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発見!キラリ  愛すべきアウトローの一生

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1月のテーマ:決意
 

2015年12月28日、全世界のロックファンに衝撃が走った。
爆音ロックバンド「モーターヘッド」でボーカル兼ベースを担当したイアン・フレッシャー・キルミスター、またの名をレミー・キルミスターがガンにより死去したのだ。享年70歳だった。
 

彼はロックファンの間では親しみと敬意を表して「レミー」と呼ばれていた。イギリスのスタッフォードシャー出身のレミーは、1960年代にはジミ・ヘンドリックスのローディーを経験。 1970年代初頭には「ホークウインド」というバンドに加入し、ミュージシャンとして頭角を現していたが、ドラッグの問題でバンドを解雇される。その後間もなく自らのバンド「モーターヘッド」を結成した。
 

モーターヘッドのコンセプトは単純明快で、レミーは“大音量で演奏するフリークアウト・ミュージック”と言っていた。髭面、長髪でマカロニウエスタン映画の悪役のような出で立ちの彼は、その見かけだけでなく、ミュージシャンとしても型破りだった。ギターの様に音を歪ませてベースをコードでかき鳴らし、マイクを顔より高い位置にセットして上を向きながら独特のダミ声で歌う。このアウトローが率いる爆音のロックンロールバンドに、刺激的なサウンドを求める世界中のロックファンが飛びついた。そして、そのスタイルは齢70になろうとも少しも衰えることはなかった。
 

彼の悲報を知ってまず頭に浮かんだのは、「レミーが死ぬはずがない」という想いだった。もちろん、常識的にはありえない事だが、おそらく世界中のファンも同じ想いではないだろうか。それはなぜか? 彼のカリスマたる所以は、破天荒なロックスターでありつづけるという「決意」があったからだと思う。その「決意」は彼が残した数多くの逸話に現れている。例えば普通のミュージシャンなら喉のためにスプレーやうがい薬を常に持ち歩き、禁煙をするところだが彼は、「煙草はトレーニングの一環だ。俺は煙草を吸い続けなきゃいけない。禁煙したら、声に支障をきたす。酒とタバコをやってなかったら、俺は多分、この仕事につけなかっただろうよ」と言い放つ。また、ツアー中に脱水症状と過労で病院に担ぎ込まれ、マネージャーに野菜を摂ることの重要さについて諭された時も「なに言ってんだ。このポテトチップスも野菜の一つだろ」と少しも悪びれる様子がない。無鉄砲な若手ミュージシャンの発言ならともかく、一般人ならすでに退職してのんびりと老後を過ごしているはずの年齢だ。しかし、彼の姿勢は変わらなかった。デビュー当時から「I don’t wanna live forever」(長生きなんかしたくない)と爆音で歌い続け、不摂生の限りを尽くしながらも70になるまで現役だったレミー。そんな彼の姿に「彼は不死身だ」とファンは信じて疑わなかった。ちなみに彼は、バンドが成功し富と名声を得ながら少しも偉ぶることなく気軽にファンと接し、ハリウッドにあるお気に入りのバー「Rainbow Bar&Grill」裏の安アパートに住み続けたという。
 

彼がどんな生活を送っていたのか、本当のところは分からない。ただ彼がロッカーとしてファンに「ロックの夢を見せ続けるという決意」は間違いなく本物だったと思う。なぜなら「決意」は一度もファンを裏切らなかった。ブレない生き方でファンが望む姿でありつづけてくれたのだ。ただ、本人にそれを伝えても「そんなつもりじゃない」ときっと否定されるだろうが…。
 

リーダーを失った「モーターヘッド」は事実上解散となったが、ジャンルを超えて世界中のミュージシャン達からレミーの死を悔やむメッセージが贈られた。「モーターヘッド」がスタートした1970年代からこれまでに無数の音楽が生まれた。ロックにも40年前には想像もつかなかったサウンドが数多く生まれた。しかし、ロックファンが本当に求めているのはレミーのような「決意」の備わった偉大なカリスマだと僕は思っている。
 

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Written by 斉藤 良太
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[JVTA発] 発見!キラリ☆  1月のテーマ:決意
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。

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