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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第71回 “COBRA KAI”(『コブラ会』)

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第71回 “COBRA KAI”(『コブラ会』)
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第71回“COBRA KAI”(『コブラ会』)
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     
    あの『ベスト・キッド』の後日譚がドラマになった!!!
    まず、本稿末尾の動画<今月のおまけ>を観て欲しい。‘84年の大ヒット作『ベスト・キッド』からのクリップで、冒頭と最後のシーンで戦っているのがダニエルとジョニー。ブロンドのイケメンが悪役のジョニーだ。

     
    “Cobra Kai”は、負け犬ジョニーの34年後の人生を笑いと感動で描く『ベスト・キッド』の続編ドラマ。
    『ベスト・キッド』未経験の人も楽しめる、宝物のように心に残る作品なのだ!

     
    “STRIKE FIRST, STRIKE HARD, NO MERCY”
    ―1984年12月19日、カリフォルニア州
    「オールバレー地区空手トーナメント:18歳未満の部 決勝」
    個人戦3連覇を狙う「コブラ会」のエース、ジョニー・ロレンス(ウィリアム・ザブカ)は、「ミヤギ道空手」所属で初出場のダニエル・ラルーソ(ラルフ・マッチオ)に屈辱の敗北を喫した。

     
    ―34年後
    50代になった今もジョニーは負け犬だ。寂れたアパートで朝からビールを飲んでいる。男好きの妻は、一人息子のロビー(タナー・ブキャナン)を連れて出て行った。ロビーは非行に走り、父親を馬鹿にしている。今日、ジョニーは修理工の仕事をクビになった。

     
    50代になった今もダニエルの人生は絶好調だ。街の名士になり、経営する自動車ディーラー「ラルーソ・オート」は繁盛している。ダニエルは共同経営者で才色兼備の妻アマンダ、美しいティーンエイジャーの娘サム(メアリー・マウサー)、ゲームおたくの息子アンソニーと豪邸に住んでいる。

     
    ある夜ジョニーがミニマートの前で夕食のピザをかじっていると、顔見知りの若者ミゲル(ショロ・マリデュエニャ)が不良グループに絡まれ始めた。見て見ぬふりをするジョニー。だがいじめは暴力にエスカレートしていく。ジョニーは仕方なく不良たちを撃退してミゲルを助ける。酔っ払いのさび付いた空手でも、素人相手なら勝負にならない。
    ミゲルは感激してジョニーに空手を教えて欲しいと頼み込むが、ジョニーは相手にしない。

     
    ジョニーは34年前の屈辱を未だに引きずっている。あの試合で人生が一変してしまった。街中に立つ「ラルーソ・オート」の大看板やテレビのCMでダニエルの顔を見るたびに、恨み辛みが沸々と湧き上がる。
    遂に自己憐憫に我慢できなくなったジョニーは、一念発起して空手道場「コブラ会」を復活させる。生徒はとりあえずミゲルだけだ。

     
    今、コブラ会のモットーがよみがえる。
    “STRIKE FIRST, STRIKE HARD, NO MERCY”

     
    ダニエルにとってコブラ会は今も「悪の帝国」で、これは看過できない。ジョニーとダニエルは34年ぶりに対立する!

     
    オジサン俳優2人は、50歳を超えてもう一花咲かせた!
    ウィリアム・ザブカは映画デビュー作でジョニー・ロレンス役を引き当て、『ベスト・キッド2』(1986)にも出演したが、その後は鳴かず飛ばず。わずかに‘80年代の傑作ドラマ”The Equalizer”(デンゼル・ワシントン主演『イコライザー』の原作)で、主人公ロバート・マッコールの息子を演じたくらいだ。現在54歳だがいい年の取り方をしていてカッコよく、本作の成功はザブカの魅力に負う部分が多い。

     
    ダニエル役のラルフ・マッチオは58歳、『ベスト・キッド』3部作で一世を風靡したものの、『いとこのビニー』(1992)が最後のヒット作だった。最近は”The Deuce”に準レギュラーの腐敗警官役で出演し、意外に渋い味を出していた。

     
    とにもかくにも、このオジサン俳優2人は、50歳を超えてもう一花咲かせたのだ!

     
    ジョニーの一番弟子となるミゲルを演じたショロ・マリデュエニャ、ジョニーの息子ロビー役のタナー・ブキャナン、ダニエルのキュートな娘サムを演じたメアリー・マウサーの3人が、堅実な演技と達者なマーシャルアーツのスキルで2人のオジサン俳優を盛り上げる。
    シーズン2では、マーティン・コーブが極悪非情のコブラ会創設者ジョン・クリース役で復活、またペイトン・リストが演じる女拳士トリーが参戦する。

     
    大好きになり宝物のように心に残る作品!
    “Cobra Kai”はオリジナル版への敬愛に溢れ、回想シーンでは『ベスト・キッド』のクリップが極めて効果的に使われる。34年後を描く続編に同じ主演アクター2人を起用し、悪役を主役に置き換えるというアイディアも秀逸だ。
    シーズン1の最終話で活写される白熱の空手トーナメントは、オリジナル版のシークエンスを逆手に取った見事な構成になっている。(ティーンエイジャーの大会が、防具なしでフルコンタクトって現実にはありえないけど…。)

     
    さらに、ミゲルとサムが恋人同士、ダニエルとロビーが師弟関係、サムとロビーが兄弟弟子、サム&ミゲル&ロビーが三角関係という構図は、面白すぎて目が離せない。

     
    ジョニーの生い立ち、息子ロビーへの思い、ミゲルとの絆、隠れていた素朴さや優しさ、昔のコブラ会仲間との友情、新たな恋、人としての成長が綴られ、回を追うごとにジョニーという男のキャラが厚みを増していく。一方、人生の師ミスター・ミヤギを失ったダニエルも、ヒーローとは程遠い欠点と悩みを抱える等身大の中年男として描かれる。
    『コブラ会』というタイトルは思いっきりダサいが、ウケを狙ったわけではない。コブラ会はジョニーの生きがい、人生、存在価値そのものなのだ。パソコンも使えないオールドスクールのジョニーのショボさを笑いながら、彼の人生を掘り下げていく脚本は、ヴィヴィッドでバランス感覚が絶妙だ。

     
    本作は、オジサン的感傷ドラマ、家族ドラマ、学園恋愛ドラマ、空手アクションドラマが混然一体となったエンターテインメント。各エピソードは24-37分とsitcom並みに短く、「もっと観たいのに」と思わせて終わる。だから気がつくとイッキ観状態に陥っている。

     
    “Cobra Kai”は、ノスタルジアにどっぷりと浸りながら負け犬ジョニーの贖いと再生を笑いと感動で描く、観ると大好きになり宝物のように心に残る作品なのだ!

     
    製作はYouTube Premium(元YouTube Red)だが、最近権利を買い取ったNetflixがシーズン1&2(各10話)を配信中。
    シーズン3の撮影は完了しているが配信は来年らしい。オリジナル版でジョニーとダニエルの”love interest”アリを演じたエリザベス・シューも出演か?

     
    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㊾
    Title: “The Moment of Truth”
    Artist: Survivor
    Movie:“The Karate Kid” (1984)

    曲名の“The Moment of Truth”は、日本公開時の原題でもあった。

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
    ◆バックナンバーはこちら
    https://www.jvta.net/blog/5724/


     

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