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修了生の小松原宏子さんが執筆・英訳した『かぐや姫』の英語絵本『kaguya』が出版

修了生の小松原宏子さんが執筆・英訳した『かぐや姫』の英語絵本『kaguya』が出版
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日本人なら誰でも馴染みのある“かぐや姫”のお話。でも皆さんはその詳細をどこまでご存じですか? JVTA修了生の小松原宏子さんがこの『かぐや姫』の英訳絵本『Kaguya』を執筆し、出版されました。和の雅な世界を美しく描いたのはイラストレーターのhirokoさん。英語監修は、オーストラリア出身で『COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン〜』(NHK BS他)に出演中のジニー・ションさんが手がけています。出版の三恵社の日比享光さんによると「図書館からの注文もあり、英語を学ぶ日本人、日本語や日本の文化を学ぶ外国人など子どもから大人まで幅広く手に取ってもらえる1冊だと思います」とのこと。この作品が出来上がった経緯について制作を手がけた皆さんにお話を聞いてみました。

 
★小松原宏子さん(日本語文・英訳)
JVTAの修了生。映像翻訳者のほか、児童文学作家としても活躍。著作に『いい夢ひとつおあずかり』(くもん出版)、『名作転生』1巻~3巻(学研プラス)、『ホテルやまのなか小学校』シリーズ(PHP研究所)。翻訳に『スヌーピーと、いつもいっしょに PEANUTSを生んだチャールズ・シュルツ物語』(学研プラス)『ひかりではっけん!シリーズ』(くもん出版)など。

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※小松原さんが翻訳や執筆などを手がけた作品

 
◆日本の昔話の英訳を作るのは初めての試み
これまで『あしながおじさん』や『若草物語』といった英語の原作を訳して児童書用に分かりやすく日本語でまとめるという“編訳”の仕事はしたことがありました。また過去には昔話の『わらしべ長者』を子どもの絵本用にまとめたこともあります。今回は長い原作の『竹取物語』を読んでから絵本用に完結で分かりやすい日本語にまとめ、それを自分で英訳しました。

 
日本語原稿は、かなり完成度を上げて作りこんでから英訳と共にジニーさんにお渡ししたのですが、彼女が整えてくれた英訳から日本語に訳そうとするとやはり言語の根本的な違いから微妙にズレが出ます。日本語や英語を勉強している人が対訳としてきちんと照合できることを意識してきっちり合わせることを心がけ、再度私が英語に合わせて日本語を調整する作業を行いました。これまでのさまざまな仕事のパターンがMIXされた内容で、私にとっても初めての試みでした。
※絵本には日本語訳が付録としてついています。

 
◆『竹取物語』は残酷さもある大人向けのお話
私自身、今回改めて『竹取物語』を読んでみて、かぐや姫に求婚する5人の皇子の話は知っていたものの、御門と相思相愛だった話を再認識しました。hirokoさんの綺麗な絵に彩られた絵本でありながら皇子たちの結末には残酷な一面もあり、決して子ども向けだけの物語ではないのだと分かりました。この絵本も大人が改めて見てくれたら嬉しいですね。
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※『Kaguya』より

 
◆日本ならではの物語を英語にするのは難しい
例えば、日本語なら「翁」「おじいさん」「老人」「お年寄り」などさまざまな言い換えをして言葉が被らないように意識していても、英語になると同じになってしまう。日本語の細かいニュアンスを英語で出せないのではと悩みました。結局、彼らの名前を「おきな」「おうな」として全体で統一しています。かぐや姫に求婚する5人の男性も“皇子”であり、“王子”ではありません。そのニュアンスをどう伝えるのかも問題でした。ただ、英語に訳しやすい表現を考えながら作ると日本語としてつまらなくなってしまうので、私は日本語として完成されものを目指し、あえて英語でどうなるかに引きずられないように作りました。また、絵本は絵が主役ですから、絵の邪魔をせずに情報を補足する文章を心掛けました。
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※イメージ

 
◆イギリス人の友人にも好評
『かぐや姫』は日本人なら誰もが知っているお話ですが、馴染みのない外国人の皆さんが初めて読んで面白いと思えるかどうかが腕の見せどころです。イギリス人の友人にこの本を送ったところ、とても楽しんでくれました。この作品の最後に富士山という名前が誕生した由来が書かれていますが、それが興味深かったそうです。友人も富士山が好きで日本では眺められるところで暮らしていたからだとか。日本人でもこの由来を知っている人は少ないと思うので、ぜひ読んでみてください。
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※富士山 イメージ

 
◆日本人学生の教材として使う予定
私が日本人の学生に教える翻訳の授業で教材として採用する予定です。英文と日本語訳を基にして、読者を想定して日本語を訳し分ける学習に使いたいと思っています。子ども向けか大人向けかで、言葉遣いが変わってくるはず。絵本ということでシンプルな日本語で書き、シンプルな英語に訳したもの。英語を学び始めた小学生にも読んでもらいたいし、日本で学ぶ外国人にも日本語や日本の文化を学んでもらえたら嬉しいですね。
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※イメージ

 
★hirokoさん(絵を担当)
愛知県在住。愛知教育大学美術科卒。講談社フェーマススクールズ修了。手芸糸メーカー・デザイン室勤務を経てフリーのイラストレーターに。人物を中心にストーリーの感じられる絵をアナログならではの線と色彩で描く。主な画材は鉛筆、色鉛筆、アクリル絵の具、コラージュなど。書籍の装丁や挿絵も数多く手がける。

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※hirokoさんが装丁を手がけた作品
「はるかなるアフガニスタン」左、「続カンヴァスの向う側 リディアとトラの謎」©hiroko

 
◆『Kaguya』誕生のきっかけはボローニャの国際見本市
2014年にボローニャ国際見本市に【クリエイターズファクトリー】というグループで出展し、私のイラスト(下記の「evergreen」)を展示したところ、カナダの出版社から「日本らしいお話の絵本を作り、カナダで出版しませんか?」との声がありました。当時はまだ絵本という形での制作はしておらず、児童書の表紙・挿絵や教科書の挿絵等を描いていたため、小松原様に相談しました。そこで「日本で一番古い物語を英訳したら面白いものができるのでは?」と話し合い、二人で文章と絵をそれぞれ制作することに。その後、三恵社様とのご縁ができたことがきっかけで出版が実現しました。

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※「evergreen」(左)、「猫と金魚」(右) ©hiroko

 
◆大人でも楽しめるよう絵巻物を意識して制作 
絵に関しては子ども向けにはせず、大人でも楽しめるようにと心がけ、また絵巻物を想起するようなデザインにしました。文章も原本になるべく沿う形にしつつも、読みやすい文章に書いていただきました。さらにネイティブの方でも違和感なく読んでいただけるように、ジニー・ションさんに丁寧に監修していただきました。海外での出版に関しましては、現在最初にお声掛けいただいたカナダの出版社で検討していただいています。またジニーさんの母国オーストラリアでの出版も夢に見ております。今春4月3日~5日有明ビッグサイトで開かれるクリエイターEXPOでも広く宣伝していく予定です。Kaguyaが第一歩となり、他のお話も英訳本にできたらと思っております。
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※『Kaguya』より

 
◆教育現場での活用など広く利用してほしい
この絵本は、できれば図書館や学校などにおいていただき、よく知っているはずのお話を、英語を通して新しい視点で楽しんでいただきたいですね。本格化してきている小学生も含めた教育現場で、副読本という形でお使いいただけたら、と考えております。さらには日本在住でも日本語が読めない外国人の方の日本の昔話に触れていただけるきっかけや、留学生や観光でいらした方におみやげにも活用していただけたら嬉しいです。
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※「石ころ」 ©hiroko

 
◆ジニー・ションさん(英語監修を担当)
オーストラリア、メルボルン生まれ。2009年に日本に移住し、現在はフリーランスの通訳者、翻訳者、通訳ガイドとして活躍。『COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン〜』(NHK BS他)や滋賀県米原市のPR動画「Cool Maibara!?」に出演中。読書が趣味で特に村上春樹や辻村深月、吉本ばななが大好き。


※ジニーさんが出演する米原市役所YouTubeチャンネル Cool Maibara!? vol.1

 
I didn’t know “Taketori Monogatari” before coming to Japan. The reason I came to know it is because I saw Takahata Isao’s ” The Tale of The Princess Kaguya “. I am not a Japanese, and it is not a story I knew from a young age, but I was moved from the bottom of my heart. In other words, I felt there was a special connection with the story of Princess Kaguya. Not only the story, but the atmosphere is also similar. Therefore, when I started checking the sentences written by Komatsubara-san, I didn’t think that it was difficult. Of course some parts were difficult, but it took less time than I expected.

 
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※『かぐや姫の物語』 高畑勲監督

 
I haven’t actually studied translation or interpreting at university, but after studying and living in Japan for over ten years, I now do a decent amount of freelance translation and interpreting. The thing I find most difficult when translating from Japanese to English is trying to translate the minimalistic style of Japanese sentences into natural and normal sounding English. Japanese sentences can sometimes even be like “haiku” poems and only the essential information is written. If you translate this kind of sentence directly into English, it can sound very unnatural. Native English speakers are used to reading detailed and well explained sentences. Who, what, where, when, why and how is important. I read a lot of Japanese books and novels and the “subject” can often be a little unclear because it is not always written. When I translate something into English, I have to put the “subject” in myself. This can be a little difficult at times because sometimes I’m not sure if the nuance is correct or not. Also, I feel that at times, Japanese writing does not include as many describing words as English writing does and can therefore sound a little strange if you translate the Japanese as is.
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※イメージ

 
Another difficult thing I found when I was supervising the “Kaguya” project was how to translate Japanese play on words. For example, in the story, the original name of Mt. Fuji was 不死 and there was a sentence which talked about this and the relation of Mt. Fuji and immortality. A Japanese person would know immediately that this kanji has a double meaning but an English speaker reading a translation would need a lot more explanation.

 
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『Kaguya』
文・英訳/小松原宏子
絵/hiroko
監修/ジニー・ション
装丁・デザイン/大坪奈穂
発行/株式会社 三恵社
https://www.sankeisha.com/book-search/detail/20181101145817

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