 

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世界中で上映して、グローバルな字幕になっていることを実感した
私は英語話者ではないので詳しくは分かりませんが、映画を世界に向けて上映するには、ヨーロッパだろうが、北米だろうが、アジアだろうが、どこにでも通用する英語字幕でなければなりません。例えば、ニューヨーカーだけに通用する特殊な英語が登場したら他の国の人には伝わらない。でも、世界中の映画祭で上映したら、各国で同じような感想をいただいています。すごくグローバルな字幕にしていただいたんじゃないかな、と思っています。「英語字幕くらい自分でもできる」と語る人もいるのですが「プロなめんな!」って思いますね(笑)。
 

スタッフは皆対等。一緒に「映画のために」働いていきたい
学生の頃は、映画監督とは映画作りの中心、トップにいる存在のように思っていました。いざ自分がなってみると、監督もいれば役者もいて、配給・宣伝の人も、映画祭でセレクションをする人も、そして字幕翻訳を手掛ける人も――。皆、一本の映画に対してすごく対等にいることが分かりました。一人欠けるだけで、一人手を抜くだけで、映画は台無しになってしまいます。本当に、一緒に「映画のために」働ければな、と思います。
 

私が初めて映画祭を訪れたのは27歳の時。ロカルノ国際映画祭で海外での上映を経験した時に、ああ、映画の前では本当に、年齢も国籍も関係なく、ものすごくフェアなんだな、と感じました。作り手と観客が互いにリスペクトし合えるのが映画祭の面白いところです。映画を見せるって面白いです。
 

* * *
 

田村麻衣子●たむら・まいこ
日英映像翻訳科修了。映画業界でのキャリアを生かし、アテンド・撮影現場通訳や、映画の脚本の翻訳も多く手掛けている。
 

三宅唱●みやけ・しょう
1984年、北海道生まれ。主な監督作に『きみの鳥はうたえる』(2017)、『ワイルドツアー』(2017)など。最新作はNetflix版『呪怨』(2020年春配信予定)。
Twitterアカウント:@miyakesho
 

●映画『君の鳥はうたえる』オフィシャルサイト
https://kiminotori.com/

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