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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第95回 “SHINING GIRLS”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第95回 “SHINING GIRLS”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第95回“SHINING GIRLS”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     

    今年の目玉だった歴史ファンタジー巨編、“House of the Dragon”(HBO/U-NEXT)と、“The Lord of the Rings: The Rings of Power”(Amazon Prime)が始まった。(本稿執筆時点で両作品とも第3話まで視聴。ともに10月中にシーズン1の最終話が配信される予定だ。)
     

    前者は“Game of Thrones”の前日譚で、タイトル通りドラゴンを多頭飼いするターガリエン家の世継ぎ争いが活写される。ストーリーは分かりやすく、迫力のドラゴンは絵になり、パイロット(第1話)から惹きつけられる。“so far so good”だが、オリジナルの’顔’だったピーター・ディンクレイジがいないのが寂しい。既にシーズン2の制作が決まっている。
     

    後者は映画3部作の数千年前を描くオリジナルの物語で、配信初日に世界で約2500万人が観たという。全5シーズンが予定され、「大谷エンゼルス」が余裕で買えるくらいの桁外れの総額予算が付いている。日本ではヨイショ記事ばかり目につくが、セリフは凡庸で、キャラクターは魅力に乏しい。まだまだ長大なストーリーの導入部なので、今後の展開に期待したい。
     

    この勝負、序盤戦は“House of the Dragon”の勝ち!
    閑話休題。以下が今月のおすすめ。
     


     

    戦慄のSci-fiミステリー・スリラーを体験せよ!
    エリザベス・モスをご存知か?
    彼女は現在、実力派アクター(※)の頂点に立つ。
     

    (※) 実力派アクター(筆者独自の定義):華はないが演技力と存在感で際立つアクターで、性格俳優とは一線を画する。代表的なのはロバート・デュヴァル、エレン・バースティン、最近ではジャレッド・ハリスなど。オスカーを持っていることもあるが、受賞作品を思い出せないことが多い。
     

    “Shining Girls”は、Apple TV+オリジナルによるモスの最新作。生き残った被害者がシリアルキラーに挑む、戦慄のSci-fiミステリー・スリラーなのだ!
     

    “At first, we find its shine, and then we take it away”
    ―シカゴ、1992年
    カービー・マズラチ(エリザベス・モス)は、シカゴ・サンタイムズの記録保管係をしている。元ミュージシャンの母親レイチェル(エイミー・ブレネマン)と、質素なアパートで二人暮らしだ。
    カービーは、6年前にミシガン湖畔で何者かに襲われて瀕死の重傷を負った。今でも、腹部に醜い十字の傷跡が残っている。
    彼女は犯人の声だけは覚えていた。
     

    あの事件以来、カービーは不思議な現象を経験する。時々時間軸が前後にずれたように、周囲の状況が変わってしまうのだ。例えば、自分が見慣れない服装や髪型をしている。ペットが変わっている。職場のデスクが移動した。アパートの部屋番号が違う。まるで記憶が部分的に削除されたようで、彼女はその間の出来事を思い出せない。
     

    ダン・ベラスケス(ヴァグネル・モーラ)はシカゴ・サンタイムズの記者だ。かつてはエースだったが、家庭内暴力とドラッグで身を滅ぼした。今も酒浸りで、上司のお情けでクビにならずに済んでいる。
     

    ある豪雨の日、市内の下水溝から女性の他殺死体が発見された。
    カービーは6年前の担当刑事に呼ばれる。今回の被害者の状況が、自分の時と酷似しているというのだ。カービーは犯人を探し出し、殺してやりたいと思っている。彼女はこの事件の担当記者となったダンに接触する。
     

    ハーパー(ジェイミー・ベル)はシリアルキラーだ。
    次の犠牲者を物色すると、滑らかだが鬱陶しいトーンで話しかける。ストーキングし、家宅侵入し、生活ぶりを観察する。すぐには殺さずにたっぷりと時間をかける。時間は彼の味方だ。
     

    ハーパーは次の獲物を決めていた。
    カービーのマンハントが始まった。
     

    「エリザベス・モス劇場」へようこそ!
    エリザベス・モスは、“The West Wing”(本ブログ第33回参照)で大統領の娘ゾーイを演じて頭角を現した。さらに、“Mad Men”で演じた野心家コピーライターのペギー役でブレーク。評価を決定づけたのが、ディストピア・ドラマ“The Handmaid’s Tale”(第46回参照)の主役ジューン役だ。モスはこの役で、エミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞に輝いた。エミー賞(主演&助演)だけで既に10回のノミネートを受けている。
     

    芯の強い女性を粘り強い演技で表現するのがモスの真骨頂。今回は、過去のトラウマと時間の歪みに苦しみながらも、執念でシリアルキラーを追い詰めていくカービーを、圧巻の迫力で演じた。本作はさながら「エリザベス・モス劇場」だ。
     

    ダン役のヴァグネル・モーラはブラジルの名優。見覚えがあると思ったら、何と“Narcos”でコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルを演じたアクターではないか。激ヤセしていてまったく気づかなかった。
     

    ハーパー役のジェイミー・ベルは、キュートな青春映画『リトル・ダンサー』(2000)の主役ビリーが懐かしい。最近では、『ロケットマン』(2019)で演じたエルトン・ジョンの盟友で作詞家のバーニー・トーピンが絶品だった。本作では、鮮やかな手際で殺人を続けるソシオパスを、薄気味悪いクールさをもって演じている。
     

    カービーの自堕落な母親レイチェルを演じたエイミー・ブレネマンは、“Judging Amy”の主演でブレークした。日本では“Private Practice”で顔なじみだ。
     

    “A survivor hunting a serial killer”
    原作は南アフリカの作家ローレン・ビュークスの同名小説。ショーランナー兼共同脚本のシルカ・ルイーザは、Amazonが制作中のドラマ“Blade Runner 2099”も手掛ける。
    本作の製作総指揮には、エリザベス・モスとレオナルド・ディカプリオも名を連ねる。
     

    この作品は荒唐無稽なホラ話ではない。Sci-fi的設定も時間軸を前後させる構成も、あくまで小道具だ。モスの“reveting performance”(「この役者以外には考えられない最高の演技」)を中心に据えて、重厚骨太に展開する。
     

    ストーリーをエネルギッシュに牽引するモスに対して、ベルの演じるハーパー像は異常性や残虐性を過度に強調することなく、やや斜に構えている。このコントラストが鮮やかで、モスがオーバーヒートしないよう巧みにバランスが取られているのだ。
     

    カービーが経験する超常現象は記憶障害なのか、それともタイムトラベルなのか?
    そもそもハーパーは何者なのか?
    エピソードの進行とともに、このふたつの疑問が膨らんでいく。その頃には、あなたはもう“binge-watch”状態だ。
     

    “Shining Girls”は、よくある猟奇的犯罪ドラマとは一線を画す、Appleブランドらしい地に足のついた一作。生き残った被害者がシリアルキラーに挑む、戦慄のSci-fiミステリー・スリラーなのだ!
     

    邦題は『シャイニング・ガール』(複数形の原題を安易に単数形にして邦題にする悪習、そろそろ止めませんか?)。
    Apple TV+オリジナルには、ロマコメ・ミュージカル“Schmigadoon!”、Sch-fiスリラー“Severance”、実話ベースのクライムドラマ“Black Bird”など、小粒で良心的な作品が多い。さらに、米国史上最悪の自然災害に見舞われたニューオーリンズの病院を描く実話ドラマ、“Five Days at Memorial”も超お勧めだ!
     

    原題:Shining Girls
    配信:Apple TV+
    配信日:2022年4月29日
    話数:8(1話41-59分)
     

    <今月のおまけ> <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #70
    Title: “Hold My Hand”
    Artist: Lady Gaga
    Movie: “Top Gun: Maverick” (2022)
     

    シャープな映像とエアタイトな脚本—トム・クルーズの真価を知らしめた史上最強の続編!
    (でも、ストーリーは『スター・ウォーズ』のデス・スター破壊シークエンスのような…ま、いいか。)
     

    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

    ◆バックナンバーはこちら
    https://www.jvta.net/blog/5724/


     

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    同コラム執筆の土橋秀一郎さんがJVTAのYouTubeチャンネルに登壇しました!
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