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【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】始まりは映画への情熱 言葉のプロを育成する教育への想い

【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】始まりは映画への情熱  言葉のプロを育成する教育への想い

JVTAは1996年に開校し、今年で創業30周年を迎える。あらゆる動画の字幕や吹き替え翻訳を行うプロフェッショナルを育成する職業訓練校としてスタートし、これまで多くの映像翻訳者を輩出してきた。また、翻訳案件を受発注するエージェント部門を併設し、修了生がスクールで学んだスキルを活かして活躍するシステムを構築している。さらに長きにわたる指導経験から国内外の小学校から大学まで幅広い教育機関でも映像翻訳に関する授業を行うなど独自の事業展開が特長だ。

今回は代表の新楽直樹に30の質問を敢行。前編10問では創業時の理念やこれまでの変革の歴史、今後の展望などを聞いた(前編はこちら)。 後編20問では、仕事の必需品や愛読書、世界が終わる前日に観たい映画など、よりカジュアルな質問で新楽の素顔に迫る。

11.仕事をする上での必需品は?
新楽:手帳とボールペン。この2つは打ち合わせにも必ず持参しています。自ら書くことで感じ取れ、言語化できるものがあるからです。

12.30年前、映像コンテンツにおける現在の状況を予測していた?
新楽:創業当時、「近い将来、世界中の映像がシャワーのごとく日本に降り注ぐだろう」という確信はあったものの、正直に言えば動画配信サービスなども含めて、ここまですごい展開になるとは思っていませんでした。2000年ごろ当校の学校説明会で私は、ホワイトボードにパソコンの絵を描いて、「この1本のラインを通って世界の無数の映像コンテンツとつながるようになる」と話していました。とはいえ、当時はいくら力説しても実感を持てない人もいたようです。

13.JVTAの30年を一言で表すと、どんな言葉になる?

新楽:一言で言ったら「進化」。現在は外国人スタッフも増えてきました。ポーランドやフランスの学生がJVTAの志に共鳴してインターンを経て頼もしいスタッフになるなんて。たった一人でJVTAを作った時は想像もできなかった(笑)。

14.受講生・修了生との交流で、一番嬉しかったエピソードは?
新楽:JVTAがプロボノでサポートする事業の一つに難民映画祭があります。上映作品の字幕翻訳とはいえ、職業として映像翻訳を学びにきた人たちにボランティアでの協力を呼びかけていいものか悩みました。誰も見つからないどころか、怒られるんじゃないかと。しかし、翻訳作業には多くの受講生、修了生が手を挙げてくれたんです。さらにそのスピリットはJVTAの柱の一つとなって現在まで20年近く続いています。嬉しいです。

国際的な映画祭に字幕や吹き替えは欠かせない。JVTAは難民映画祭のほかにも、多くの映画祭を字幕や公式プログラムなどの翻訳でサポートしてきた。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」や世界最大級の日本映画の祭典「ニッポン・コネクション」、LGBTQ+などの性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)をテーマにした作品を集めた「レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」、映像クリエイターの登竜門として知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生した「東京国際映画祭」など、毎年さまざまな映画祭で多くの修了生が言葉のプロとして活躍している。

◆【2025】JVTAの映画祭サポート

JVTAには、スタッフも受講生も映画やドラマ好きな人たちが集まってくる。映画のエンドクレジットに自分の名前を残すことを目標に掲げる人も多い。毎期開催の新入生を迎えるウェルカムパーティでは、映画に関するコアなクイズで盛り上がるのもJVTAならではと言えるだろう。新楽の映画への想いを聞いてみた。

15.初めて夢中になった映画は?
新楽:小学生の頃に感動した映画は『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)。とにかく夢中でジュリー・アンドリュースのファンクラブに入って、事務局に「ジュリーに会いたい!」と手紙を出したほど。実はその時ファンクラブの方から一緒にハリウッドに行きませんか?と手紙をもらいましたが、まだ子どもだったので親に怒られて行けなかった…。2015年のアカデミー賞では同作50周年企画として、レディー・ガガがメドレーを披露。すると、ジュリーも登場して二人がハグを交わす場面がありました。時代を超えたスターの共演は泣けましたね。ちなみに、『サウンド・オブ・ミュージック』のNHK BSプレミアム版字幕は、修了生のチオキ真理さんが手がけています。50年以上も前に憧れた作品の字幕を修了生が担当していることにも、30年の重みを感じます。

16.観るたびに泣いてしまう映画は?
新楽:『ビッグ・ウェンズデー』(1978年)。サーフィン映画だと思っている人が多いけどベトナム戦争や米国社会の移ろいをテーマに据えた、骨太の青春ドラマです。

17.明日世界が終わるとしたら最後に観たい映画は?
新楽:アカデミー賞で作品賞をはじめ5部門を受賞した『羊たちの沈黙』(1991年)です。猟奇的なストーリーとシーンが強調されがちですが、FBI訓練生を演じるジョディ・フォスターの演技と醸し出す空気感は比類なきものです。

18.映画を撮れるとしたらどんな作品を作りたい?
新楽:一瞬の輝きを放ちながら時代に埋もれていった実在したヒーローやヒロインにスポットを当てたい。かつての女子プロレスの悪役を描いたNetflixの『極悪女王』のような。ちなみに次は昭和・平成の占い師として一世を風靡した細木数子さんの物語だそうです(笑)。

19.映画に出演できるとしたらどんな監督のどんな作品に出てみたい?
新楽:クリストファー・ノーラン監督の作品。『オッペンハイマー』のように時代や社会 に翻弄された人を演じてみたい。

20.映像翻訳者なら絶対に観ておくべき映画は?
新楽:ある映画祭の上映会に参加した時のことです。海外から訪れていたドキュメンタリー作品の監督が、「映画を撮り始めたきっかけは日本のジブリ作品」と話していました。ジブリ作品は、日本で映像に関わる仕事をするプロなら自国の文化として深く知り、語れるようにしておくべきだと私は考えています。翻訳者には世界の映画関係者と対話する機会がきっとある。その時、「この人は自国の文化を理解しているプロだ。ならば私の作品を託しても安心だ」と思わせるには、世界の多くのクリエーターが認めるジブリ作品について話すのが効果的。私が担当している日本語表現の授業で、開校以来、ジブリ作品をテーマにコラムを書く課題を出しているのは、それが理由です。

新楽は開校当時から自らも講師として受講生・修了生の指導を行っている。前述のジブリ作品に関するコラムや「いい邦題、悪い邦題」、フリーランスという働き方など実践的な内容が多い。30年という時間の中で受講生の反応に変化はあるのだろうか?

21.講師として授業をする中で反応が変わったと感じることは?
新楽:私はかつて雑誌の編集や書評の執筆などに携わっていた経験から、日本語表現に特化した授業を行っています。事前にテーマを指定し、受講生にコラムを書いてもらうのですが、文章力が全体的に上がっていると感じています。SNSやブログ、noteなど個人で文章を書いて発信する機会が圧倒的に増えているからでしょう。

長年同じテーマで授業を行う中で、興味深い発見がありました。それは「首ったけ」という言葉の捉え方です。洋画の邦題について、「いい感じと思う邦題とダメだなと思う邦題」についてコラムを書く授業の課題で、最も多くの受講生に選ばれたのが『メリーに首ったけ(原題:There’s Something About Mary)』でした。ただ、1999年から8年ほどの期間は、すべての人が「ダメな邦題」として取り上げていたのに、2007年ごろからは「いい感じ」に選ぶ人が現れ始めたのです。その後は「好き派」と「嫌い派」が同居するようになり、やがて2017年ごろになると「嫌い派」が消えた…。これはおそらく言語学研究としてもユニークで貴重なデータではないでしょうか。

新楽代表はコラムでも言葉に関する様々な考察を綴っている

◆Tipping Point Returns Vol.32 邦題が教えてくれる、日本語のややこしさと楽しさ

22.講師として授業をする中で反応が変わらないと感じることは?
新楽:フリーランスという働き方についての不安は変わらないと感じます。そしてその気持ちはよく理解できます。ですので、私が30年続けているフリーランスの働き方・営業法に関する授業では、できる限りの実例を示し、実践的なスキル指導などを行って、少しでも不安を解消してもらえるよう努めています。そのためには、私自身がフリーランスを巡る社会環境の変化を注視し、学び続けなければなりません。

23.映像翻訳者なら絶対に観ておくべきドラマは?
新楽:ドラマはテレビで観るのが主流だった時代、世界中の人に愛された作品からは、今も学ぶ点が多い。古いと切り捨てるのはもったいないです。たとえば『フレンズ』や『ビバリーヒルズ高校白書』など。今の時代に合わせた調整的な字幕翻訳もなされているのでぜひ観てほしい。

最近は旧作の続編やリブート、同窓会企画などの番組も多い。そのため、「大ファンだったあの作品の再翻訳に、まさか関われるなんて!」と驚く修了生も少なくない。

◆『フレンズ:ザ・リユニオン』24時間で字幕を完成させた舞台裏とは?
◆『ハリー・ポッター20 周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』 待望の話題作を手がけた「選ばれし者」たち

24.映像翻訳者なら絶対に読んでおきたい本は?
新楽:村上春樹氏と柴田元幸氏の共著『翻訳夜話』(文春新書)。翻訳とは何かを深く考える上で、大きなヒントがあり、刺激にもなる。

25.折りに触れて読み返す愛読書は?
新楽:村上春樹の初期4部作(「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」です。

26.この30年で実現した最も大きな夢は?
新楽:言葉のプロになるという同じ志を持った多くの仲間と出会えたこと。おそらく国内では最も多くの映像翻訳者がJVTAから誕生しました。また、映像や翻訳業界を超えて、JVTAでの学びを活かしてさまざまな分野で活躍する人の声を聞くことが増えました。夢のようです。

27.30周年を起点に実現したい夢は?
新楽:30年の間に映像翻訳者という職能は市民権を得ました。現在JVTAの業務だけでも年間約800名のプロが活動しています。「動画の時代」「AIの時代」への変化はさらに加速するでしょう。そうしたなかでもキラリと輝く言葉のプロの役割、新たな映像翻訳者像、バリアフリー字幕・音声ガイドのクリエーター像を定義し、示していきたいと考えています。

28.受講生・修了生の皆さんと今後実現したい夢は?
新楽:JVTAは学校教育部門に注力し、国内外の小学校から大学までの教育機関との連携を深め、授業や研究をサポートしています。一般的な翻訳会社や映像関連会社にはない大きな特長です。この領域での活動を、受講生・修了生の皆さんと広げていきたい。もちろん「言葉のプロとして活動しつつ」でOKです。私は「教えることは素晴らしいことであり、社会が最も必要としていることの一つ」という考え方をもっています。JVTAで学ぶ技能、そのエッセンスを日本、いや世界中の児童・生徒・学生に伝えてワクワクしてほしい、言葉を探究する楽しさや喜びを知ってほしいと願っています。嬉しいことに、それに賛同する学校や団体が少しずつ増えているのです。「教える」という仕事を、ぜひ受講生・修了生の有志と開拓していきたいですね。

◆「My Hometown Ito 英語で伊東のPRショート動画を作ってみよう!」
◆JVTAの教育機関プログラムの導入・講師派遣

コロナ禍以降、リモート受講の定着により、今や世界にJVTAの受講生、修了生が点在しており、国内外で語学力や映像翻訳のスキルを駆使している。ドイツの日本映画祭の会場での取材対応カナダの高校で映像翻訳のワークショップでの指導デンマークからJVTAのオンラインセミナーに登壇など、海外在住の修了生もそれぞれの場所で独自のキャリアを重ねている。海外在住歴が長い人にとって日本のスクールで専門的な職能を学ぶことは、現地でも新たな仕事との出会いに繋がるのだ。昨今はJVTAの指導の下で日本の作品に海外の大学で日本語を学ぶ学生が英語字幕をつける「海外大学字幕プロジェクト(GUSP)」も恒例となった。また、SDGsをテーマにしたドキュメンタリー作品を上映する無料のオンラインイベント「WATCH」では、国立東京外国語大学と共同開催し、日本国内外の大学生に字幕づくりを指導している。国内外の修了生がそれぞれの居住地域で言葉のプロとして力を発揮できるフィールドをJVTAは今後もさらに拡大していく。

「WATCH」公式サイト https://www.watch-sdgs.com/

29.30年前の自分に声をかけるとしたらどんな言葉?
新楽:「もっと働け!楽しめ!」(笑)

30.言葉のプロとこれから言葉のプロを目指す人にメッセージを。
AIの時代にこそ、この瞬間を生き、感動したり、せつなくなったり、そんなふうに迷いながらも、人々の言葉の行間や背後にあるものを感じ取る努力を重ねてほしい。そして、その強い想いとスキルで言葉を編み、紡いでいける人になってください。これからの社会はそんな人財を必要とするはずだからです。私はこれからも言葉のプロや目指す人、その志を支えるスタッフたちと歩んでいきます。

◆前編を読む

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学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。

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