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映像翻訳のスキルを生かして翻訳!ミュージカル『Without You』の舞台用字幕をJVTAが担当!

映像翻訳のスキルを生かして翻訳!ミュージカル『Without You』の舞台用字幕をJVTAが担当!
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「舞台用字幕」というものを聞いたことがあるだろうか?映画やドラマのように映像につける字幕ではなく、生の舞台に合わせ、舞台上や舞台横などに設置されたスクリーンに表示される字幕のことだ。海外の演劇やミュージカル、オペラなどが原語のまま日本で上演される際に必要とされるものである。

2024年3月、ミュージカル『RENT』初演で主人公のマーク役を演じ映画版でも同役を演じたアンソニー・ラップによるワンマンミュージカル『Without You』の来日公演が行われた。アンソニー自身の半生を『RENT』の名曲も絡めつつ紡いでいく物語だ。すべて英語で上演される本作について、JVTAが舞台用字幕の翻訳を担当。修了生の野村佳子さんが翻訳、後藤美奈さんがチェッカーとして携わった。

翻訳を担当した野村さんは、JVTAの英日映像翻訳科で講師も務めているベテランの翻訳者だ。特に音楽翻訳への造詣が深く、洋楽の翻訳をテーマにしたJVTAのセミナーに登壇した経験もある。そんな経験豊富な野村さんだが、舞台用字幕の翻訳は今回が初めて。野村さんは舞台用字幕の翻訳についてはルールや作業の流れについては詳しくないと思い、一度は依頼を断ることを考えたそう。しかし「リハーサルの映像をもとに翻訳する」ということを聞き、映像翻訳と同じような要領で訳せばいいということが分かり引き受けることにした。

実際に翻訳作業に入ると、映像翻訳の知識は大いに生かされた。映像と生の舞台という違いはあるが、ストーリーを伝えるためにセリフを翻訳するという芯は同じだ。舞台鑑賞に影響しないように制限文字数や読みやすさを意識する点も映像翻訳と同様。様々なルールを加味しながら、ストーリーが伝わりやすいように流れを作って翻訳するという作業は映像翻訳と全く同じだった。チェックを担当した後藤さんも「映像翻訳の基礎はすべて舞台字幕の翻訳に生かせる」と感じたという。

『Without You』ではオリジナル曲に加え、『RENT』の有名ナンバーも多数使われている。『RENT』の曲には既存の訳が存在するが、今回の翻訳では既存曲もすべて翻訳し直すことになっていた。既存曲の翻訳にあたり、野村さんが気をつけた点やこだわった点はあったのだろうか?

「今回、『RENT』の曲はすべて訳し直しました。とは言え、本作を見に来るほとんどの方が『RENT』のファンのはずなので、すでに浸透している訳に手を加えることに正直ためらいはありました。そこで既訳を再度すべて見直し、ベースとなる解釈は残したまま、『私ならこう訳すかな』という基準のもと、翻訳を進めていきました。どう受け止められるか緊張しましたが、開幕後もSNS上では特に指摘も見受けられず、少しほっとしています」(野村さん)

すでにファンがついている作品に携わるのは、まったく新しい作品を担当するのとは違う緊張感がある。ファンに納得してもらえるよう、翻訳者は隅々まで気を配らなくてはならない。そんな『Without You』の翻訳作業において、チェッカーを担当した後藤美奈さんは元々『RENT』のファンだったという。NYのブロードウェイで2回、日本公演で2回観劇した経験がある、まさに大ファンだ。

「『RENT』は世界的に愛されている作品です。アンソニー・ラップだけでなく、『RENT』の生みの親であるジョナサン・ラーソンのファンが見ても違和感のない仕上がりになるよう気をつけてチェックを行いました」(後藤さん)

『RENT』の内容は完璧に頭に入っていた後藤さんだが、本作のチェックを担当するにあたっては、『RENT』のサントラを聞き直すことに加えてアンソニー・ラップの略歴やインタビューにも目を通した。特にタイトルにもなっている本作のオリジナル曲「Without You」はアンソニー自身の体験と重なるような楽曲であるため、曲を聴きこみ万全の準備をした。

本作はアンソニー・ラップの1人芝居。そのため、セリフの主語が抜けたりねじれたりすると、誰の話なのか流れが分かりにくくなってしまうことが難しい点だと後藤さんは感じた。しかし野村さんが綺麗に翻訳をしていたため、チェック段階で大幅な直しは必要なかったという。後藤さんは全体を通して見た時に観客が極力自然に読めるよう、日本語の自然な表現を意識してチェックを行った。

野村さんと後藤さんは、それぞれ本番のステージも鑑賞した。舞台用字幕はステージの両側に設置された縦長のスクリーンに映し出されるため、演者を見ながら両脇の字幕に目をやることについては、「映像作品を見るときよりも目を動かす範囲が大きくなる」と実感。そのため2人は上演中も字幕の読みやすさが気になったり、ステージを初見の観客がどれだけ内容に没頭できているか心配になったりと、翻訳者ならではの気持ちでステージを見ていたという。しかし終盤では客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえ、ストーリーがきちんと伝わっていることを実感した。

「アンソニーの生の歌声は、全身に鳥肌が立つほど感動的でした。彼が演じる『RENT』は映画でしか観たことがないのですが、本人が目の前で歌っていて、しかもその作品にほんの少しでも関われたと考えると、感慨深いものがありました。目と頭はグッタリ疲れていたものの(笑)、清々しい気分で会場を後にできました。またチャンスを頂けるのなら、舞台字幕にも積極的にチャンレジしていければと思います」(野村さん)

「生の舞台が持つエネルギーは格別で、映像作品よりも『役者や他の観客と同じ時間を共有する体験』だと感じました。そこで生まれる感動を届ける役割の一旦を担えたことに、とても光栄な思いでした」(後藤さん)

JVTA受講生の中でも、「音楽作品が好き」「いつかミュージカル翻訳に携わりたい」という人は多い。今回の舞台用字幕の翻訳では、映像翻訳のスキルが幅広いエンターテインメントのコンテンツに応用ができると改めて感じる機会となった。

『Without You』に関する詳細は▶こちら



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