第20回 スペイン+放浪記 その6(セビリア編)
【最近の私】
ラテンビート映画祭の東京上映が終了。今年も来日ゲストのお世話係に。スペインにある「世界一」と称されるレストランの経営者兼ソムリエをアテンド。「世界一」のレベルを維持し続ける彼の考え方や世界観に影響を受ける。
スペイン南西部+ポルトガルの旅(別名;豚+城塞都市+ポルトガルの旅)で、すっかり意気投合したハポネサ(日本人女性)3人組。私はこのユニットの心地よさから気が大きくなってしまい、さっそく次のプランを提案する。他の街も訪れたい気持ちに火がつき始めていた。3人は次の連休へ向けた企画で盛り上がるが、彼氏持ちのSさんは都合が悪いらしい。炎になりかけた思いも一瞬で鎮火する。
まっ、彼氏との時間が大事だと言われてしまえば何ら説得する材料はない。次回は私と交流基金の日本語教師Nさん、独り者同士の二人旅になるのか・・・と心のなかでつぶやいていると、そんな空気を察したのか、Sさんからこんな提案が。
「やっぱり本場のフラメンコみたら?スペイン南部のセビリアは? 4月末にはFeria de Abril(フェリア・デ・アブリル=フラメンコのお祭り)があるよ。街中がフラメンコの衣装を着た人で埋め尽くされる光景にきっと圧倒されるよ」
何と魅力的でタイミングの良い話なのでしょう!さすが長年スペインに住んでいるSさん!「やっぱりスペインに来たらフラメンコ観なきゃーねー」と、Nさんと2人でワクワクする。
ただ、2人にはSさんのように車がナイ、免許がナイ。そして今回の旅で感銘を受けた、Sさんお手製の詳細にわたるスケジュール。そんなものを作るほどの才能もナイ。ナイナイだらけだが、私が交通担当、Nさんが宿泊担当となり、準備作業を分担。あとは行き当たりバッタリの「Que sera sera(ケセラセラ)」な旅でいいじゃんと考えた。
■スペインらしくない? 時間厳守な鉄道「Renfe(レンフェ)」
マドリードとセビリアを結ぶ公共交通機関にRenfe(レンフェ)がある。日本でいうJRのようなもので、スペイン国内またはユーロ圏の主要都市を結ぶ長距離列車を運行する鉄道会社である。Renfeが運行するAVE(アヴェ)という高速列車は、総距離約530キロに及ぶマドリード―セビリア間を最高時速300キロ、2時間20分で結ぶ。ちなみに東京から盛岡のちょっと手前までが同じ距離。東北新幹線とほぼ同じ実力というわけだ。
私には「ローテクなスペイン」というイメージがあったので、この高速列車の能力に正直驚いた。座席も快適で日本の新幹線に全く劣らないようだ。また、食堂車も完備されており、簡単なサンドイッチやドリンクが購入できる。風景を見ながらカフェやビールを片手に語り合える――おしゃべり好きなスペイン人には、きっとたまらない空間だろう。
日本と大きく違うのは、乗車前に手荷物検査があり、発車2分前には出発ゲートが閉められるという厳密な手順があることだ。ユーロ圏内ではあるが国境を越えること、そして、この始発駅であるAtocha(アトーチャ)駅で、2004年3月11日に爆弾テロがあったことなどが理由であろうと想像できる。日本にいる時は出発のベルが鳴ってから新幹線に飛び乗るのが当たり前の私は、乗り遅れてしまわないかと、ちょっと心配になる。
しかも、「到着の予定時刻から16~30分遅れた場合はチケット料金の半額が、30分以上遅れて到着した際はチケット料金の全額が返金される」というルールがある。「スペインは時間厳守とは無縁の国」というのが、私を含めて多くの人が抱くイメージだろう。ユーロ圏の他の鉄道会社との連携があるから遅延が許されていないのか?Renfe(レンフェ)になぜこのような制度が設置されているのか、私のなかではいまだに謎である。
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Written by 浅野藤子(あさの・ふじこ)
山形県山形市出身。高校3年時にカナダへ、大学時にアメリカへ留学。帰国後は、山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京国際映画祭で約13年にわたり事務局スタッフとして活動する。ドキュメンタリー映画や日本映画の作品選考・上映に多く携わる。大学留学時代に出会ったスペイン語を続けたいという思いとスペイン映画をより深く知りたいという思いから、2011年1月から7月までスペイン・マドリード市に滞在した。現在は、古巣である国際交流団体に所属し、被災地の子供たちや高校生・大学生の留学をサポートしている。
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