News
NEWS
eventinTYO

「妖怪」は日本のマンガを読み解くキーワード 翻訳のプロがその奥深さを英語で解説

「妖怪」は日本のマンガを読み解くキーワード 翻訳のプロがその奥深さを英語で解説
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

海外で人気の高い日本のコンテンツといえば、やはりマンガとアニメ。さまざまなジャンルがありますが、なかでも実は「妖怪」が一つのキーワードであることをご存じですか?

 
日本のマンガには、人と妖怪との物語で15年以上にわたり人気のある『夏目友人帳』をはじめ、『NARUTO -ナルト-』はきつね、『BLEACH』は鵺、『うしおととら』にはかまいたち、座敷『ぬらりひょんの孫』は首無、天狗、納豆小僧など日本のマンガには多くの妖怪が登場します。では妖怪とは何でしょうか? そこでJVTAでは日英映像翻訳に興味のある皆さんに向けて、「妖怪」にフォーカスした英語のパネルディスカッションを開催しました。ゲストとして登壇したのは、日英映像翻訳科の講師でマンガや日本映画のイタリア語訳、英訳で活躍するスタンザーニ・ピーニ 詩文奈さんとアメコミの魅力を伝えるため、翻訳やコラムの執筆などをしている柳亨英(あきひで)さん。司会はJVTA講師でアニメをこよなく愛する浅川奈美です。

 
0K9A4980 - コピー

 
まず「妖怪」という漢字を見てみましょう。どちらにも「あやしい」という意味があります。「妖」はattractive、suspense、suspicionといった艶めかしく魅力的なイメージで雪女などを彷彿させます。一方「怪」はscaryで不気味なイメージであり、恐ろしい姿をしたモンスターなどを想像させます。

 
0K9A5013 - コピー

 
詩文奈さんはイタリアのボローニャ出身。70年代日本のアニメは地元でもメジャーで『うる星やつら』(ラムちゃんは雷神)『妖怪人間ベム』などをよく見ていたそうです。海外では妖怪というとdemonやghost、spirit、monsterといった怖いイメージがありますが日本のマンガには一見普通の女子高生のようで実は九尾の狐など、姿は人間のようで実は妖怪というキャラクターが多く、怖いだけでなく魅力的だと話します。

 
0K9A5049 - コピー

 

一方、柳さんは、日本で妖怪とは身近で自然にそばにいる存在だと語ります。日本では、命のないものにも神が宿ると考えられており、妖怪は古くから伝わる民話などで伝えられてきました。お盆には先祖が帰ってくるという言い伝えがあり、「亡くなった肉親に会ったとしてもあまり怖いとは思わない」という文化的背景があるのも特徴です。

 
0K9A5005 - コピー

 
日本で妖怪の伝説が生まれたのは古く700年ごろ。そして江戸時代に挿絵入りの書物ができたことから、人々により明確なイメージが出来上がってきました。今日、妖怪といえば、やはり誰もが思い浮かべるのが、水木一郎氏の『ゲゲゲの鬼太郎』。猫娘、子泣き爺、ねずみ男、ぬりかべ、一反木綿などの妖怪を描いた漫画です。各地に昔から伝わる妖怪たちをキャラクターとしてビジュアル化したことで現代にも妖怪のイメージが定着してきました。海外では『フランケンシュタイン』もこうした例のひとつ。メアリー・シェリーのゴシック小説「フランケンシュタイン」を1930年代に映画化したことで、人々が想像するあのフランケンシュタインの容姿のイメージが今日まで一般的となったのです。伝説や小説の中だけに存在する妖怪が、メジャーな存在になった背景にはマンガや映画が大きな役割を果たしてきたといえます。

 
後半では、漫画のあるシーンの中で日本語のセリフを英語にしてみるミニレッスンを開催。全体の概訳をみながら吹き出しに入れるセリフを考えました。「この子を依代(よりしろ)にする」というセリフ一つにも、複数の案が出てきました。
「I’m possessing him.」
「I’m borrowing this child’s body.」
「I took over his body.」
「This kid is mine now, in my possession.」

 
0K9A4989 - コピー

 
参加者から質問があったのは、やはりオノマトペについて。日本語は擬音語、擬態語が多い言語ですが、音をそのまま英語にしても感覚の違いもあり、外国人には理解できません。プロであるお2人はイメージが湧く動詞に置き換えたり、文字の下に文章で解説したりする工夫をしていると答えていました。戦いの場面が多い漫画も技の名前などを訳すのがまさに至難の業。直訳しすぎてもいけないし、固有名詞としてそのまま出すべき場合もあり、悩みどころだといいます。

 
0K9A5095 - コピー

 
お2人の言葉で印象的だったのは、「翻訳の上で最も大事だと考えているのはやはり、文化を伝えること。言葉だけを訳すのではなく、生活の中で同じようなシチュエーションの時にどんな言葉を使っているかなどを常に見ておくことが自然な言葉選びのポイントだ」と話していたことです。例えば、「ちっ!」と舌打ちする場面では、自分の国でどんな表現をしているかを考えるのが近道です。それは英語の「Oh, my god!」「Oh, man!」も同じこと。「おお、男!」という訳ではないし、もっとそのシーンにあった日常的に使う表現を考えるのがコツです。今回は、妖怪というキーワードをひも解いたことで日本ならではの文化的背景を意識し、日英翻訳の面白さや苦労を垣間見たイベントになりました。日本のマンガに親しんでいる方はすでにこうした想像力が豊かなはず。日英翻訳はそんな皆さんのスキルを生かせる場なのです。

 
日英映像翻訳に興味のある方は、字幕体験レッスンをしてみませんか?
https://www.jvta.net/tyo/open-school/

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page