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【第14回恵比寿映像祭が開幕】アート作品に字幕をつけるということ

【第14回恵比寿映像祭が開幕】アート作品に字幕をつけるということ
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映像翻訳者が字幕を手がけるのは映画やドラマだけではない。アート作品にも字幕のニーズがあり、そこにはアートならではの難しさがある。
 

恵比寿映像祭は、展示や上映だけでなくライヴ・パフォーマンス、インスタレーション、トーク・セッションなどさまざまなジャンルの作品を集めた“映像とアートの国際フェスティバル”だ。平成21(2009)年の第1回開催以来、年に一度恵比寿で開催され、今年で14回目を迎える。JVTA修了生の阪東真実さんはこれまで、この映像祭で展示される映像作品の字幕をいくつも手がけてきた。AR(拡張現実)の技術を扱ったメークアップ映像や、ギリシャ悲劇『オイディプス王』を題材にした作品などそのジャンルは多岐にわたる。今年は、香港生まれのアーティスト、サムソン・ヤン氏の映像作品《The World Falls Apart Into Facts》の字幕を担当した。この作品では、中国生まれのいくつかのアイコニックな音楽を通じて、文化の伝播と正統性について詳細に語られており、2008年の北京五輪のメダル授与式でも使用された中国民謡「Molihua(茉莉花)」が西洋に紹介された際のエピソードなどが興味深い。
 
13_サムソン・ヤン《The World Falls Apart Into Facts》2019/2020年(改訂) Production documentation/Photo Lily Yiyi Chan - コピー
サムソン・ヤン 《The World Falls Apart Into Facts》2019/2020年
Production documentation/Photo: Lily Yiyi Chan
 

「この映像作品は2本立てで、曲のパフォーマンスのみの映像とセリフ(ナレーション)のある映像があります。一見穏やかに進行するのですが、ナレーション部分の情報量も、映像中で目を引かれる箇所も非常に多い作品です。音声部分の内容はひととおり理解できたので、原稿は通常担当させていただくドラマやドキュメンタリーや産業字幕の案件と同じくらいの自信を持って納品しました。ただ、ご依頼が字幕制作だからといって音声や画面文字を訳せればそれで完璧になるとは限らないのが、映像翻訳という仕事です。」(阪東真実さん)
 

アート作品は、映画やドラマに比べて見る人に解釈が委ねられる部分が多く、人によって感じ方もそれぞれだ。翻訳者が勝手に解釈して字幕を付けるのはNGで、そこが字幕づくりにおける難しいポイントでもある。
 

「私はかつて、アーティストはインスピレーションだけで作品を作っているものだと思っていました。でも実際には、彼らはものすごく勉強をしていろいろなことを考え抜いた末に作品を生み出しており、その最終的なアウトプットの段階でインスピレーションを加えているのだと感じるようになりました。つまりアート作品では、本人がどういう意図でそのアウトプットを選んだのかという理由が必ずしも明らかではありません。『分かる人だけ分かればいい』という思いを感じることもしばしばです。アート作品以外で、そんな思いが見え隠れする映像にはまずお目にかかりません。」(阪東真実さん)
 

阪東さんは翻訳に取り組む際、作品そのものだけではなく、アーティストのバックグラウンドや過去の作品も調べる。その過程でいくつかの疑問は解けるが、それでも、アーティストの思考にすぐには追いつけないと感じることもあるという。
 

「ただ、私が担当させていただくような海外作品ともなると、アーティストが作品を通して伝えたいと思っている事柄は、翻訳に取り組む過程でいつの間にかこちらに伝わっているらしい、ということが分かってきました。おそらくは、私自身がすぐに言語化できていないだけで、アーティストのメッセージを作業中に受け取っているのでしょう。よって今は、翻訳の依頼をいただいた時点でその作品に興味が湧き、翻訳を必要とする部分の調査が手に負える範囲だと判断できて、この作品は自分が担当してよかったのだと言えるところまではできるという見通しが立てば(この3つ目の覚悟が、アート作品の場合は特に必要かもしれません)お引き受けしています。そして、実際に手を尽くして作品に向き合い、いつものように極力映像の邪魔をしない原稿を作成していれば、作品の解釈がゆるゆると進んで原稿を追認してくれる、という現象が起こります。これはアート作品以外の案件では経験した覚えがありません。結局、何かを翻訳するという作業の基盤となるのは、元の作品とその制作者の思いに向き合う姿勢であり、アートでもそれは変わらない、ということなのだと思います。」(阪東真実さん)
 

アート作品を担当するようになってから、阪東さんは自身も意識的に鑑賞の機会を増やしているという。今回は、香港出身であるというアーティストのバックグラウンドが、この作品に向き合うための大きな鍵となったと話す。
 

「作品に関して私からこれ以上何らかの解釈を述べることははばかられますので、皆様にはとにかく作品を見て、何かを感じて、自らの思考を深めていただけることを願います。」(阪東真実さん)
 

サムソン・ヤン 《The World Falls Apart Into Facts》2019/2020年
Production documentation/Photo: Lily Yiyi Chan
https://www.yebizo.com/jp/program/56016
 

14_第14回恵比寿映像祭_メインビジュアル(チラシ表面)
 

第14回恵比寿映像祭のテーマは、「スペクタクル後|AFTER THE SPECTACLE」。パンデミックによって、大きく変化した私たちの日常において、映像はより身近なメディアとして浸透し、社会、政治、経済、文化の変化を映し出すツールのひとつになっている。スペクタクルという言葉には、風景や光景という意味のほかに、しばしば壮大な見世物や天変地異なども含まれる。今年は、「スペクタクル後」をテーマに19~20世紀の博覧会や映画の歴史から現代にいたるイメージおよび映像表現について考察した内容となっている。ぜひ、足を運んで自らの感性で体感してほしい。
 

第14回恵比寿映像祭「スペクタクル後 AFTER THE SPECTACLE」
令和4年2月4日(金)~2月20日(日)《15日間》月曜休館
東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか
10:00~20:00 (最終日は18:00)※入館は閉館の30分前まで
入場無料(オンライン上映など1部有料)
https://www.yebizo.com/jp/

 

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