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日本初「東京ろう映画祭」が4月に開催 ろう者のディレクターが語る映画への熱い思い

日本初「東京ろう映画祭」が4月に開催 ろう者のディレクターが語る映画への熱い思い

2017年4月7日(金)~9日(日)、渋谷のユーロライブで、日本初となる「東京ろう映画祭」が開催されます。この映画祭の特徴はディレクターを務めるろう者2人の視点からセレクションされた映画が上映されること。ろう者が出演するドキュメンタリー映画やろう者が監督する作品のほか、これまでに日本語字幕が付いていなかった邦画など、全12作品が日本語字幕付きで上映されます。
 

JVTAのバリアフリー講座修了生の有志たちがボランティアで字幕制作に協力しました。そこで今回は同映画祭のディレクターで映画『LISTEN リッスン』の共同監督を務めた牧原依里さんに、ろう者の当事者としてこの映画祭を始めた経緯や見どころを伺いました。
 

◆今年第1回の開催に至った経緯を教えてください。
牧原さん

牧原依里さん(以降 牧原さん) きっかけは5年前にローマで「イタリア国際ろう映画祭(CINEDEAF)」を初めて体感したことでした。映画は視覚で楽しめる娯楽として、ろう者にとっては親しみのある文化ですが、世界中のろう者が出ている映画やろう者の監督の映画を集めて上映した映画祭は、日本ではなかなかありません。CINEDEAFで、イタリアや世界中のろう者と聴者(※)がローマに集い、映画や日常などについて手話で語るという経験をしたその空気は、私にとって忘れがたい経験でしたね。
 

※聴者…ろう者の当事者からみた聴覚のある人。
 

◆ローマでの経験が映画祭誕生の始まりなんですね。

牧原さん はい。映画についてろう者も聴者も共に語り合える場所を日本で作れたら、ろう者の映画文化を日本でももっと発展させることができます。そこで相談したのがアーティストの諸星春那さんでした。生まれつきろう者である諸星さんはインスタレーションなどのアート作品を手がけており、彼女もまたフランスのろう芸術祭などに参加して、刺激を受けたそうです。お互いの海外での経験を語るうちに、「ぜひ一緒に日本でもろう映画祭をやりたいね」という話が出ました。私は共同監督として映画『LISTEN リッスン』を手がけ、宣伝業務やアップリンクの配給ワークショップなどの経験もあったため、諸星さんと2人で作品の選定やディレクションを担当し、思い切って開催に踏み切ることになりました。
 

◆「東京ろう映画祭」ではどんな作品が観られるのでしょうか?
東京ろう映画祭 - コピー

牧原さん この映画祭で上映するのは、全てろう者がセレクションした12作品です。ろう者の生活やそれを取り巻く家庭環境、ろう者の文化やろう者のアイデンティティなど、さまざまな角度からろう者を扱った作品を、新旧織り交ぜてお届けします。普段、聴者の皆さんがなかなか体感することがない、“ろう文化”の世界を誰もが堪能できる映画祭になるのではないかと期待しています。
 

◆牧原さんが共同監督をされた『LISTEN リッスン』も上映されますね。

牧原さん 『LISTEN リッスン』は全編完全に無音の映画です。15人のろう者が自身の手、指、顔の表情から全身に至るまで、その肉体を駆使しながら「音楽」を奏でるという実験的な作品です。音楽を視覚的に感じてもらえたらうれしいですね。
リッスン
『LISTEN リッスン』

ろう者の男女を主人公にした北野武監督の傑作『あの夏、いちばん静かな海。』や、フランスのドキュメンタリー映画の第一人者、ニコラ・フィリベール監督が“異文化”という視点から、ろう者の姿を追った『音のない世界で』などもラインアップしています。
あの夏、いちばん静かな海
『あの夏、いちばん静かな海。』

音のない世界で
『音のない世界で』

また、世界のろう映画祭で高い評価を得たイギリスの短編映画『ジ・エンド』やイギリスで長年活躍してきたろう者の俳優やコメディアンが多数出演するブラックコメディ『スティル・ヒア』が日本で初上映されます。どうぞご期待ください!
 

◆今回は牧原さんがどうしても字幕付きで観たかった作品の上映が実現するそうですね。
愛のむきだし

牧原さん はい。園子温監督の『愛のむきだし』を日本語字幕付で上映します。4時間という大作に日本語字幕を付けるというむちゃくちゃなプロジェクトだったのですが、この作業の呼びかけを行ったところ、ありがたいことに有志たちが集まり、ボランティアで字幕制作を行ってくれました。JVTAの修了生の皆さんも協力してくださっています。ありがとうございます!
 

◆修了生の皆さんがこの映画祭のお役に立ててうれしいです。ぜひ多くの人に観てほしいですね。

牧原さん 今、日本語字幕が付けられている映画は、商業映画で大衆向けがほとんどです。もちろん名作もありますし、日本語字幕付きの上映が増えてきているのは良い傾向なのですが、インディペンデント作品の上映は圧倒的に少ないのが現状です。そこで「世界にはもっと多様な映画があるということをろう者たちに知ってほしい」という思いから、東京ろう映画祭では日本語字幕付きで上映を行うことになりました。特別上映作品には、私自身がどうしても観たかった『愛のむきだし』をオファーしました。台詞が多いこの作品に日本語字幕が付くとどのようになるのか…今から楽しみでしかたありません!
 

◆JVTAでも昨今、動画配信サイト用の日本語字幕制作が増えていて、昔懐かしいアニメやヒーローものなどにも携わっています。今後、もっと多くの作品を皆さんに楽しんでいただけるよう、頑張っていきたいと思います。東京ろう映画祭では、聴者も新しい世界を体験できそうですね。楽しみにしています。ありがとうございました。
 

牧原さん 映画の上映はもちろん、関連イベントとして写真展やアートの個展、ワークショップ、シンポジウムなども各所で開催されます。ぜひ皆さん、お越しください! ありがとうございました。
 

東京ろう映画祭 (2)

★東京ろう映画祭
https://www.tdf.tokyo/

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