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【秋期セミナーレポ】ニールセン北村朋子さん「映像翻訳から学んだこととイマ、ミライ」

【秋期セミナーレポ】ニールセン北村朋子さん「映像翻訳から学んだこととイマ、ミライ」
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JVTAの秋期リモート・セミナーの第1弾『‘ことばの力’で切り開く、新時代のビジネス・スタイル〜果てしなく広がるLinguistの可能性 国家事業の現地コーディネートから本の執筆まで活動の原点は、映像翻訳を学んだことだった〜』に修了生のニールセン北村朋子さんが登壇。国内外(アメリカ、アルゼンチン、スペイン、デンマーク、ドイツ、カナダ、シンガポール、オーストラリア、イギリスなど)から約100名の皆さんが参加してくださいました。
ニールセンさんアップ3

 
ニールセンさんはJVTAの修了生。日本で約5年映像翻訳者として活動後、デンマークのロラン島に2001年から移住し、現在はCultural translatorとしてテレビ番組取材のコーディネートから、政治家や官僚の視察や会談での通訳など、さまざまな現場で活躍しており、デンマークの外国人記者協会で唯一の日本人メンバーでもあります。
ロラン島2

 
◆英語は得意ではなかった?!
子どものころはセサミストリートのカーミットが大好きだったというニールセンさんですが、意外にも英語の成績は良くなかったそう。英語を本格的に学んだのは、社会人を7年ほど経験した後の米国留学でした。帰国後、通販会社のコーディネーターになり、JVTAに通い始めます。

 
「英語はただできればよいのではなく、英語ができたら何ができるかを考えることが大事。JVTAでの受講中は課題がとても多くて大変でしたが、学びの多い1年間でした。この時の経験が今の仕事の中でとても役立っていると感じています」(ニールセンさん)

 
◆スポーツ番組の現場で翻訳力を鍛えられた
JVTA修了後、映像翻訳者としてデビューし、主にスポーツ番組を担当。スポーツ番組は新鮮な情報が命なので2時間くらいで翻訳してその日のうちに放送というパターンで翻訳力が鍛えられました。手がけたのは、バスケットボールやアイスホッケー、アメリカンフットボール、クリケットなどの番組です。馴染みの薄い競技も多く、調べものやスピード、翻訳の精度などでとことんダメ出しをされてハードな現場だったそうですが、優先順位をつけて仕事を効率的に進める術が身についたといいます。
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「やがて、大好きなサッカーのプレミアリーグを担当し、誰よりも早く試合を観られてインタビューを聞ける喜びを実感しました。でも、サー・アレックス・ファーガソンのインタビューはスコットランドなまりでリスニングに大苦戦。何度聴いても分からず、同じインタビューを40回から50回も聴いて泣きながら翻訳したこともあります」(ニールセンさん)

 
◆日本のTV番組制作のコーディネーターとして活躍
メディア取材2
現在、デンマークで行う仕事の一つがメディア取材や日本の番組制作のコーディネートです。雑誌の取材をはじめ、市民活動のサポート、デンマークのサッカー選手、ブライアン・ラウドルップ氏のインタビュー、『日立 世界ふしぎ発見』のフェロー諸島ロケ、TBSテレビ『世界遺産』のグリーンランドのロケ、現在デンマークのプロリーグで活躍中の日本のハンドボール女子代表、池原綾香選手のエージェントやクラブとの契約時のサポートなど、さまざまな現場に立ち会っています。

 
メディア取材・コーディネートの仕事2
「事前の詳細なリサーチや現場での通訳、取材後の翻訳や追加の調べものなどにJVTAで学んだスキルが存分に活かせています」(ニールセンさん)

 
◆官僚や大臣の視察にも同行
さらに、政治家や閣僚の視察・会談のアレンジ、通訳など幅広い分野で活躍。2012年は当時の根本匠復興大臣、甘利明経済財政政策担当大臣、新藤義孝総務大臣らとデンマークの大臣との会談の通訳や前後の視察、意見交換の人選などをコーディネートしました。
「現行政改革担当大臣の河野太郎氏は日本とデンマークの議員連盟で会長であり、デンマークとは繋がりが強く、意見交換の場も多いですね。日本の大臣との会談の際は事前資料が膨大な量で、それを当日までにすべて読むだけでも大変です」(ニールセンさん)。
視察2

 
◆政治家の通訳で自分はやっぱり映像翻訳者出身なんだと実感?!
一般的に会議通訳の方は話されていることを淡々と訳していくのに対して、映像翻訳の場合、話者のキャラや特徴を掴むことが必須です。それを踏まえてセリフをそれぞれの言語にアウトプットします。
「会談や意見交換の後で複数の大臣に言われたのが、『君の通訳はキャラがついてるよね。この大臣がどういう人となりかが分かってすごく面白かったよ』という評価でした。私は無意識に大臣との通訳でも調べものや日ごろの交流の中で知ったそれぞれのキャラクターに合わせて言葉遣いを分けていたんです。人に言われて初めて気づきました。間に入った通訳者や翻訳者が話者それぞれの人となりや想いを丁寧にくみ取って伝えてあげられる。これは映像翻訳者ならではのスキルではないかと感じています」(ニールセンさん)

 
◆東北の復興支援、フォルケホイスコーレの起ち上げ 未来への取り組み
こうした様々な活動を経てニールセンさんは現在、未来へのさまざまな取り組みをしています。その一つが2011年の東日本大震災後から継続して行っている宮城県東松島市の復興支援です。同市の職員や市民とデンマークの市長や学生との交流をサポートしています。
ホイスコーレ2
また、今後のさらなる目標は食のインターナショナル・フォルケホイスコーレを起ち上げること。
「これはデンマークで約180年続く大人のための人生の学校で、デンマークに数カ月単位で滞在し、文化や社会で起こっていることを共有する学びの場です。特に食を通じて話しあえる場にしたいと考えています。2021年は日本でもワークショップをする予定です」

 
◆大切なのは日本語と向き合うこと
今年は「デンマークから学ぶ 『いまを生きる手習い塾』」を開催。日本語と向き合う、自分の正直な想いに向き合う、自分がしたいことをどうしたら自然にできるようなるのかを一緒に考えるセッションになっています。

 
「映像翻訳を学んだ時に強く意識したのは、英語を学ぶ以上に日本語での表現力の大切さでした。日本語を見つめ直すことが私の人生の起点になっています。自分が使う言葉が自分を表します。ですから、自分の気持ちを表現する言葉は妥協してほしくないですね。一つの角度だけではなくいろいろな自分がいると思うのでそれを表現できるだけのボキャブラリーを沢山持ってほしいと思います。どんなに言葉をつくしても100パーセントは理解してもらえない。そのくらいの気持ちでいろいろな中から言葉を選べるようになりたいですね」(ニールセンさん)
執筆本2
(参加者の皆さんの声をいくつかご紹介します)
●多方面でご活躍されている方から日本語(ターゲット言語)での表現力を磨くことが重要という言葉に凄く重みがあって、良いアドバイスになりました。
●映像翻訳以外にも、言語スキルを活かして海外で働いている方のノウハウや仕事の仕方についてお話を聞くことができ、大変勉強になりました!
●映像翻訳から始まり、幅広い仕事や活動をしている話を聞き希望が持てました。デンマークのことを知る機会もなかったので興味深く、いつか行ってみたいなと思いました。
●通訳やメディア取材などの具体的な仕事内容を知ることができて良かったです。
 
 

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