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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第86回 “ATYPICAL”(『ユニークライフ』)

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第86回 “ATYPICAL”(『ユニークライフ』)
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第86回“ATYPICAL”(『ユニークライフ』)
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     
    知らなかった!ハートウォーミング・コメディの“hidden gem”!
    言い訳するわけではないが(と言い訳しておくが)、これだけ配信ドラマが増えると、筆者が文字通り惰眠をむさぼる間に、傑作・佳作がレーダーから外れてしまう。本作は完全に見落としていて、慌ててイッキ観した。
     
    というわけで、お待たせしました。“Atypical”はNetflixオリジナル、自閉症スペクトラムの少年をめぐる夢、冒険、成長を描く、ハートウォーミング・コメディの“hidden gem”(隠れた傑作)なのだ!
     

    【atypical/eɪtípikl:型にはまらない、異常な、不規則な】(「ジーニアス英和大辞典」)
     

    “I’m a weirdo. That’s what everyone says”
    ―アメリカ北東部コネチカット州
    サム・ガードナー(キーア・ギルクリスト)は、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)の18歳の高校生だ。サムは変化が嫌いで、いつも同じ服を着て同じ食事を好む。光、ノイズ、混雑、ハグが大の苦手。空気が読めず、嘘とお世辞は言えない。ストレスがたまると頭を掻きむしり、かんしゃくを起こすこともある。当然学校では変人扱いされる。サムの親友はエジソンという名のカメだ。
     

    でも、抜群の記憶力とリサーチ能力のおかげで、サムの成績はクラスで3番だ(体育と倫理が苦手)。電気店でアルバイトをしているし、精緻な絵を描く才能もある。趣味はペンギンの観察で、暇があると水族館に行く。サムの究極の夢は、いつか南極大陸へ行くこと。最近は女の子とデートしたいと思っているが、サムにはとてつもなくハードルが高い。
     

    ケイシー(ブリジット・ランディ=ペイン)は、頼りになるサムの妹。長身のアスリートで陸上部のエース、サムの守護神でもある。最近義憤に駆られていじめっ子を殴り、停学になった。
    エヴァンというボーイフレンドができるが、ケイシーは次第に自分の性的指向に困惑するようになる。
     

    母親のエルサ(ジェニファー・ジェイソン・リー)は専業主婦で、自閉症児の親から成るコミュニティに参加している。サムの将来を憂慮するあまり過保護になり、自分が楽しい思いをすることに罪悪感を持つ。子供たちとも衝突してばかりだ。情緒不安定になったエルサは、ある日なじみのバーテンダーと浮気をしてしまう。
     

    ダグ(マイケル・ラパポート)は優柔不断だが理解ある優しい父親で、勤勉な救急隊員だ。結婚生活が倦怠期に入り、エルサとの距離感に悩んでいる。サムに対してはどう接していいのか分からず、パニクって失踪した過去がある。
     

    ガードナー家は、感情の起伏が激しい機能不全家族と化している。
    それでもサムは、ひたすらわが道を行く!
     

    ピタリとはまったアンサンブルキャスト!
    サムを演じたカナダ人アクターのキーア・ギルクリストは、ヘビメタバンドのボーカリストでもある。サムの素朴なおかしさと危うさを兼ね揃えた魅力と好感度は、ギルクリストの技巧に走らないフツーの演技に負うところが大きい。
     

    ケイシー役のブリジット・ランディ=ペインはこれが初の大役。エピソードが進むにつれてクールな魅力が爆発し、主役級の大活躍となった。私生活では、ノンバイナリー(自分の性別を認識しない考え方)であることをカミングアウトしている。
     

    エルサ役のジェニファー・ジェイソン・リーは、筆者の世代だとブリジット・フォンダと共演したサイコスリラー『ルームメイト』(1992)での怪演が忘れ難い。本作では、お節介なコントロールフリークだが、可愛くもセクシーにもなれるエルサを貫禄で演じた。
     

    ダグ役のマイケル・ラパポートは、見覚えはあるが名前が出てこないベテラン俳優だ。本役では、得意のもっさりとした演技で地味に笑いを取っている。
     

    脇役もユニークで多彩だ。
    サムのよき相談相手ジュリア(エイミー・オクダ)は、セラピストのくせにメンタルが弱い。サムの(カメのエジソンに次ぐ)親友ザヒード(ニック・ドダニ)は、常に的外れの仰天アドバイスを授ける。サムのガールフレンドとなる才媛ペイジ(ジェナ・ボイド)は、ハンドルを握ると狂暴化する。ケイシーの恋人エヴァン(グレアム・ロジャース)には窃盗で退学させられた過去があるが、実は繊細でとても優しい。
     

    登場人物のひとり一人がジグソーパズルのピースのようにぴたりとはまり、ケミストリー溢れるアンサンブルキャストを形成した!
     

    この機会を見逃さず、とびきりのハッピーエンドを楽しもう!
    ショーランナーのロビア・ラシードは脚本家としてスタートし、ニール・パトリック・ハリス主演でメガヒットしたシットコム“How I Met Your Mother”(『ママと恋に落ちるまで』)の制作でキャリアを築いた。まだ44歳だが、本作は彼女の代表作となった。
     

    サムのおかしな行動は笑いの源泉だ。だがセンシティブな題材なので、視聴者がサムを笑うことで罪悪感を持ったら、このドラマはゲームオーバーとなってしまう。その点は、脚本が絶妙のさじ加減でバランスを取っている。サムの家族や友人の言動を通して、変でない人間などいないこと、誰もが失くした純粋さをサムだけが持ち続けていることに気づかされる。実は最も自由なのはサムではないかと思えてくる。だからサムが恐怖や孤独と闘いながら、ガールフレンドを求め、自立しようとし、夢を追いかける姿に触発され、共感し、感動するのだ。
     

    一般的な自閉症スペクトラムは障害というより特性に近く、このタイプの人は想像以上に多い(筆者の家族にも一人いる)。彼らは社会が都合よく作ったルールや枠組み(特に企業・学校)の中では息苦しく、生きづらい。枠内に収まるか、少し外にはみ出るかのわずかな違いなのだが…。
    本作は、そんな主人公サムを温かい眼差しで正面から描く。各登場人物のキャラクター・アーク(人物の成長や変化の軌跡)は美しいほどで、優しい家族ドラマ、愉快な学園ドラマ、ユニークな恋愛ドラマの魅力を併せ持つ。
     

    “Atypical”は笑いながらサクサク観られて、ファイナル・エピソードにはとびきりのハッピーエンドが待っている。サムをめぐる夢、冒険、成長、家族の絆、友情を描くハートウォーミング・コメディなのだ!
     

    邦題は『ユニークライフ』で(このタイトルはいいね)、各話約30分 ✕ 全38話。本年7月にNetflixでシーズン4が配信されて完結した。この機会を見逃さず、年末年始にイッキ観してしまおう!
     

    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #61
    Title: “Rainbow Connection”
    Artist: Kermit the Frog
    Movie: “The Muppet Movie” (1979)

    驚くほどいい曲で、歌詞も味わい深い。
     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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    ※※特報
    同コラム執筆の土橋秀一郎さんがJVTAのYouTubeチャンネルに登壇しました!
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