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【開催レポート】「プロの字幕翻訳者」と胸を張って言えないあなたへ “自己流”を脱して“本物”になるための字幕翻訳集中ワークショップ

【開催レポート】「プロの字幕翻訳者」と胸を張って言えないあなたへ “自己流”を脱して“本物”になるための字幕翻訳集中ワークショップ
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動画配信サービスのグローバルな発達で、海外の映像作品は一層身近な存在となりました。これは、字幕翻訳のニーズが高まっているということ。独自に映像翻訳の仕事を始める人も増えてきました。しかし、他ジャンルでの翻訳経験や語学力を生かして字幕翻訳の仕事を手がけている人の中には、依頼元からの評価が高まらなかったり、仕事の幅が広がらなかったりする翻訳者が少なくありません。
 

そこで、日本映像翻訳アカデミーでは2月8日と15日に「映像翻訳スクールで学んだことがないまま英日字幕の実務に携わっている人」を主な対象とした人数限定・二日間のワークショップを開催。課題へのフィードバックとディスカッションが中心の後半で見えてきたのは、「他者の視点から自身が作った字幕を見つめなおす作業」の大切さでした。
 

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課題作品は、さまざまな人種・境遇の人たちのインタビューを集めたドキュメンタリー。祖国から離れた地で、障害を乗り越え、社会の中で人生を良い方向に進めた人々が質問に答えていきます。ワークショップ参加者らは、自分が付けた字幕を他の人の意見も聞きながら振り返っていきます。
 

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作品のテーマから、字幕のトーンを探る

作品はインタビュアーの質問から始まります。「あなたの出身国は?」――果たしてこの訳し方で良いのか、早速質問が出ます。この作品は人々のルーツを聞くもの。インタビュアーは国について聞いているが、「もっと普遍的なルーツを聞いている質問に変えた方がいいのでは?」。
 

そこで、講師の桜井徹二が問いかけます。「この作品のテーマって何でしょう? 一つは“障害”で、もう一つは、その国の生まれではないということですよね」。登場人物らが、“障害”と“文化が異なること”の二つの壁をいかに乗り越えるか。そして、この人たちを受け入れるその国の社会の「寛容さ」が落ち着きどころではと語ります。
 

参加者らはこの問いかけを出発点にディスカッションを続け、作品のテーマや方向性で、字幕のトーンを決めてもいいという気づきに至りました。インタビューに答える人々の回答を「○○生まれです」ではなく「私のルーツは○○です」といった語り方する工夫も、作品のメッセージを伝える方法の一つです。
 

話者の“頭の中”に思いを巡らせる

字幕一つひとつを検討していく中で「伝統的(Traditional)な家庭で育ちました」と語る女性の字幕を直した方がいいと感じたのは参加者のうちの一人の女性。「“昔ながらの家庭”といった言葉に替えた方がいいと思いました。ここでは、もっと普通に祖父や祖母、一、二世代前の人の言うことを大切にするような家庭を指しているのではないでしょうか」。
 

教室ではどんな言葉がいいかディスカッションされ、「伝統的」という言葉よりも“典型的”や“昔ながらの”に変えた方が、よりピンポイントで伝えることができると分かりました。“伝統的”でも間違ってはいないが、言葉が捉えるものが広くて、話者が想像しているものが伝わりづらい。“Traditional”の意味をどういうニュアンスで言っているか、話者が頭の中でどういうイメージを描いているのか思い巡らせることの大切さを確認しました。
 

自分の視点を常に意識する

その後も、「文字数が短くなりすぎてしまった場合の対処が分からない」「字幕での“障害者”の表記はどうするべきか?」などのテーマで字幕へのフィードバックとディスカッションが続きます。
 

一貫して、ワークショップの中で大切なポイントとして上がったのが「視聴者目線」で字幕を考えることの大切さ。視聴者目線を保ち続けることは簡単ではなく、どうしても“翻訳者目線”の訳が入ってしまうことがある。翻訳したから、こうしたから、原文がこうだったから――それをぐっと抑えて、フラットな目で見ることの必要性が明らかになりました。
 

最後に桜井講師からは「(視聴者と同じように)初めて観る・原文も知らない・次の展開がどうなるのか気になる――そんな視点を常に意識していただきたい」と締めくくられ、ワークショップは幕を閉じました。
 

* * *
 

ギグ・エコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態)の拡大にともない、字幕翻訳の仕事を独自に引き受けることが容易な時代となりました。しかし、独自のやり方で実務をこなしても必ず限界はくるもの。映像の中の話者が何を伝えようとしているのか、映像を見る人がその言葉で何を受け取るのか――さまざまな視点が絡み合うのが映像翻訳の難しさであると同時に、楽しさなのかもしれません。
 

●「“自己流”を脱して“本物”になるための 字幕翻訳2日間集中ワークショップ」
バックナンバーはhttps://www.jvta.net/tyo/jimaku-freelance-2days/
 

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