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<イベントレポート>映像翻訳を通して学生たちが考える 難民問題に対して今できることとは?

<イベントレポート>映像翻訳を通して学生たちが考える 難民問題に対して今できることとは?
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8,240万人。2020年に算出された「難民」と呼ばれる人たちの数だ。世界で最も多いのはシリアからの難民で現在670万人ほどだという。
 

今年、明星大学国際コミュニケーション学科の学生たちが字幕翻訳を手がけた作品『シリア・ドリーム ~ サッカーにかけた未来』はそのシリア難民が主人公のドキュメンタリー映画だ。ヨルダンのザータリ難民キャンプで暮らすシリア出身の10代の少年、マフムドとファウジは母国で内戦が続き、難民として異国での生活を余儀なくされた。将来の見通しが立たない中で、2人は大好きなサッカーのプロ選手になることを目指す。いつか自由になれることを信じながら、今を生きる少年たちのリアルな姿が映し出されている。
 
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学生たちは8日間をかけて、全編に字幕を付ける作業を行った。指導したJVTAの講師は「どの学生も真面目に取り組み、初稿の時点で翻訳レベルが高かったため、十分に日本語を練る時間も持てた」と話す。作品を通して同年代の難民たちの生活を知り、学生たちは何を考え、どう感じたのだろうか。12月4日(土)に上映会とトークイベントがオンラインで開始された。
 

●翻訳作業を通して難民問題と向き合う
JVTAでは2014年から明星大学人文学科国際コミュニケーション学科の学生が履修する「映像翻訳」で字幕翻訳を指導。これまで学生たちが手掛けた作品は難民問題をテーマにしたものがほとんどだ。単に訳す技術を学ぶのではなく、翻訳という作業を通して社会で起きている問題に向き合い、深く考えることもこの授業の目的の1つである。
 
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※作業に取り組む学生たち
 
●監督と主人公から学生たちへ動画メッセージ!
上映会の前半は学生による難民についてのプレゼンテーションや映像翻訳の授業の説明などが行われた。履修した学生たちからは「翻訳は大変だったが、達成感があった」「決まった文字数に収めるのが難しかった」などの感想があったそうだ。また進行役の学生は「ストーリーを深く読み解く力や、映像に出てくる情報が正しいものなのかを調べる力も養えた」と付け加えた。
 
学生たちは上映会に先駆けて、アリ・エル・アラビ監督と主人公の一人であるマフムド・ダーギルさんからビデオメッセージを受け取っていた。本編に入る前に流された動画で監督は学生たちに日本での上映と字幕制作に対する感謝の気持ちを、覚えたての日本語で伝えてくれたのだ。また、マフムドさんは「すべての難民が望むのは、社会に参加する機会なのです」と今回の上映の意義深さを述べた。
 
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※アリ・エル・アラビ監督(左)と主人公の一人であるマフムド・ダーギルさん(右)
 
●字幕を付けて、上映することがまさに難民問題を啓もうする1つのアクション
作品上映後は、国連UNHCR協会の天沼耕平氏をゲストに迎え、学生たちの視点から難民支援やこの映画のテーマの1つでもある難民たちの夢について話を伺った。

「難民問題をなくすために、世界の人々は何をすべきか」という学生からの鋭い質問に対し、天沼氏が1つの取り組みを例に挙げた。それは、2018年12月に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト(Global Compact on Refugees)」だ。難民が増加の一途をたどる中、特定の団体や地域だけが支援するのではなく、世界中のすべての国、企業、団体、個人が自分たちにできることを考えて実行していく取り決めである。まさに今回の上映会のように難民をテーマにした映画に字幕を付けて、上映することは1つのアクションであり、このような事例を積み重ねていくことが難民問題の啓もうや解決へと繋がっていくと天沼氏は言う。学生も、授業を通して、難民問題に興味を持つ人が増えて、その意識がもっと広がるべきことだと実感したようだ。
 
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※国連UNHCR協会の天沼耕平氏がゲストで登壇。
 
映画の後半で、国際大会アルカス・インターナショナル・カップに参加したマフムドが記者会見でこう訴えた。
 

「難民には同情ではなく、チャンスを」
 

天沼氏は日本にいる難民の大学生と接する機会があり、彼らのバイタリティや行動力に驚かされたという。そんな彼らにチャンスを与えるのではなく、彼らと一緒にチャンスを作っていくことで、彼らが活躍できる場も広がっていくのではないかと思いを語った。
そして、最後に学生にメッセージを送った。
「難民に限らず、身近に困っている人がいたら、まずは自分事と捉え、彼らの気持ちに寄り添ってあげることが大切。その中で、かけるべき言葉やできることが見えてくるはずです」
 
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※当日は進行や運営も学生たちが行った。
 
それぞれの場面に適した字幕を考えるためには、登場人物の表情や動きからその心情を汲み取ることは重要な作業だ。今回履修した学生の一人は、日常生活においても、相手の表情などを見て気持ちを想像したり、コミュニケーションについて深く考えたりすることが多くなったという。それが天沼氏のアドバイス「自分事として捉えること」「相手の気持ちに寄り添うこと」の一歩になるはずだ。
 
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※今年「映像翻訳」を履修した学生たち
 
▶2021年度 明星大学 特別上映会/UNHCR WILL2LIVE パートナーズ 特設サイト
▶こちら
 
▶昨年の上映会では高橋尚子さんがゲストとして登壇しました。
▶こちら
 
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