【フィンランド映画祭2022】字幕翻訳者に聞く 担当作品のみどころ
11月19日(土)、渋谷のユーロスペースでフィンランド映画祭2022が開幕、最新のフィンランド映画5作品が上映される。JVTAはこのイベントを字幕制作で協力しており、今年も3作品の字幕を修了生が手がけている。
ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)で最優秀主演男優賞を受賞した『タイタニックを見たくなかった盲目の男』や、2023年アカデミー賞国際長編映画賞のフィンランド部門候補作『ガール・ピクチャー』など、今現地で話題の作品がラインナップ。フィンランド映画というと、巨匠アキ・カウリスマキ、ミカ・カウリスマキなどシュールな作風が人気だが、今年もコメディ、ドキュメンタリー、ファミリー向けとバラエティに富んだ傑作が楽しめる。フィンランドで旬の傑作をいち早く堪能できるのは、まさに翻訳者の醍醐味。作品にじっくり向き合った3人の字幕翻訳者に担当の作品の見どころと翻訳のポイントについて話を聞いた。
◆『ウッドカッター・ストーリー』 監督・脚本:ミッコ・ミュッリラハティ
字幕翻訳 杉山由香さん
主人公はフィンランドの村で暮らす木こりのペペ。ある日、森で鉱山が発掘されたことを機に、彼の身に不可解で恐ろしい出来事が次々と起こります。つらい状況があっても、「何とかなる」と常に楽天家のペペでしたが、やがておぞましい現実を見ることになります。
この映画のジャンルはコメディですが、人間の存在意義という哲学的なテーマをはらんでいます。ジョークもシュールなものが多く、「ここで笑っていいの?」という感じです。翻訳では、そうしたシュールさが出せるよう心がけました。説明的なセリフは使われていないので、自分でどう受け止めるか、様々な解釈が可能な作品です。どうぞご覧ください。
◆『カラオケ・パラダイス』監督・脚本:エイナリ・パーカネン
字幕翻訳 小池綾さん
この作品はフィンランドでカラオケを楽しむ人々と、彼らが抱えるドラマを追ったドキュメンタリーです。日本とは少し違ったフィンランドのカラオケ事情も垣間見える作品になっています。
本作は歌詞の翻訳部分が非常に多かったのが印象的です。ほとんどが初めて耳にするフィンランド語の曲ばかりだったので、歌詞の内容が見ている人に分かりやすく伝わるように一人称や三人称の使い方を工夫しました。また、曲から伝わってくる世界観も反映できるよう試行錯誤しながら歌詞の訳出をしました。
この作品に登場する人々はカラオケに並々ならぬ思いを抱えています。彼らが歌う姿を見守りつつ、カラオケに参加するような気持ちで作品を楽しんで頂ければと思います。
◆『シーヒャ – 反抗的な妖精』監督:マルヤ・ピューッコ
字幕翻訳 武富香子さん
もい!(※)フィンランドは10年ほど前に一度行ったことがあります。その時に大好きになり、個人的に「もう一度行きたい国ナンバーワン」です。そんなこともあり、フィンランド映画祭の翻訳のお話をいただいた時は、とても嬉しかったです。
『シーヒャ 反抗的な妖精』は、おてんばな妖精と昆虫好きの少年が、当たり前の日常を脅かす環境破壊を食い止めようと奮闘する物語です。ファミリー向けの作品なので、いつも以上に「パッと見で分かる」字幕を心掛けました。擬音語・擬態語といった感覚的な言葉も、普段は使いたい気持ちを抑えることが多いのですが、この作品では思う存分に使えて、新たな楽しさを発見しました。
フィンランド映画祭、ぜひ足を運んでみてください。もいもい!(※※)
(※)もい! (フィンランド語でやあ! どうも!)
(※※)もいもい! (フィンランド語でバイバイ!)
◆フィンランド映画祭2022
2022年11月19日(土)~25日(金)
公式Twitter https://twitter.com/FinlandFilmFes
ユーロスペース
http://eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000637
◆予告編(英語字幕)は公式YouTubeチャンネルでご覧になれます。
フィンランド映画祭 2022 Finland Film Festival in Japan
https://www.youtube.com/channel/UC0vgKFCY_DfFur48SrTWXYA
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