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【冬セミレポート】制作者の意図をくみ取り、ガイドするポイントを見極める

開催日時:2月22日(木)19:30~20:30 ※日本時間

登壇者プロフィール

ゲスト:川北ゆめき氏(映画監督)

1994年生まれ。神奈川県出身。中央大学入学と同時に映像制作を始める。中編映画『変わらないで。百日草』が、TAMA NEW WAVEやカナザワ映画祭などの多くの映画祭で入選を果たす。2018年に監督した長編映画『満月の夜には思い出して』は、映像と音楽の祭典 MOOSIC LAB 長編コンペティション部門に正式出品され、音楽を担当した大槻美奈が特別賞を受賞した。同作は、2019年に渋谷シネマ・ロサ、京都出町座などで劇場公開された。

2020年には、ヨコハマ映画祭で監督賞を受賞した城定秀夫監督『アルプススタンドのはしの方』のメイキング監督を務めた。

公式HP:合同会社ユメキラメクhttps://yume.kirameku.co.jp/

進行役:石原彩(日本語字幕ガイド制作ディレクター・講師)

日本映像翻訳アカデミー(JVTA)「バリアフリー講座」修了生。10年以上にわたり、劇場公開映画・アニメ・ドラマ作品の日本語字幕ガイド制作に携わる。

見えづらい人のための、映像作品の「画」が伝えている情報を言葉で説明する音声ガイドや、聞こえづらい人に「音」が伝えている情報を文字にして表示する日本語字幕ガイドの普及が進んでいる。このセミナーでは川北ゆめき監督が自身の体験を基に5年かけて制作した映画『まなみ100%』を題材に、監督が作品にこめた思いを聞きながらガイド制作の裏側を解説し、参加者もセミナー内で字幕ガイド作りに挑戦した。この日、取り上げたのは、主人公の「ぼく」と学生時代に憧れていた瀬尾先輩との再会のシーン。ガイド制作者が気になったポイントは、就活中の瀬尾先輩が手にしているお酒が缶ビールでも酎ハイでもなく、カップ酒だという点だ。

◆作品の背景や人物の関係性などを踏まえて字幕化する

瀬尾先輩は容姿端麗な部活のマドンナ。そんな先輩がカップ酒を手に夜の公園で酔っ払ってふざけているシチュエーションや、「ぼく」との関係を踏まえた上で字幕を作ることが求められる。この作品は「ぼく」自身の、一人称視点の青春物語。「ぼく」と自分の青春時代を重ね合わせて懐かしむ視聴者もいれば、全く新しい体験として見る視聴者もいる。視聴者に作品の楽しみ方を委ねるため、制作者はどちらの立場も取らず、客観的に読みやすい字幕を制作することが求められるが、主観を入れた字幕表現で演出しなければならないセリフもある。題材となったシーンはラストにも伏線がある重要なシーン。千鳥足になっている先輩の楽しそうな、たどたどしいセリフにこだわり、あえて崩した表現の「きもち~よ~」と「気持ちいいよ」を使い分けた。こうした判断にも字幕制作者は丁寧に時間をかけて考えているのだという。

◆映像に映る何をどんな言葉で音声にしてガイドするのか

一方、音声ガイドにはまた別の視点が必要だ。映像から得る視覚情報はとても多い。すべての情報を漫然とガイドするのはではなく、色、形、場所、位置、動きなどの中で何を優先して伝えればよりその映像を楽しめるかを常に考える必要がある。字幕作りに取り上げた同じシーンの音声ガイドも参加者と共に聞くと、ここでも瀬尾先輩が手にする「カップ酒」がガイドされていた。また、スーツ姿の瀬尾先輩が始めは束ねていた髪を公園でほどいていることにも言及。ガイドを聞いた川北監督が、彼女が手持ち無沙汰のように自分の指に触れながら話すしぐさの描写が面白かったと話していたのが印象的だった。

参加者からは、「とても素敵な作品で字幕/音声ガイドのグッとさせる工夫に感動しました」「ディスクライバーという職業を初めて知りましたし、映像のどの部分を音声ガイドとして視聴者に届けるのか、という視点がとても面白いと思いました」などの声が寄せられ、翻訳字幕や吹き替えとは違う難しさを実感したようだ。

メディア・アクセシビリティ科 無料説明会を開催

2024年5月11日 音声ガイドコース開講

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リモート受講のクラスメート8名がJVTAに初訪問 リアル対面で語り合った学びの思い出 

JVTAではコロナ禍になった2020年から、すべてのコースを全面リモートで開講している。PCがあれば自宅から繋いでクラスに参加できるようになり、地方都市や海外在住の受講生も大幅に増えた。

先日、英日映像翻訳の実践コースを受講の8名がJVTAに初めて来校。リモート授業の前後に設けられた歓談タイムや別の日にオンラインで集まるなど交流を深めてきたそうだが、JVTAのスタッフや講師、クラスメートと直接顔を合わせるのはこの日が初めてとなった。クラスメートの一人が福島から上京したのをきっかけにJVTAに集まったという皆さんに、入学したきっかけや、受講中の思い出を聞いてみた。

講師やスタッフと共に集合写真を撮影

JVTAで学び始めた理由は十人十色だ。会社の先輩がJVTAの修了生だったと話すのは、林友理恵さん。実は職場に3、4人お仲間がいたという。

「先輩からJVTAの先生や授業が良かったと聞き、さらに実際に映像翻訳のお仕事をしていると聞いたのが受講のきっかけです。受講は大変でしたが楽しくて充実していました。それまでは、『この字幕違うのでは?』と思うこともありましたが、『これは字数などの関係でこうせざるを得なかったのだろう』と思うようになり、映画やドキュメンタリーを観るのが楽しくなりました。」(林友理恵さん)

佐藤那奈さんも映画の見方が変わったという一人だ。映画や英語が好きでいくつかの翻訳学校の募集イベントに参加後、JVTAに興味を持ち入学した。

「今まで視聴者として観ていた時と映画の見方が変わりました。この訳になるにはどんな理由があったのだろうと考えるようになり、なぜこの訳?ともやもやしていたことがクリアになり、翻訳を学んだからこそ、これでいいんだと思えるようなりました。」(佐藤那奈さん)

JVTAの授業の特徴の一つに「作品解釈」がある。映像の本質を伝えるためには、異なる言語にただ置き換えるのではなく、作品全体の流れや背景を理解し、オリジナル言語で観て感じる面白さを翻訳した言語で観ても同じように伝える必要がある。「作品解釈」を学んだことで、映画を観る時、常に作品の構成や流れを考えるようなったという声も複数あがった。

「映像翻訳の課題は想像を絶する難しさでした。数字が出てきたら裏取りのことを考えるようになって…。映画を観ていても時計を気にしながら、ここが“重要なことが起きるミッドポイント”かな?と浅川先生に習った作品解釈を考えたりするようになりました。配信だとタイムコードも見えて便利なのですが、巻き戻してばかりいて、なかなか観終われません(笑)。」(K.K.さん)

「僕も最近映画見る時、今ミッドポイント通ったとよく巻き戻します。ダラダラとみていて“ターニングポイントとなるプロットポイント”に気づかずに32分などになるともう、ゾワゾワしてきます(笑)。知識は簡単に手に入りますが、管理してもらって課題を添削してもらう経験はスクールに入らないとできない。そこに価値があると思って受講を決めたので、自分の殻は破れたと感じています。」(鹿野裕人さん)

JVTAでは各自の過去の学習経験を考慮した編入制度を導入しており、通信講座の映像翻訳Web講座や、他校で学んでから編入する人も増えている。

「アルクの教材をずっと定期購読していたのがきっかけでアルクとJVTAによる映像翻訳Web講座を受講。はじめは英語の勉強に近い気持ちでしたが、ベーシックコース、プラクティスコースを受講し、もっと積極的にスキルを学びたいと思い始めました。そこでJVTAのオープンスクールに参加したら、先生たちの情熱に心を掴まれて…。リモート受講の総合コース・Ⅱのコースに編入しました。」(佐藤緩奈さん)。

「今後を見据え、自分の好きなことで定年など関係なくできる仕事を探していた中で、翻訳がいいなと思いました。最初は翻訳のジャンルも何がいいのか分からなくて実務、出版、映像のすべてを学べる学校に行きました。3カ月を終えたあと、やはり映像が楽しいと思い、映像翻訳に特化したJVTAに編入。授業が終わるタイミングで次の課題が出て毎週提出するのは大変でしたが、実践的な授業でとても勉強になりました。」(鈴木直子さん)

過去にJVTAに通いながら途中で断念したものの、再度挑戦し実践コースに辿り着いたという嬉しい声もある。

「実は10年前くらいにJVTAに通学していました。当時仕事で残業が多く、途中で断念してしまったものの、ずっと心の中にはあったんですね。寄り道をしてしまったのですが、JVTAのサイトやYouTubeチャンネルの番組を時々見ていました。再受講のきっかけはコロナ禍でリモートになったこと。仕事との両立も可能になり、有難かったです。」(Y.M.さん)

JVTAのコースでは、英文解釈や日本語表現力に特化した授業もあり、総合的なスキルを学べるのも大きな学びとなったという。

「映画が好きで翻訳にも興味があったのですが、実務翻訳は分野が分かれ過ぎていて何を選べばいいのか分かりませんでした。最近は動画配信も増えた中で映像翻訳に需要があるのではないかと思ったので、JVTAのオープンスクールに参加。先生のお話を聞いてやはり映像翻訳に興味を持ちました。受講してみたら、思っていた以上に大変で、こんなことまで考えて訳しているのか!と衝撃でした。私は帰国子女で日本語に自信がない部分もあるので、山根先生の『翻訳って日本語の表現力や文法が一番大事』という言葉にくじけそうになりましたが、授業の中でさまざまなスキルを学び、なんとかやってこられました。」(松澤瞳さん)

学びのきっかけはそれぞれだが、目指すゴールは全員同じ。皆さんの和気あいあいとした雰囲気からは、コースを通して共に切磋琢磨したことによる絆が感じられた。リモートでも十分学びを深めることはできる。しかしクラスメートや講師とリアルで会うことは、新しい刺激を得ることにもなるだろう。仕事をすることを前提にした実践的な授業で、今後プロになるためのスキルを学び、映像翻訳に携わる自信がついたという声が頼もしかった。

受講生・修了生の皆さん、ぜひお気軽にJVTAへ遊びにいらしてください。お待ちしています。

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ダマー国際映画祭が4月13日~14日開催 字幕翻訳者が語る「人の心に深く響く作品の魅力」

4月13日(土)、14日(日)、日比谷コンベンションホールで「ダマー国際映画祭」が開催される。JVTAはこの映画祭に字幕制作で協力しており、上映作品の中の4作品の字幕を修了生が手がけている。

「ダマー国際映画祭」は、2001年にワシントン州シアトルでスタートした国際短編映画祭。『パッション』や『ナルニア国物語』、『Ray / レイ』などの企画やマーケティングを手掛けたマーク・ジョセフ氏が代表を務めている。「ダマー」とはヘブル語(ヘブライ語)で「隠喩」や「たとえ話」を意味する言葉だ。この映画祭では、露骨な暴力描写や過激な映像に頼らず、人間の多様な感情や体験を芸術的に表現することを評価することが特徴で、30分未満であることが応募の条件とされている。バイオレンスシーンが苦手という人も安心して観られるが、視聴者の心に深く響く作品が集められている。

日本語字幕を担当し、作品とじっくり向き合った翻訳者に見どころをきいた。

◆『Pinwheel Horizon』

(Director Ian Ebright, 2019 Damah Winner)

日本語字幕 丹黑 香奈子さん

ある任務を担って旅する戦士たちの物語です。抽象的なことばの奥に深いテーマがあり、翻訳しながら、人生について考えを巡らせていました。

正しいと信じた道の先で、思い描いた結果が得られなかったら、どうしますか?3人の戦士たちが旅の果てに何を思うのか、ぜひ見届けてください。

すばらしい作品に出会えたことに感謝しております。作品に込められたメッセージを的確にお伝えできるよう、翻訳者としてこれからも努力し続けます。

◆『Hide and Seek

 (Director Rositsa Trayanova) Bulgaria

日本語字幕 坂下亜子さん

1人の女性ロージーが少女から大人になるまでが、祖母とのかくれんぼを通して描かれています。

目を閉じて10数えるように、彼女の子供時代もあっという間に過ぎ去ります。

2人の会話はちょっとした言い合いのようですが、その中にも互いを愛おしく思う気持ちがにじみ出るよう、口調に気を付けて翻訳しました。

ブルガリアの作品ですが、世界中の孫がおばあちゃんとの時間を振り返り、その思い出を抱きしめたくなるような物語です。

◆『On My Way』

 (Director Ho Ching Fong) Hong Kong

日本語字幕  武富香子さん

この度は「On My Way」の日本語字幕を担当させていただき大変光栄に思います。この映画祭は近年まで広島で開催されていたそうで、広島出身の私は勝手に特別な縁を感じております。「On My Way」は香港を舞台に、複雑な家庭環境にある少女と、闘病中の妻を見守るタクシー運転手の一期一会を描いた作品です。最後にしみじみと「いい映画を見たな」と感じられる、心に染みる作品です。ぜひ多くの方に観ていただけたらと思います。

◆『Empty Heights, Moonlit Night

(Director Canghai Lu) China

日本語字幕 武政涼子さん

中国が舞台の本作の主人公は、一人暮らしの老人。何年も帰省しない子どもたちに腹を立て、裁判を起こします。そんな老人の悲しい想いとは対照的に長閑な風景とゆったりと流れる時間が印象的な本作。それは老人の心情をそのまま映し出しているようで、誰にでも訪れる「老い」について改めて考えさせられる作品です。鑑賞後は思わず実家に電話したくなる、そんな作品かと思います。

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今年はトークゲストにバリー・クック氏が登壇する。彼は、『リトル・マーメイド』、『美女と野獣』、『アラジン』にアニメーターとして携わったほか、『ムーラン』や『ウォーキング with ダイナソー』、では自ら監督を務めている。CGアニメーターのパイオニアとして知られるバリー・クック氏のトークを聞ける貴重な機会、こららもどうぞお見逃しなく。

ダマー国際映画祭

2024年4月13日(土)~14日(日)

日比谷コンベンションホール

※日比谷図書文化館 (B1

https://www.damahfilm.com/

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【ロジカルリーディング力強化コースの修了生】「英文の構造や前後の関係を突き詰めて根拠を持って訳せるようになりました」

ロジカルリーディング力強化コースの修了生、佐々木香奈さんは、英日映像翻訳 総合コース・Ⅰを修了後にこのコースを受講。「何となく読んで何となく訳している」という状態から脱却し、根拠を持って訳すことができるようになったという。このコースで具体的に何を学び、何が変わったのか? お話を聞いた。

◆ロジカルリーディングを受講しようと思った理由、きっかけを教えてください。

JVTAに入学する前から興味があって、いつか絶対受講しようと決めていました!総合Ⅰを修了した時点で、やはり総合Ⅱに進む前に「何となく読んで何となく訳している」という状態を脱却しておきたくて、このコースに進むことを決めました。いざ始まってみると、クラスメートのほとんどが実践まで修了されている方だったので、最初は授業についていけるか不安もありました。それでも毎回必死に食らいつき、英文とじっくり向き合うことができたため、このタイミングで受講して本当によかったと思っています。

◆授業中に指摘されたことで印象に残ったことはどんな点でしたか?

授業でいただいたアドバイスはどれも勉強になるものばかりで、挙げれば切りがないくらいです。例えば、翻訳する際どこまで追求すべきなのか、その塩梅について質問したときにいただいた、“キラーインスティンクト”を働かせる(全体の中で絶対に押さえておかなければならないポイントを見抜く)という言葉は特に印象的で、実践において意識すべき大切なポイントだと感じました。山根先生の講義はいつも分かりやすく、私のしつこいほどの質問にも毎回毎回じっくり丁寧に考えて答えていただき、とても感謝しています!

◆クラスの雰囲気はいかがでしたか?

とにかく楽しくて、アットホームな雰囲気が心地よくて、毎回の授業が楽しみでたまりませんでした!なにより山根先生の人柄がとても素敵で、真剣な講義のさなか、所々に差し挟んでくる小話やシュールな一言に、みんないつもクスッと笑わされていました(むしろ私はミュートした画面の向こうで終始、大爆笑していましたが…)。このように、クラスはとても和やかな雰囲気で発言や質問もしやすく、先生やクラスメートのみなさんと、各テーマについて活発に議論することができたと思います。最終日は本当に名残惜しく、今でももう一度最初から受講したいと思うほどです。

◆受講前と比べて何が変わりましたか?

以前はつい雰囲気や感覚で訳してしまうこともありましたが、受講後は英文の構造や前後の関係を突き詰めて考え、しっかりとした根拠を持って訳すことができるようになったと思います。各回で取り組んだ「対の関係」や「引継ぎと展開」、「段落の構成」などは、この講座で教わらなければ絶対に意識することのできなかったポイントだと思います。また、政治・経済・歴史・科学など、これまで個人的にあまり触れてこなかった分野や難しいテーマも、課題で取り組むことによって自然と興味が湧き、論理的思考を鍛えるとともに自分自身の視野もさらに広げることができたと思います!

◆「English Clock ロジカルリーディング力 強化コース」(全8回)

次期は2024年5月に開講です。(全面リモート受講)

まずは無料体験レッスン(リモート開催)にご参加ください!

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◆【山根克之講師のコラム】ロジカルリーディング力を鍛える

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ロジカルリーディング力 強化コース 修了生にクラスの雰囲気を聞いてみました

English Clockの「ロジカルリーディング力 強化コース」では、英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やドキュメンタリー番組のスクリプトなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。

今回は映像Web講座を受講中あるいは修了してからロジカルリーディングを受講された方の声を主に集めてみました。クラスの雰囲気が伝わってくると思います。通信の講座からクラス形式の授業へ参加される方は、初めは戸惑うかもしれませんが、心配は要りません。ロジカルリーディングでは、専任の山根克之講師が「リラックスした雰囲気の中で高度な内容を分かりやすく」をモットーに授業を進めていきます。

◆講師の説明は分かりやすかったですか? 今後の学習のヒントになったと思われることがあれば具体的に挙げてください。

・先生の説明は毎回とても分かりやすかったです!英文の表面だけを見ていると誤訳につながったり、英語と日本語の対訳が一見正しそうでも全体をみると辻褄が合わなかったり、違和感のある文章になってしまうので、本当にこの言葉のチョイスで良いのかを全体の流れ見て疑う癖をつけていこうと思います。(Aさん)

・常に落ち着いた口調で説明されていて、とても分かりやすかったです。山根先生は、そのまま訳したらおかしいと思う箇所では必ず立ち止まって、どう解釈したら辻褄が合うのか、日本語ではどのように補足したら正しく伝わるのかをその都度考えて訳されていました。私はこれまで英文でこう書いてあるからと少々疑問に思ってもそのまま訳してしまうことが多かったので、やはり翻訳者が納得していないものは出してはいけないし、納得するまでとことん向き合って訳していこうと思いました。(Bさん)

◆受講前と比べて、自分の中に変化があったと思いますか?それはどんな点ですか?

・今回の講座を受けてやはり翻訳をやりたい気持ちが戻ってきました。やはりそれはクラスメートからの刺激もあったと思います。それとともに山根先生の「自信を持って自分の翻訳(クラス)を提供したい」という言葉に触発されました。自分の訳に自信が持てない理由が今回はっきりとわかったので、そこを重点的に改善していきたいと思います。問題点がクリアになったところが良かったです。(Cさん)

◆講義全体の感想を自由に書いてください。

・毎回必ず出席者全員の訳文をピックアップしてくださり、良いポイントを言ってくださったり改善点がある場合は質問で一旦こちらの考えを聞いてくださったりと、頭ごなしに否定されることがなかったので、緊張しがちな私も委縮することなく全回参加することができました。先生も途中でおっしゃっていたように“講義を受けている期間中は間違えてもよいチャンス”と捉えるようになり、今までよりも大胆に訳文を作ることができ課題も大変楽しんで取り組むことが出来ました。本当に楽しく濃い8回でした!ありがとうございました!!(Aさん)

・いつも授業のはじめに先生の冗談めいたお話で座を暖めてくれて、笑ってリラックスして授業に臨めました。もちろん授業に入ればとても鋭い指摘の連続で、身が引き締まる思いでしたが、学ぶことが多くてとても楽しかったです。(Dさん)

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最近は映像翻訳Web講座からリモートのクラスへの編入なども増えています。毎週決まった時間にクラスに参加するのは大変ですが、それ以上に講師やクラスメートと直接言葉を交わしながらの授業で皆さんが得たものは大きいようです。ご興味のある方は、ためらわずにまずは体験レッスンを受けてみてください。

◆English Clock「ロジカルリーディング力 強化コース」

2024年5月7日より開講 無料体験レッスン開催中

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◆【山根克之講師のコラム】ロジカルリーディング力を鍛える

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【ロジカルリーディング力 強化コース修了生インタビュー】「“段落のテーマと引き継ぎ”を意識できるようになりました」

映像翻訳Web講座の修了生、高槻泰子さんは、2023年4月期にロジカルリーディング力強化コースを受講後、2024年1月のトライアルに合格。OJTを経てまもなくプロデビューする。初めて受けたトライアルの結果に不安を感じて受講を決めた同コースで具体的に何が変わったのか、お話を聞いた。

ロジカルリーディングを受講しようと思った理由、きっかけを教えてください。 

映像翻訳Web講座修了直後に受けたトライアルが散々な結果でした。日本語表現に問題があるのは覚悟していましたが、英文の解釈が間違っているところもありショックでした。映像翻訳の大前提となる英文解釈力に不安を感じていた時に、ロジカルリーディングの体験授業を知りすぐに申し込みました。その体験授業が非常に分かりやすく、また楽しかったので受講を決めました。

◆授業中に指摘されたことで印象に残ったことはどんな点でしたか?

授業の中で翻訳者としての考え方や心構えについてもお話しくださいましたが、その際の「翻訳者として当然やるべきことをサボってはいけない」というお話が心に残っています。全て大文字で書かれた単語や「“”」で括られた単語が出てくるなどしたときは、「あれっ?」と気付くアンテナを持つこと、そしてその意図を考えきちんと調べること、というお話でした。その授業で私は「“”」を見逃し、とんでもない訳を作っていたので、いかに原文を読んだつもりになっていたかを思い知りました。それからは原文を何度も読み返し、少しでも気になるところは調べるように心がけました。

クラスの雰囲気はいかがでしたか?

山根先生がどんな質問や意見も必ず一度受け止め、その上で丁寧に答えてくださったので、とても発言しやすい雰囲気でした。終始和やかながらもクラス全員が真剣に学んでいるのが感じられる、あっという間の2時間20分でした。授業の前後にZoomを開放してくださったので、クラスメートと交流することもできました。WEB講座を受講していたのでクラスメートの存在はとても嬉しかったです。もしできることなら、もう一度受講したいです。当時のクラスメートとも「ロジカルロス…」と言っていました。

受講前と比べて何が変わりましたか?

先生がよくおっしゃっていた「段落のテーマと引き継ぎ」を意識できるようになったことが一番の変化だと思います。それまでは一文一文を訳すことに集中してしまい、段落全体で言いたいことや次の段落とのつながりなどを考えていませんでしたが、ロジカルリーディングの授業を通して考える癖がついたと思います。

また、授業では常に「これってつまりはどういうこと?」と問われるので、自分の訳に対して一歩踏み込んで考えるようになりました。それから、教材のジャンルが多岐にわたっていたため、馴染みのないジャンルへの拒否反応も少なくなりました。最初はよく分からなくても、一つひとつ丁寧に調べていけば全体像が見えてきて何とかなる、という自信がついたと思います。

◆「English Clock ロジカルリーディング力 強化コース」(全8回)

次期は2024年5月に開講です。(全面リモート受講)

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ロジカルリーディング力を鍛える⑰ 展開を予測しながら読む

ロジカルリーディング力 強化コースは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。

英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やコラム、政治家のインタビューなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。具体的にどんな講座なのか、山根克之講師が解説します。

<展開を予測しながら読む>

文章を読む時、人はその先の展開を予測していると言われます。どういうことか感じていただくために、まず次の英文を読んでみてください。環境保護団体Ocean Conservancyのサイトに掲載されているヒョウモンダコに関する記述の一部です。

https://oceanconservancy.org/blog/2017/03/13/the-blue-ringed-octopus-small-but-deadly/

At first glance, the blue-ringed octopus looks perfectly innocuous. Its psychedelic coloring and pint-sized packaging make it seem more adorable than alarming. But don’t let its cuddly exterior fool you: this tiny octopus can kill you. And quickly.

1文目に「一見するとヒョウモンダコは無害な生物に思える」と書かれています。わざわざ「一見すると」と書かれているので、「実はそうじゃないよ」という展開が待っていることが予測できますよね。

そこで2文目を読むと「派手な色をした小さな体は愛らしく思えるほどで、警戒心など抱かせないだろう」と書かれています。「ヒョウモンダコを見て警戒心なんて抱かないよね」という書き方が何とも怪しげですね。ここも「実は無害じゃないよ」につながっているように思えます。さらに読み進めていきましょう。

「しかし、思わず手に取りたくなるようなかわいらしい見た目にだまされてはいけない。この小さなタコはごく短時間で人を死に至らしめる力を持っているのだ

初めに予測したとおりでしたね。無害どころか、かなり危険な生物のようです。

今見てきたように、人が文章を読む時には「こういう書き出しだから、帰結はたぶんこんな感じだろう」「ここで提示された謎の答えはこの先に出てくるはずだ」のような思考回路が働きます。ということは、構成のしっかりした文章はこの読み手の思考回路に応えられるようになっているはずです。翻訳の課題に取り組む時にも、この点を意識してみてください。原文の理解に苦しんでいると、どうしても目の前の1文だけを見てしまいがちです。その時に「前の文でこう言っていたのだから、ここはこういう展開になるはずだ」のように考えると、それまで見えなかった理屈の流れが見えてくるでしょう。

ロジカルリーディング力強化コースは、英語で読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉(日本語)で再構築して説明する力(=ロジカルリーディング力)を養う方法を毎回さまざまな角度から考えていきます。今回の問題のような構成の展開を意識した解釈については、全8回のうち、第4講の「引継ぎと展開」で学びます。

(Text by English Clock 主任講師 山根克之)

◆山根講師の連載コラム「ロジカルリーディング力を鍛える」のアーカイブはこちら

◆English Clock「ロジカルリーディング力 強化コース」

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『Range Rider』の日本語字幕を制作 日本では馴染みのない文化や職業を伝える難しさとは?

ドキュメンタリー映画『Range Rider』が、アウトドア用品のメーカー「パタゴニア」の店舗で3月に上映される。これは約30分の短編作品。アメリカのワシントン州を舞台に、繁殖するオオカミと家畜への被害を憂慮する牧場主との共存のために従事する『Range Rider』という仕事に取り組むダニエル・カリーの姿を追っている。この作品の日本語字幕を、JVTAの修了生の永山康子さん、谷岡美佐子さん、渡辺牧さんが手がけた。

タイトルであり、この作品の核となるテーマでもある『Range Rider』とは何か? 翻訳チームが最も話し合ったのはこのワードの訳出だったという。今回は3人で各10分ずつ担当。さまざまな経験のある翻訳者が意見を出し合いながら、流れやトーンを統一して字幕を制作した。

渡辺牧さんはこれまで、アウトドアブランドの展示会用商品PR動画の翻訳などを担当している。

「日本には『Range Rider』に当てはまる職業、似たような職業も見つからなかったので、まず、“ない”ということを証明するのは大変だと感じました。チーム翻訳でしたので、それぞれが調べ、それでも当てはまる職業が見つからず、また、Range Riderに関する日本語の記事や文献等も見つからなかったので、やっと”日本では認識されていない仕事”という結論に至りました(つまり、対訳もないということです)。映像の中でRange Riderの仕事内容について語っているので、訳出は無理やり日本語を当てはめるのではなく、発音どおり『レンジライダー』とすることをチーム内で相談して決めました。」(渡辺牧さん)

永山康子さんは、映画、バッグブランドの商品PR動画、スポーツ世界大会の選手インタビューなど幅広く手掛けてきた。

「『Range Rider』は日本にはない職業のため、仕事の内容や実情の把握、またそれをどのように日本の視聴者に分かりやすく伝えるか表現に苦労し、チーム内でも話し合いました。また今回、オオカミ保護支持者とオオカミ駆除支持者の対立が際立つ作品でしたので、その対立をどのように興味深く描けるか留意して訳出しました。」(永山康子さん)

永山さんは今回、本編の他に30秒と90秒の予告編の字幕も担当している。本編から該当箇所の字幕を抜き出して、多少短く編集し字幕として整えた。

「本編では全体の流れの中で分かりやすい表現に留意しましたが、トレーラーでは短い尺の中で『観たい!』と思っていただけるようより分かりやすく、またインパクトのある表現を使うよう工夫しました。」(永山康子さん)

谷岡美佐子さんは、AI技術に関するセミナーなどの企業案件の映像翻訳や子ども向けの動物図鑑の翻訳の経験がある。

「この『Range Rider』に携われたことは、非常に勉強になりました。環境問題という難しいテーマを、きれいごとだけではなく両者の立場から伝えていくにあたり、社会的な視点から適切な表現を探るのが難しかったです。調べ物につきましては、作品の中に登場する “Shoot, shovel & shut up.”(撃ち殺し埋めて 口を閉ざせ)という標語のリサーチに苦労しました。これは、家畜を狙い侵入したオオカミを撃ち殺した牧場主たちがその事実を隠し、自分たちの土地が動物保護の規制の対象になるのを防ぐためのスローガンです。Redditというアメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイトで何とか確認できましたが、こうした公にならないデリケートな問題を調査することの難しさを感じました。」(谷岡美佐子さん)

海外の作品の日本語字幕をつくるという作業には、言語を置き換えるだけではない難しさがある。異なる文化を理解し、登場人物の背景や心情を正しく伝えるために、映像翻訳者は膨大なリサーチと話し合いを重ねている。『Range Rider』では、日本ではあまり馴染みのない職業や環境問題に触れることができる。神戸、京都、軽井沢、仙台、札幌北のパタゴニアの店舗で3月に無料上映されるので、お近くの方はぜひチェックしてほしい。

『Range Rider』上映の詳細、お申し込みはこちら

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映画『ただいま、つなかん』バリアフリー上映 JVTAが学生の字幕制作をサポート

ドキュメンタリー映画『ただいま、つなかん』(風間健一監督)が、2024年春からバリアフリー上映される。この作品のバリアフリー字幕の制作にJVTAが、音声ガイドの制作にはユニバーサルシアターのシネマ・チュプキ・タバタが協力した。

被災をこえて続く宿

10年の物語

東日本大震災の被災地で活動するGakuvo学生ボランティア

作品の舞台は、宮城県気仙沼市の民宿「唐桑御殿つなかん」。主人の菅野一代さんが東日本大震災後で被災した自宅を、現地に訪れた学生ボランティアたちの宿泊先として提供したことをきっかけに生まれた宿だ。日本財団ボラセンの前身となる日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo)が、震災後2021年度末までに東北3県の被災地に派遣した学生ボランティアの数はのべ約12,000人にのぼる。彼らのなかにはこの地に移住した人も少なくない。一代さんは、カキの養殖を生業としながら学生たちとの交流を深めてきた。現在も学生たちや観光客の拠り所として人気を集めるこの宿をめぐる約10年にわたる物語となっている。

聞こえない視聴者にも

作品を届けるために

バリアフリー上映を実現するため、公益財団法人日本財団ボランティアセンターが「日本語字幕・音声ガイド制作ボランティア! 映画バリアフリーPROJECT」を起ち上げ、学生ボランティア16名がワークショップ形式で字幕と音声ガイドの制作に取り組んだ。JVTAでは、東京校にて2023年11月から全5回の字幕ワークショップを開催。当校のバリアフリー講座でも講師を務める武田和佳奈講師が、「バリアフリー字幕とは何か?」「音を文字で伝えるとは?」などを解説しながら、字幕作りをサポートした。風間健一監督も同席し、その意図を聴きながらの制作となった。

制作風景(音声ガイド)

バリアフリー字幕ではセリフの前に「話者名」を入れるのが大きな特徴の一つで、その表記も工夫するポイントとなる。この作品のナレーションを担当するのは、俳優の渡辺謙さんだ。

「個人的には、(渡辺謙)(ナレーション:渡辺謙)のような案が出てくると予想していたのですが、シンプルに(語り)となりました。学生たちからは、『主役は一代さんだから』 『映画のパンフレットでも語りだから、ナレーションではなく語りがいいと思う』とすんなり意見が一致し、結果的に主役である一代さんや学生たちにフォーカスが合ったいい字幕になったと思います」。(武田和佳奈講師)

ちなみに渡辺謙さんの声だという情報は、公式サイトなどの事前情報や、バリアフリー上映前の事前解説などでも知る機会がある。バリアフリー字幕のもうひとつの特徴は「音情報」だ。波や風の音、サイレン、ノック、爆発音のほか、笑い声なども大事な情報となる。

プロジェクト参加学生

「当事者である男性がゲストでいらした5回目の話し合いも印象的でした。『音楽の字幕はあったほうがいいか』と学生に聞かれた彼が、『くどくなければ』と答えたのです。単純に音楽や音があるところに字幕を付ければいいというわけではなく、当事者の方にとっても(必要なところに)(必要なタイミングで)字幕が出ることが重要で、良かれと思って付けた字幕が場合によってはくどくなることもある、ということを再認識しました」。(武田和佳奈講師)

当事者の男性は、自身も年間100本近く鑑賞するという映画愛好家。多くの作品を観るなかでさまざまな字幕を目にされている。「聞こえる人たちだけでは気付けなかった『音』への指摘もあり、こうして当事者の方と意見を交換することで、よりたくさんの人に届く字幕を作れるのではないかという可能性を感じた」と武田講師は話す。映像の制作者、字幕の制作者、利用者とそれぞれの想いを知ることができたのは、学生にとっても大きな学びになったようだ。

「私は応募以前から手話を学んでおり、他の側面からも聴覚障害について関わりたいと思い応募しました。参加前は文字起こしソフトを使用して字幕をつけていると思っていましたが、自分たちの手で字幕を制作することで、実際は、視聴者の多様な背景を想像し、検討を重ねて制作することを体感しました。今後は些細に思えることでも、一度立ち止まって他の人はどう感じるのか、想像することを大切にしたいです」。(大学2年、バリアフリー字幕チーム 一栁 真央さん)

被災地で復興を支えた学生ボランティアの姿を伝えるバリアフリー字幕を同じく学生が制作した意欲作。バリアフリー上映は2月29日(木)からシネマ・チュプキ・タバタや全国の上映イベントで観ることができる。

©️2023 bunkakobo

『ただいま、つなかん』 公式サイト

https://tuna-kan.com/

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映像翻訳者なら読んでおきたい! メディアリテラシーを学べる絵本が発売

「映像翻訳には、膨大な調べもの(リサーチ)が必要なことに驚いた!!」
これは、多くの受講生・修了生の皆さんから聞く言葉だ。

映像翻訳者を目指す人にぜひ読んで欲しい1冊、絵本『それって本当?メディアリテラシーはじめよう フェイクニュースとクリティカルシンキング』(岩崎書店)が発売された。翻訳をJVTAの受発注部門MTCの片柳伊佐ディレクターが手がけている。

同書は、カナダで子供向けに発売された絵本。ニュース記事ができるまでの過程やインフルエンサーや釣り見出し、信頼できる媒体を判断するポイント、嘘の情報を見抜く方法など現代社会の中での情報との向き合い方を具体的に解説している。編集を手がけた岩崎書店の吉岡雅子さんによると「フェイクニュース」や「メディアリテラシー」という言葉を耳にするようになった2年前に、オリジナル作品を見つけたという。

「電車に乗ると多くの人がスマホの画面を見つめていますが、インターネット上の情報量が爆発的に増えたなかで、大人でさえも情報を上手く取捨選択できているかわからないのに、本書の対象である児童にとってはなおさらだろうと思います。非常に大事な問題ですが、説明や例を挙げるのは簡単ではなく、本書のような、全編イラストの本であれば少しとっつきやすくなるかなと思ったのも刊行を決めた理由のひとつです。海外の本の翻訳なので、取り上げられている事例も客観的に捉えられるのかなと思いました。」(吉岡雅子さん)

吉岡さんと片柳さんは大学時代の友人。片柳さんが学生時代にメディア論を学び、広告やコンテンツの調査・分析などに携わっていたこともあり、翻訳を依頼されたという。作者のジョイス・グラント氏は、児童や先生向けの記事を発信しており、原文の英語はシンプルで語りかけるような文章で書かれている。日本語版の翻訳で片柳さんが最も難しいと感じたのは、こうしたトーンの作り方だった。読者の対象は小学校高学年以上で、中学生や高校生にも読んでもらえる内容だが、内容は専門的で難しい箇所もあり、飽きずに読み進めてもらえる工夫が求められた。

「教育的な内容なので、はじめは『ですます調』で少し堅めの口調を想定していました。今後の方針を決めるために、冒頭の数ページは、比較的堅めのものと思いきりカジュアルに崩したものと2つのパターンを作って納品したのですが、先方の希望はカジュアルでもっと砕けてもいいとのこと。『ここまで振り切ってしまってもいいのか!』と意外でした。自分が思うより思い切り振りきらないと相手には伝わらないことを実感しました。そこで口調は「だね!」「だよ」「なんだ」など「だである調」にし、上から目線にならず、かしこまった感じではなく語りかけるトーンを常に意識しながら訳していきました。ニュース記事などについて扱うシリアスな内容なので、このさじ加減を掴むまでが難しかったですね。絵本なのでイラストとのバランスも大切にしました。」(片柳さん)

片柳さんは翻訳に入る前に、図書館に足を運び、日本語で書かれた子ども向けの本や翻訳本、同じようなテーマの大人向けの本などを読んでトーンや伝わり方を比べてみたという。池上彰氏の子ども向けの本ではどのくらいまでかみ砕いているのかも参考にした。また、アメリカやカナダでは一般に知られていても日本では知られていない文化には、かっこづけで補足を入れた。

「片柳さんは、原文を正確に日本語に翻訳しつつ、原書に散りばめられているジョークなど、そのまま訳しても通じない箇所では、工夫を重ねて、原書のユーモアも伝わりつつ、日本語でも意味が自然と取れるようにする、原書の『ボイス』を生かしつつ、いかに日本語としてすっと頭に入るようにするかなど、苦心してくださいました。」(吉岡さん)

現在、片柳さんがディレクターとして担当するのは、主に自然ものや歴史ものなどのドキュメンタリーのボイスオーバーや映画祭上映作品などだ。日頃の徹底した調べものが欠かせない。

「JVTAで映像翻訳を学んだスキルがなければ、英語力だけを頼りにこの内容を訳すのは難しかったかもしれません。授業で課題に取り組む中で常に綿密な調べものをし、正しい情報に裏打ちされた日本語に訳す重要性を実感し、そのやり方を身につけたことや、限られた字数の中で大事な情報を逃さずに伝えるスキルが役立ちました。原文には、フェイクニュースの見極め方など、一見嘘なのか本当なのか分からない事例も数多くあり、それぞれ丁寧に事実確認をし、申し送りをつけて納品。また、文字数については、絵本全体のスペースのバランスから、吉岡さんと相談の上、今回は2倍メドで進めることに決め、ワード数はページごとに記録に取りながら訳していきました。『原文が英語100ワードだったら、翻訳文は200文字』というイメージです。」(片柳さん)

「片柳さんは、訳出中に気がついたことや調べたことを詳細にメモし、一覧にして渡してくださったのですが、それが、編集上大変助かりました。片柳さんには大変感謝しております。」(吉岡さん)

同書は書店での販売に加え、学校図書館、公共図書館に置いてもらいたい1冊となっている。子ども向けの絵本ではあるが、大人が読んでも勉強になる内容だ。受講生、修了生の皆さんは、ぜひ手に取り、メディアで仕事をする上で知っておくべき基本を学んでほしい。

『それって本当?メディアリテラシーはじめよう フェイクニュースとクリティカルシンキング』(岩崎書店)

ジョイス・グラント 著

キャスリーン・マルコット 絵

片柳 伊佐 訳

https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b10040277.html

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