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明けの明星が輝く空に 第121回:スター・ウォーズシリーズと重ねた年月

明けの明星が輝く空に 第121回:スター・ウォーズシリーズと重ねた年月
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「年を取ると涙もろくなる」というのは、本当らしい。少なくとも、僕の場合はそうである。年が明けてから観た『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でも、最後の台詞を含め3回は泣いた。ただし、僕がスター・ウォーズシリーズ(以下、SWシリーズ)に涙するのは、年齢のせいだけではない。

 
1977年、シリーズ1作目の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』が日本で公開された頃、僕は中学生だった。友人がクラスの女の子2人を誘って、ダブルデートを企画してくれたが、残念ながら“おじゃん”になってしまったという、甘酸っぱい思い出がある。

 
結局、僕が初めてエピソード4を観たのは、テレビ初放映の時だ。映画解説の水野晴郎さんが、「いやあ、映画って本当にいいもんですね」と毎週語りかけてくる、『水曜ロードショー』でのことである。この時の吹き替えは、ルークが渡辺徹、レイア姫が大場久美子、そして何とハン・ソロは・・・、松崎しげる! さすがに、「それはダメでしょ!!」と思ったことを覚えている。

 
実は、僕はこのテレビ放映に先立って公開された『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』を、すでに劇場で観ていた。もちろん『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』も観ておらず順序が逆なのだが、前2作のストーリーは耳に入っていたし、登場人物たちについての予備知識もあったから、全く問題なく楽しめた。僕は当時“代ゼミ”の浪人生。「日々是決戦(ひびこれけっせん)」という張り紙を見ながら、受験勉強に励んでいた夏だった。観に行った映画館は、歌舞伎町にあった新宿プラザ劇場である。

 
好きな登場人物は、今も昔もダース・ベイダーだ。学生時代、リバイバル上映されたエピソード4やエピソード5を観た後、友人らと他愛ない遊びに興じたことを思い出す。もちろんダース・ベイダー役は僕で、“I am your father.”と言うと、友人が“No!”と叫びながら奈落の底へ落ちていくフリをしたり、フォースで首を絞める真似をして相手を黙らせたり。みんな学生劇団で役者をやっていたもんだから、ノリはすこぶる良かった。ほかに、密かな一人遊びも楽しんだ。鼻歌でダース・ベイダーのテーマ曲を唄いながら自動ドアの前に立ち、それが開くと同時に“シュコー”とあの呼吸音を真似して歩き出す。一番気分が乗ったのは、新宿NSビルだ。あそこは入るとすぐ広場のようになっているし、上層階まで吹き抜けになっていて、その空間的広がりが、デス・スターの中にいるような気分にさせてくれたのだ。

 
ただし、演じるならルークが面白そうだと思っていた。友人たちはソロの方がカッコいいと言っていたが、父であるダース・ベイダーを倒した後、そのヘルメットを荼毘に付す場面の心の動きを、表情だけでどう表現するか。そこに、「役者としてのやりがい」があると感じられたのだ。

 
1999年に始まった新三部作は、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』だけ映画館で観たが、それ以外はテレビでちらっと観たかどうか。その程度である。エピソード3にしても、人に誘われていなければ行かなかったと思う。それが、エピソード7となる2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』公開間近になると、観たいという気持ちが湧き上がってきた。善vs.悪の図式がわかりやすく、宇宙を舞台にした冒険活劇的要素が全面に出ていたからだろう。

 
エピソード7にはレイアもルークも登場したが、2017年のエピソード8、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で2人が再会した時、僕の中に何か特別な感情が湧き上がってきた。レイアとルークが、そして彼らを演じるキャリー・フィッシャーとマーク・ハミルが、数十年の時を経て時間と場所を共有している。年齢を重ねたことによる変わりようには驚いたが、その分、過ぎ去った時間の流れを、まるで形のあるもののように感じ取れる。そして、レイア同様久々の再会となったC3POの、「ルーク様?」という言葉に、ウインクだけで応えたルーク。スクリーンは、涙でにじんだ。

 
「年月の重み」という言葉は、僕にとってのSWシリーズを端的に言い表している。日本でエピソード4が公開されてから42年。キャストたちと同じ時間の流れの中で、僕も同じように年齢を重ねた。映画の中の登場人物たちも、ほぼ一緒だ。なぜか分からないが、そう思うだけで感動を覚える。こんな希有な体験、ほかにはないだろう。残念なことに、20代の若い人に説明しても、こういった感覚は理解できないらしい。彼らが今後、僕と同じような感動を味わえる機会はあるだろうか。SWシリーズと出会えたのは、僕にとってすごく幸運なことだったと思えるのである。

 
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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 
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