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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #40  PAWN SHOPとリサイクルストア●斉藤良太(管理部門スタッフ)

【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #40  PAWN SHOPとリサイクルストア●斉藤良太(管理部門スタッフ)
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アメリカに滞在経験がある人なら一度は目にするであろう、店に大きく出された「PAWN SHOP」の文字。日本で言うところの「質屋」である。かつてハリウッドに滞在していた頃、街中には数多くPAWN SHOPがあった。石を投げればバンドマンに当たるほどミュージシャンが多く住む土地柄か、店内には窓の鉄格子越しに色とりどりのエレキギターが並んでいた。旅行者としてその光景を見たのなら「さすがハリウッド!」とテンションも上がりそうだが、世界中から音楽で一旗あげることを夢見てこの地に集結したミュージシャンたちが金に困って泣く泣く楽器を売りに来ているかもしれないことを考えると複雑な気持ちになったものだ。ただ、時間がある時は他の楽器店と同様にPAWN SHOPを周り楽器の物色をするのが楽しみだった。

時は過ぎて、今は外出先の各地で某リサイクルストアを見つけて楽器コーナーを探索するのが楽しい。特に楽器は地区によって取り揃えている商品の質も量も異なる。恐らくその店舗のスタッフの得意分野で力の入れ加減も異なると思っているのだが、同じ系列の店舗でもまるで楽器店のような品揃えから、申し訳程度に店内の片隅にコーナーが設けてあるところまでギャップがあるところがおもしろい。これは当たりだと思える店舗を見つけると、自分だけの宝のありかを見つけた気分だ。最近は店舗側でもその道に明るいスタッフが増えたように思う。以前より機会は減ったが、希少価値のあるものや市場価格よりも大幅に安いものを見つけて購入したこともあり、運がよければまるで古物商でいにしえの逸品に出会えたような興奮を味わうことが出来る。

あくまで私感だが、音楽をやっている人達が多そうな印象がある地区の店舗を訪れてみると、品揃えが良いことが多い。リサイクルストアは地元の人々が手持ちの不用品を売りに行く場所なので、その地域の人々の生活が色濃く反映されるだろう。だからその山勘が当たるのかもしれない。

それを証明するかのようなことがあった。群馬県の大泉町に訪れたときのこと。この町には大手自動車メーカーの工場があり、海外からの労働者達が多く暮らしている。特にブラジルからの人々が多く、中心街にはいたる所にカラフルなフォントのポルトガル語の看板やポスターが掲げられている。『孤独のグルメ』のファンならお馴染みのブラジルレストランがあるので知っている人もいるだろう。私も同ドラマのファンなので、少々遠出をしてそのレストランを訪れたことがある。その際、近所であのお馴染みの青と黄色の看板が目印のリサイクルストアが目に入ってしまった。そしてふと思い出したことがあった。

それはハリウッドの音楽学校に通っていた頃のブラジル人の友人達の言葉。うろ覚えだが「ブラジル人はギターを抱えて生まれてくるんだよ(笑)」。彼らの音楽への情熱は天性のもので熱かった。

そう、ブラジル人が多い大泉町でリサイクルストア…、確実に面白いに違いないと。

予感は的中し、店内でも大きなスペースを割いて楽器が並んでいた。やはりと言うか、ギターの数が他店舗と比べてひときわ多い。これまで訪れた事のある同支店の中でもダントツだった。店内の至る所から聞こえるポルトガル語が音楽学校時代の感覚を思い出させる。日本国内で思いかけずこのような体験が出来たのは、お目当てのレストラン以外の大きな収穫だった。

アメリカの PAWN SHOPはこの国のそれとは趣がかなり異なるように思う。どちらかと言えば日本のリサイクルストアと近いものと感じており、どちらも地域性の色濃い楽器屋のようなものだと勝手に捉えている。その土地の文化や風習や歴史を知るには、現地のスーパーで食文化の違いを感じたり、民芸店でその土地の伝統に感動したりと様々な方法がある。私はその一つとしてPAWN SHOPとリサイクルストア巡りも悪くないかもしれないと思っている。どちらも手持ちの品を売り買いする以上、扱われる商品には各々の喜びと悲しみ(少々大袈裟だが)が付きまとう。それにもプラスアルファの魅力を感じる。オンラインでは感じることができないリアルな感覚が、本当の意味でその土地の文化や風習や歴史を現実的な感覚として知ることに繋がるのではないかと…。長かった猛暑が終わり、過ごしやすい季節となった今、街で自分なりの気づきを見つけてみるのはいかがだろうか?


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Written by 斉藤良太

さいとう・りょうた●日本映像翻訳アカデミー・管理部門スタッフ。日英映像翻訳科修了生。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
 
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