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明けの明星が輝く空に 第198回:「ギャオ」なんて鳴いてない!

明けの明星が輝く空に 第198回:「ギャオ」なんて鳴いてない!

ガメラシリーズ第3作『大空中決戦ガメラ対ギャオス』(1967年)に登場した英一少年は、怪獣にギャオスと名付けた理由を聞かれてこう答えた。「鳴き声がギャオって聞こえるもん。」え?なに言ってんの?子供のころ、僕はそう思った。全然そんなふうに聞こえなかったからだ。ギャオスの出す音はもっと、「キャイコォォ」とか「キアオォォ」とかいった感じである。(怪獣の声ほど、文字で表すのが難しいものはない)

英一少年の発言は、怪獣対策本部でのものだ。制服姿の人々は、警察や自衛隊のお偉いさんたちだろう。もちろん、怪獣映画らしく博士もいる。英一少年はそんな大人たちの真ん中で得意げに怪獣の目撃談を述べる。誰かが「あの怪獣」と言えば、すぐさま「ギャオスだよ!」と間違いを正す。結局、皆が「ギャオス」と呼び始め、正式名称となった。鳴き声が「ギャオ」と聞こえなかった僕は、この現実的とは言えない流れに、子供ながらに違和感を覚えたこともあり、どこか偉そうな英一少年に対して大いに反感を抱いた。

昭和の特撮作品には、子供がしゃしゃり出てきたり、自分勝手な行動で迷惑をかけたりすることが多かった。そんな子供たちの見本市のような様相を呈していたのが、ガメラシリーズだ。「ガメラは子供の味方」という設定上、子供を中心に物語が進むのは当然ではあったが、映画の中の生意気そうな少年たちは虫が好かなかった。シリーズ第4作『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(1968年)では、停泊中の小型潜水艇に少年2人が勝手に乗り込んでイタズラ。そのせいで動かせなくなって困っている大人に対し、いけしゃあしゃあと自分たちなら動かせると言い放ち、再び乗り込んでまんまと水中遊泳を楽しんだ。2人はその後、異星人の人質となり、子供たちを助けたければ降服せよという要求が、人類に突きつけられることになる。

シリーズ第6作『ガメラ対大魔獣ジャイガー』(1970年)でも、自由奔放すぎる少年2人が登場。彼らは、ジャイガーによって仮死状態になったガメラの体内に、無断で小型潜水艇を使って進入。偶然、ジャイガーの弱点を見つけるという“お手柄”を立てる。結局、勝手な行動をとがめられることもなく、「子供たちの持っている素朴な直感と汚れなき魂を、大人になっても失ってはならない」という、(とってつけたような)教訓を得た、と語るナレーションが入り、彼らの行動は見事な美談として映画は幕を閉じる。

こういった子供の登場人物は、ガメラシリーズに留まらない。もうひとり、『ウルトラマン』のホシノ少年を忘れるわけにはいかないだろう。彼の自由奔放さも、誠に目に余るものがある。第2話「侵略者を撃て」では、科学特捜隊の車に隠れて乗り込み、見つかると「へへへ、まともに頼んだら置いてけぼりにされちゃうからね」と屈託なく言い放ち、車の中にいたことについて「気にしない、気にしない」とごまかす。こういった――天真爛漫だとか無邪気だとか言えば聞こえはいいが――立場や状況を一切無視した言動に、僕は腹が立ってしょうがない。さらに、あろうことか彼は科特隊本部の作戦室に、なぜか自由に出入りする。第3話「科特隊出動せよ」では、そこから武器を拝借し、科特隊専用機に潜り込んで、怪獣のいる現場まで無断で付いていった。そして、ひとりで怪獣に攻撃を仕掛けるのだが、逃げる際に転んで気を失い、倒れているところを発見される。その時、うわごとのように「ウルトラマン、ネロンガ(怪獣の名前)をやっつけてくれよ」などと言い、それを聞いた主人公のハヤタ隊員がウルトラマンに変身して怪獣を倒す。なんという都合の良さか!

こういった子供が嫌いなのは、僕だけではなかったらしい。同じような意見はネット上で簡単に見つかった。いわく、「勝手な行動をして」見ていても「イラつく」とか、「大人の領分に子供が強引に入ってくるのが嫌」などなど。中には、「子供は子供らしいキャラが嫌い」というような、大人が映像作品に登場させる子供についての真理(?)をズバリ言い当てているものもある。

そもそも、なぜ怪獣映画やヒーロー番組に、子供の登場人物が必要なのだろう。考えられるのは、子供の観客や視聴者の感情移入のしやすさを狙っているということだ。実際、子供が登場しなかったガメラシリーズの第2作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年)では、飽きてしまった子供たちが何人も席を立ったそうだ。また、作劇上の要請もあるかもしれない。子供がトラブルを起こせば、物語を展開させるきっかけとなる。さらに、ピンチに陥った子供を救い出すというエピソードを盛り込めば、その結末を誰もが見届けたくなるだろう。ちなみにSNS上には、足手まといの子供は、ヒーローの邪魔をしてはならないという反面教師として役に立っていた、という意見もあった。ふうむ。

ところで、ギャオスの名付け親となった英一少年だが、あらためて作品を観ると、なかなか愛嬌のある男の子だ。少しぽっちゃり気味のほっぺが愛くるしい。洞窟の落石で身動きが取れなくなるシーンなど、怖がっている顔を見ると守ってあげたい気分になる。「ギャオ」なんて聞こえないじゃないかとあの時は思ったが、彼に対するイメージは半世紀以上立ってようやく上書きされた。大人げないことを言うのはやめにしよう。こうして僕は今、英一少年との歴史的な和解に辿り着いた気分に(勝手に)なっているのである。

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】サッカーのW杯やテニスのウィンブルドンなど盛りだくさんなスポーツ界ですが、僕は世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランス一択です。今年はガリビエ峠もアルプ・デュエズも登場すると知って大興奮。酷暑なのが気がかりですが、今から楽しみです。

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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
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