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【修了生の岡崎秀さんが翻訳】旗の多様性とその背景にある物語を知る図鑑が出版

【修了生の岡崎秀さんが翻訳】旗の多様性とその背景にある物語を知る図鑑が出版
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「旗」というと、まず国旗をイメージする人が多いだろう。今年は東京でオリンピック、パラリンピックが開催され、特に多くの国旗を目にした年でもあった。しかし、日経ナショナル ジオグラフィック社の書籍『旗の大図鑑 国旗から信号旗・レース旗・海賊旗まで』を見ると、その多様さに驚かされるはずだ。1500点を超える図に加え、多くの国や団体の旗が紹介され、旗が生まれた背景、変遷の経緯などが解説されている。この作品の原書はフランス語。日本語訳をJVTA修了生の岡崎秀さんが手がけ、2021年7月に日本で出版された。
 

「旗に特化しているといっても、さまざまな国・組織・団体が旗を持っているので、旗の後ろにある存在に関する情報がこの本には詰まっています。幅が広いだけに、調べる作業も多くありました。各国の歴史が短くまとめてありますが、歴史に関する基本的なポイントを理解していないと、短い説明を正確に訳すことができません。私はあまり歴史に強くないので、歴史に関する調べ物にはいつも苦労します。例えば神聖ローマ帝国やドイツの歴史、ナポレオンなどについていつも混乱してしまうので、毎回、調べ直すことに…。あまり親しみのない国の歴史はゼロから調べなければなりません。これは翻訳者がみな痛感することではないでしょうか。」(岡崎秀さん)

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※ソビエト連邦の崩壊
 

翻訳者にとって調べものは欠かせない作業だ。書籍や信頼できるサイトから事実を確認する中で自らの知識も増えていく。それが翻訳者という仕事の醍醐味ともいえる。岡崎さんも今回、この本を翻訳しながら旗に対する、いくつかの発見があったと話す。
 

「例えば2002年に独立した東ティモール民主共和国のことは当時、ニュースなどで話題に上がっていましたし、また、『カンタ!ティモール』という日本の女性が作ったドキュメンタリーを観たことがあったので、この国に関する知識は少しありました。でも国旗には4世紀以上続いた植民地時代の苦しみ、独立、未来への希望が託されていることを初めて知りました。」(岡崎秀さん)
 

この図鑑には国旗だけでなく、アボリジニやマサイ、マヤなど民族の旗も多く掲載されている。中学高校時代の4年間をオーストラリアで過ごした岡崎さんは、先住民族アボリジニの存在はもちろん知っていたが、当時、彼らの存在が社会で取り上げられることはあまりなかったという。
 

「最近はアボリジニの地球と共に生きる哲学や絵画が一部で注目を浴び、私もアボリジニに関して興味を持ち始めていました。彼らの旗があること、それは彼らのモットー『我々は赤い大地の上、太陽の下で生きる黒い民』を表していると、この本で知りました。(岡崎秀さん)
 

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※アメリカ大陸の先住民
 

国旗というと四角や三角の幾何学模様を連想し、厳格なイメージを抱く。しかし、この図鑑にはユニークなデザインの国旗も数多く紹介され、その背景にある物語を知ることができる。
 

「サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島の国旗にはライオン、トナカイ、マカロニペンギン、ゾウアザラシが登場します。鷲など威圧的な動物でないことが微笑ましいです。ドイツベルリン州の旗は後ろ足で立っている一頭のクマが描かれています。エクアドル国旗の中央にある国章には国を象徴する山、川、美しい風景が描かれています。ベリーズの場合、マホガニーの木を背景に人種の異なる二人の男性が斧と櫂を肩にかけています。ちょっと心を和ませる物語のような光景です。アメリカモンタナ州の印章は山、川、木が描かれた風景で、アニメのワンシーンみたいに可愛らしいです。」(岡崎秀さん)
 
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※花と樹
 

さらに興味深いのが、「共通言語としての旗」だ。赤十字社や世界自然保護基金(WWF)、国境なき医師団などNGOの旗や、世界中の船舶で用いられる国際信号旗や海上旗なども数多く集めている。岡崎さんは信号旗に関しては、全く親しみがなく調べるのに時間がかかったと話す。翻訳をするうちに、旗とは、最もシンプルなコミュニケーションツールであり、図柄だけで成立した一枚の布で、ほとんどの場合文字がなく、読み解くのではなく、一瞬で理解できるものであると感じるようになったという。
 

「旗は不特定多数に向けられたもので、メッセージを伝えることだけを目的とする旗もあります。例えばモーターレースでは旗を振ってレーシングドライバーにサーキットの状況やゴールしたことを伝える。海岸では遊泳区域や海の状況を知らせる。また、赤十字の旗や白旗は、戦闘区域で『この人を攻撃するな』というメッセージを発し、これを掲げる人を守る役目を果たす。多くの場合、旗はメッセージを伝達するだけでなく、心に作用を及ぼす機能を持っています。国や組織の旗はそれに属す人をまとめ、お互いをつなげ、そこには仲間意識が生まれます。国旗は愛国心を高める作用を及ぼします。その旗を見ただけで自分の国を大切にする感情が湧いてきます。オリンピックやサッカーのワールドカップで自分の国を応援する気持ちが芽生えます」(岡崎秀さん)
 
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※白―停戦の色
 

岡崎さんは、東京オリンピック、パラリンピックで自分が知っている旗を見ると楽しい、嬉しい気分になり、その背景を知ったことで選手たちにも親しみが湧いたという。一方で、海賊の旗には襲おうとしている商船の乗組員に恐怖を与えるため、旗に死を連想させる模様を描いたという事実も知り、映画に登場するだけでなく、実際に海賊はいたんだと実感する。
 

時に旗は、人の心にネガティブな作用を及ぼす(影響を与える)時もあるのだ。
「ドイツの第三帝国時代、ヒトラーは鉤十字のナチス党の党旗を国旗に定めました。仲間は保護するが、よそ者を退ける、危害を加える、そんな暴力的な考えや行為(こと)の正当化につながる道具になりかねません。図柄を描いただけの一枚の布がそれほど強い力を持ち得る。旗というものは危険なものにもなりうる… 。調べるほどにさまざまな背景を知り、複雑な気持ちにもなりました。」(岡崎秀さん)
 

日本の都道府県の旗や、LGBTのシンボル「レインボーフラッグ」など多岐にわたる旗がテーマ別に収録され、興味深い。また、アメリカ合衆国やベネズエラ・ボリバル共和国など政治体制によって何度も変更した国旗の変換なども図解されている。デザインに注目し、最も使われている色や、モチーフなども解説されている。
 

「旗は少数民族やLGBTQなどそれまで認められなかった人々に正当なアイデンティティや誇りを付与し、希望の象徴となります。ウィファラというアンデスの先住民の旗は1944年にアンデスの人々の連携を示すために作られた旗ですが、2009年には多民族国家のシンボルとしてボリビアの第二の公式の旗となりました。7色からなるカラフルなデザインです。」(岡崎秀さん)
 
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※オセアニア、中東と中央アジア
 

日常生活で、こんなに多くの旗を目にする機会はまずない。これだけの情報を調べてまとめた岡崎さんの翻訳の苦労が偲ばれる。
 

「小学校中学年以上の子供にとってきっと面白い本でしょう。眺めるだけでも楽しいと思います。世界に向けて視野を広げてくれるのではないでしょうか。実際、この本を買った知人からそのような意見をいただきました。大人にとっても同じ学びがあるだろうと思います」(岡崎秀さん)
 

皆さんもぜひ、手にとってほしい1冊。翻訳の調べものにも役立ちそうだ。
 

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『旗の大図鑑
国旗から信号旗・レース旗・海賊旗まで』
発行:日経ナショナル ジオグラフィック社
エリザベト・デュモン=ル・コルネク 著
岡崎 秀 訳
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/product/21/052500017/

 
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