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発見!キラリ 「レンズを通して見える色」

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5月のテーマ:緑
 

皆さんは「原色」というと何色をイメージするだろうか? 赤色、青色、黄色、多くの人がこの3色を思い浮かべると思う。これらは「色の3原色」と呼ばれている。実は原色には「光の3原色」というものもあり、赤色、青色、そして緑色のことをいう。“red”“green”“blue”の頭文字をとった「RGB」という言葉に聞き覚えがある人は多いだろう。この「光の3原色」は、テレビ画面や液晶ディスプレイなどにも応用されており、テレビ画面をズームにしてみると、赤・青・緑のLEDが並んでいることが分かる。これらの隣り合う原色が網膜上で混ざり合うことで、違う色として脳が認識し、私たちは様々な色彩を感じるのだ。例えば黄色を表現したい時には赤と緑を隣合わせるなど、実際に表現したい色とは異なる色を使うことで、より鮮やかにその色を表現することができる。
 

これと同じような手法が絵画でも取り入れられている。モネやルノワールなど印象派と呼ばれる画家たちは、パレットやキャンバスの上で色を混ぜ合わせると色が濁ると考えていた。そこで「色」をより鮮明に表現するために、できるかぎり原色に近い色をキャンバスの上に乗せ、色そのものを混ぜ合わせるのではなく、離れて鑑賞した時に個々の色の組み合わせによって様々な色に見えるように描くことを試みた。光を感じられる絵画を生み出そうとしたその技法は、「色彩分割」や「筆触分割」とも言われている。その後、これをより科学的・論理的に実証しようとしたのが、新印象派といわれる画家たちだ。彼らは線ではなく細かい点の集合によって描く点描画という技法を確立した。印象派と新印象派の画家たちは、鑑賞者が部分的ではなく、絵画全体を捉えた時の印象を見据え、それが自分たちの伝えたいイメージとズレることがないように描く技を編み出したのだ。
 

私たちが日々取り組む字幕翻訳のスキルも、液晶ディスプレイや印象派の絵画の技法と似ている。かつて印象派や新印象派の画家たちは、鑑賞者の水晶体を通った光が網膜上で像を結ぶ時に違う色に見えることを想定して描いた。これは原音で言っているセリフをただ直訳するのではなく、時には原文とは異なる表現を使って意訳することによって、より明確にニュアンスを伝える字幕にも通じるところがある。異なる文化や言語を通して映像作品のセリフや作品の面白さを視聴者に余すところなく届けるという映像翻訳の仕事は、芸術にも通じる仕事だと私は思う。私たち映像翻訳者も画家たちの視点を見習い、字幕を通して映像を楽しむ視聴者に作品の魅力が最大限に伝えられるよう、あらゆる工夫をしていきたいものだ。
 

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Written by 星屋 優美 
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[JVTA発] 発見!キラリ☆  5月のテーマ:緑
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。

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